第一話
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深呼吸をして無理やり落ち着かせると、ぬらりひょん議長は端末に向かって声をかける。だが、画面越しの声は先ほどとは違い、どこかぴりりとした緊張感を孕んでいた。
「……私はぬらりひょん。この妖魔界で議長を務めている者だ。一度主人と話がしたいが、アポイントを取ってもらえるだろうか」
「なぜだ? なぜアンタが主に話がある」
敵に威嚇するように告げる山姥切の声は、かなり威圧的に聞き取れた。コマさんもジバニャンもウィスパーもケータも怖じ気づき、へなへなと地面にへたり込む。イナホだけは声にハートを撃ち抜かれて悶絶していた。
「実際に彼女に会いたい。会って、謝りたい事がある」
「……アンタ、主とは一体何の関係がある! アンタは主の何なんだ!」
「血の繋がった、実の父親だ」
「なッ……⁉︎ 父親だと⁉︎」
ぬらりひょんが告げた事実に、さすがの山姥切も動揺が隠せない。今の今まで顔も見せない、声も聴いた事のない実の父親。主には最早「いないもの」として育ててきた。それが、突如連絡を取ってきたのだ。
どうしようかと山姥切が考えあぐねていると、遂に彼の主人の声が端末越しに微かに聞こえたのだ。
「まんばちゃん、どないしはったん? そないに大声上げて。喉やられるよ」
「主! ここは俺に任せて先に行け‼︎」
「えっ何? そない死亡フラグみたいなセリフ言うて、ほんまどないしはったんよ」
「主の実の父親と名乗る男から連絡が来た!」
「……ふうん? うちの父親、ねぇ……。電話越しの相手さんは、随分と面白いこと言うお人やなあ、ふふふ」
くつくつと妖艶に笑う審神者らしき女性の声。だが山姥切は他人事に笑う彼女を見て気が気ではない。おろおろと取り乱す山姥切を見かねてか、審神者は電話を替わるように申し出たのだ。願ってもない申し出に、エンマ大王は復活した。
「まんばちゃん、電話を替わっとくれやす。うちが相手さんの話を聴いたるさかい」
「だが……大丈夫か? 何か文句を言われたら……」
「そん時はまんばちゃんが祟ればよろしおす。わかったらはよ替わりよし」
おい待て今ヤバい言葉が聞こえたんだが。色々ツッコミを入れる前に、本丸の審神者らしき少女の声が端末越しに伝わった。
「お電話替わりました。小官はこの本丸の審神者を務めている者です。……どういったご用件でしょうか?」
「本当にすまなかった!」
「……一体何の事でありましょうか。大変申し訳ありませんが、小官には思い当たる点がございません」
まるでロボットのように淡々と話す審神者。それでも、やっと娘の声を聞けたぬらりひょんは非常に感動していた。それは彼にとって、紛れもない事実で。涙は流れていなかったが、それでも声には混じっていた。
「一度会いたい。会って謝りたいんだ……」
「……はあ、それはどうも」
呆れているような、どこか無感情な声だった。だが言葉は完全な拒絶ではない。一度でも会って、謝罪する機会はくれるのだろう。ぬらりひょんは希望を持っていた。
「……また、会ってくれるのか?」
「都合が合えばお伺いいたしましょう。ですが何分、小官は忙しい身でして」
「忙しいのだろう。こちらから会いに行っても良いか?」
「小官としては構いません。ですが……先に申し上げておきますが、本丸は最前線の軍事施設です。そのことをお忘れなきように願います。敵襲に遭遇し命を落とすような事があっても、責任はとりかねますので」
「もちろんだ! それでも構わない‼︎ いつ会えるんだ⁉︎」
「大王様、落ち着いてください!」
「……使いの者を送ります。そちらにお伝えください」
収拾がつかなくなったと感じ取ったのか、それとも本当に多忙で電話する時間すら足りなくなったのか。審神者との連絡は途切れてしまったが、それでもぬらりひょんとエンマ大王は多幸感に包まれていた。
「良かったなあ、ぬらり……!」
「えぇ、大王様……!」
やったやったと小躍りするエンマ大王とぬらりひょん。普段はみられないほどのテンションの上がりっぷりは中々レアなのではないだろうか。イナホはこっそりとカメラを回していた。