第三話
夢小説設定
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「お久しぶりですニャ。この度はようこそお越しくださいましたニャ」
「どうぞ妖魔界を堪能してくださいませ」
犬まろと猫きよがぬらりひょんの背後から現れると、ぺこりと恭しく頭を下げる。審神者は彼らとも以前出会った事があるのだが、その記憶はぽっかりと欠如していたのだ。
とろりと眼を蕩けさせ、目線を合わせるようにしゃがみ込み、くいくい、と手招きした。
「あらまあ、えらい可愛らしい猫ちゃんにわんちゃんや。んふふっ、おいでおいで」
「ね、猫ちゃん……わんちゃん……んっふふふ」
「良かったな二人とも、おいでおいでされてるぞ。行ってこいよ」
「大王様⁉︎」
まさかの言い方に笑いをこらえ切れず、崩れ落ちるぬらりひょん。けらけらと豪快に笑う大ガマに、完全に乗っかるエンマ大王。
犬猫の妖怪といえど、そんな扱いをされれば癪に障る。でも相手は上司の娘。その上一切悪気なし。
渋々猫きよが彼女の元まで歩いていくと、アルビノの特徴である白磁の手が彼の顎の下に添えられ、そして上質な絹のように柔い手で心地の良い所を刺激され、すぐに猫きよの喉がごろごろ鳴る。その極上の手つきに猫きよは秒で陥落した。
俺たちは一体何を見せられているんだ。特に相棒とも呼べる仲である犬まろはそう思った。
「んにゃ〜……気持ち良いのですニャ」
「ふふっ、ええ子ええ子」
「良かったねぇ主。動物大好きだもんね〜」
「……何かもう、すげえな」
「……ソウデスネ」
絶対にアイツみたいにはならない。犬まろはそう決意した。
審神者の手により猫きよがごろごろにゃんこしている中、早速彼女は話題を切り出す。
「さて。今日は呼んでもろて、おおきにありがとう」
「それはこっちのセリフだ。忙しい中対応してくれて助かるぜ。……それにしても、今日は巫女装束じゃないんだな」
審神者の格好は以前巫女装束であった。だが今は、純白が特徴的な、独特なデザインの軍服にマントという出で立ちだ。胸の勲章は歩く度にちゃりちゃりと音を立て、ひとつのアクセントになっていた。
そもそもよそ行きの格好がこれしかない。巫女装束も目立つだろう、というのが理由なのだが、軍服だろうが巫女装束だろうが現代ではコスプレにしか見えないのである。
「あぁ、その点については大丈夫。今の時期は暇なんだ」
「江戸城を探索したり大坂城を掘削したり貝を集めたりしないからな」
「「なんて???」」
普段歴史修正主義者と激闘を繰り広げているのではなかったか?
ぬらりひょんもエンマ大王も、宇宙の真理を垣間見た猫のような表情を浮かべているが、実際にワケの分からないことをしているというのは審神者自身良く理解している。それは刀剣男士も同様だ。
唯一大ガマだけが面白そうだ! と目を輝かせていたが、夏の連隊戦では絶対に無理だろう。何せ戦場が海。浸透圧で身体の水分が抜けて死ぬ。だからといって、冬の連隊戦では寒さに凍えて動けなくなりそうだが。だってカエルだし。
ぬらりひょんは再度愛娘の格好を見遣る。一目見て高級な品だとわかるほど、丁寧に誂えられた軍服にマント、そして数え切れないほどの勲章。
現在に至るまで、相当な努力を積み重ねてきたと伺える。だがその中に、自分が贈った時計はない。
妖怪ウォッチは玩具のような設えではあるし、かっちりとした軍服には到底似合わないだろう。
そもそも半妖であり、“視える”体質の彼女には必要のないもの。ゴミ箱行きかもしれないし、フリマアプリで転売されているかもしれない。
だがそれを見通していたのか、審神者は懐から一つの時計を取り出す。黄金色がシックな懐中時計だった。
「うちにはこっちがあるさかい。政府の支給品やけど、結構貴重なもんみたいやねぇ」
「……そうだな。恐らく、幕末の舶来品だろう。かなり珍しい」
時の政府から支給されたというそれは、幕末の時代に舶来品として造られたものであり、過去へ飛んだ際に本丸へ帰還するための、簡易型転送装置の役割を果たすため改造されたものだ。
なるほど確かに、そもそも“視える”彼女にとって、妖怪ウォッチはただの懐中時計だ。それよりも簡易型転送装置の方が、遥かに有用性がある。
今度また贈り物をする時は、何が欲しいのか事前に情報を得なければ。ぬらりひょんは心に誓った。