第三話
夢小説設定
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あれよあれよという間に妖魔界へ訪問する日程を決められ、そして訪問日当日が訪れた。一部隊の刀剣男士を引き連れ、審神者はうんがい鏡へ話しかける。
「テクマクマヤコンテクマクマヤコン、どうか妖魔界へ通しとくれやす」
「構いませんが……謎の呪文は必要ないんですよね」
「なあんや、つまらへんなあ。こういうノリは大事やで?」
やれやれと言わんばかりに頬を手に当てる審神者。そんな彼女に、大太刀である石切丸はひとつ提案をした。
「私と袮々切丸は待機しておいた方が良いかな? 妖魔界に到着したら、顕現する方が良いかもしれないね」
「……ああ、恰幅か」
「人をデブみたいに言うのは止めて欲しいんだけどなッ!」
確かに石切丸は大太刀に分類されるからか、刀剣男士の中ではかなり恰幅の良い部類に入る。袮々切丸は彼よりも更に身長が高く、その上筋骨隆々だ。うんがい鏡のキャパシティを凌駕している彼らは、頭は入っても豊満な筋肉が支えてしまうだろう。
大太刀二振りは刀の姿に戻り、頭は入りそうな刀剣男士二振りと審神者が先に妖魔界へ向かう。そして本丸に残った二振りが大太刀の本体をうんがい鏡に突っ込んで、先に向かった刀剣男士が受け取る。最後に残りの二振りが妖魔界へ移動した。
空は鮮やかな萌葱色に、いくつかの黄金色の雲が浮かんでいる。そして以前ぬらりひょん議長が話していた通り、何本もの桜が咲き乱れていた。本丸とはまた違った美しさに息を飲む。
「よぉ。お前さんがぬらりひょん議長の娘さんか? オレは大ガマ。よろしくな!」
「吾輩の名は土蜘蛛。よろしく頼むぞ」
「……あんさんが、土蜘蛛?」
土蜘蛛の隣にいた本家軍大将・大ガマをスルーし、じっと土蜘蛛を見つめる審神者。その距離はかなり近い。
ぬらりひょん議長とはまた違うタイプであるが、その顔立ちは人形のように整っている。そんな顔をいきなり至近距離に近づけられた土蜘蛛は、隈取りがわからないほど顔を赤らめさせた。だがその顔色は、途端に青白く染まる。
薄緑色の髪に黒色の洋装が特徴的な男が、土蜘蛛の首に本体であろう刃をつきつけたのだ。
「ほう。……貴様が土蜘蛛か。もし主に瘧の呪いをかけてみろ。叩っ斬るぞ」
「ヒュォッ……わ、吾輩はこれにて失礼しよう。大ガマ、くれぐれも失礼のないようにな!」
「ゲコッ⁉︎ あっおい! どこ行くんだよ‼︎」
土蜘蛛は刃文を視界に入れた途端、紫煙を燻らせてどこかへ逃げ去っていく。土蜘蛛らしからぬその行動に大ガマは疑問を抱えたが、相手はぬらりひょんの愛娘。そんなお偉いさんを置いて追いかけるわけにもいかない。
大ガマはやや訝しげに感じつつも、エンマ離宮までの道のりを案内したのだった。
「大ガマさん、あれは何ですやろか? えらい元気に騒いではるみたいやけど……」
「あぁ、クラブだからな! 土蜘蛛は苦手みたいだけどさ、どんちゃん騒ぎするのは楽しいぜ!」
「ふふふ。元気なんはよろしおすなあ」
あれは何だ、これは何だと審神者が質問していく。その様子は、どこか幼子のようで、大ガマはクラブなどのナウヤング街道に寄り道しつつニュー妖魔シティを案内した。
さすがに大人数で移動するのは珍しいのだろう。大ガマが街を案内している最中、隣の小娘は誰だと問う妖怪たちが後を絶たない。更には審神者の美貌に惚れ込んでいきなり告白をする者も出現する始末。ちなみにじんめん犬とイケメン犬、そしてモテマクールだ。
さすがに初対面でそれはアウトだろ、と大ガマが制止させようとしたが、その前に護衛の男がぬらりと煌めく刀身を喉元に突きつけた。
「へえ。石灯籠みたいに斬ってやろうかなぁ? ……最期くらい笑いなよ、にっかりと」
じんめん犬たちは尻尾を巻いて一目散に逃げ出していく。その様子を見たはやや困ったように刀身を向けた男を諭すが、本人は特に反省していてはいなさそうだった。
そんなこともあってか。予定されていた時刻を大幅に遅刻し、エンマ離宮へ到着したのだった。
「大ガマ。申し開きがあるなら聞こう」
「スミマセンデシタ」
仁王立ちしているぬらりひょん議長に対し、見事な土下座を披露する大ガマ。嬉々として案内していた先ほどとは打って変わって、絶望を飲み込んだような表情を浮かべていた。
「ごめんやす。うちの本丸とも現世とも大分違うさかい、うちが大ガマさんにお願いして、色々案内してもろたんです。時間を確認せんかったうちが悪いんやわあ、堪忍ね」
「……仕方ない。今回だけは許してやる。だが後でじっくりと話があるからな」
ぬらりひょんはあまり納得していないが、手を合わせて謝罪し許しを求める愛娘の姿に免じて、遅刻の件に関しては赦免してやることにした。
だが本来であれば、自分が妖魔界を案内する予定であったのだ。それについては許容範囲をとうに超越していた。だが肝心の大ガマ無罪放免と勘違いして隠すことなくガッツポーズをとった。