第一話
夢小説設定
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「行ってきまーす!」
「あら、ケータ。遊びに行くの?」
「うん! さくら中央駅で待ち合わせしてるんだ!」
「そう。気をつけるのよ!」
小学生の天野景太は、いつものようにジバニャンとウィスパーを連れ、さくら中央駅前の待ち合わせスポット・金の卵に赴いていた。
そこには彼らだけでなく、彼と顔見知りの小学生・未空イナホと、彼女のともだち妖怪であるUSAピョン、コマさんにコマじろう、更にはSランク妖怪のふぶき姫やエンマ大王の側近である犬まろ・猫きよまでもが人だかりの多い繁華街を彷徨いている。普通の人間であれば、ただ小学生二人がぶつぶつと独り言ちながら、街中を動き回っている何とも不気味な光景にしか見えないのだが。
「ニャー……。全然目的の人物が現れないニャ……」
「もう捜索開始から1週間……。あれから何の手がかりも掴めねぇズラ」
「仕方ないわよ……。特徴的な見た目とはいえ、幼い頃の写真しか残ってないのよ? 雰囲気が変わっていてもおかしくないわ」
「それに、とっくの昔に日本を離れている可能性もあるダニ……」
「この地域内だけでもかなり捜索範囲は広いですが、世界中となるとほぼ不可能に近いでウィス」
「そうなんだよなー……。あー、どうしてすぐに見つかると思っちゃったんだろう」
ケータはハァ、と短く吐息を零すと、ジバニャンは渋面を湛え、彼に対して文句を言い放つ。
「そもそもあいつの胸糞悪い態度が原因ニャ!」
「……あの時は記憶が丸々消滅していたとはいえ、流石に幼い子にそこまでするものではないでウィスからねぇ」
ウィスパーはジバニャンの文句に同意すると、事の発端を思い出していた。事の始まりは、エンマ大王がケータ一行とイナホたちをイナウサ探偵事務所へ呼び出した事からだ。
エンマ大王直々に依頼をされる事はENMA NOTEについての頼みごと以来。ケータたちは一体何だろう、と不安を胸に、探偵事務所まで足を運ぶと、そこにはキャッキャとガールズトークで盛り上がるふぶき姫とイナホ、彼らを遠目で眺める狛犬兄弟と宇宙服を着たカワウソが。なんだこのカオスな空間は、とケータ一行は心の中でツッコミを入れた。
「あれ? イナホさん! どうしてここに?」
「俺っちたち、エンマ大王に呼び出されたニャンけど……」
「ミーたちは依頼主さんと待ち合わせしているところダニよ! もうそろそろ到着するはずダニ」
「悪りぃ! 待たせたな!」
ドロン、と紫雲と共に現れたのは、赤い道服に金髪を持つ少年、エンマ大王その人だった。突然のVIP登場に事務所内はざわめきたったが、依頼主が彼であることを思い出したハクは追加分の煎茶を注ぎ入れる。
「聞かれちゃ困る内容だしな。何より、人間界で仕事をサボ……いや、偵察をするついでに済ませたい」
「しれっとサボっているって言いましたね」
大王はゴホン、と咳払いして話題を逸らすと、イナホは待ちきれないと言わんばかりに尋ねる。
「それでそれで! エンマ大王直々なご依頼とは一体なんでございましょう?」
「ちょ、イナホ……! エンマ大王に向かってそんな無礼をっ……‼️」
冷や汗をだらだら流すUSAピョンに対し、エンマ大王は気にするな、と笑い飛ばす。誰に対しても平等、かつ威厳に満ちたその態度は、多くの妖怪たちから慕われる理由なのだろう。
そして、他のものにも聞かれては困る内容だから決して他言するな、と前置きすると、エンマ大王は苦虫を噛み潰した表情を浮かべ、ぽつりぽつりと語り始めた。
「実はな……。ぬらりには一人娘g」
「ええええぇぇ!? 娘さんいらっしゃったんですか!?」
「しかもあの、冷徹無慈悲で通っているぬらりひょん議長にニャ⁉︎」
「馬鹿、ちょっ、お前……声が大きい! 他の奴に聞こえたらどうする!」
「す、すみません……」
「どんな人なんだろう……あ、人じゃなくて妖怪か」
「怒ると触手が生えたりするのかニャン……!?」
「そろそろオレの話を聞いてくれねぇか?」
彼は苦笑いを浮かべて注意すると、身を乗り出していた妖怪たちは再びソファへ腰を下ろす。その後、エンマ大王はぬらりひょんの一人娘について、淡々と説明を続けた。
「……実はな。ぬらりの一人娘についてなんだが、ここ20年ほど連絡が取れない状態でな」
「でも、妖怪の20年ってさほど問題じゃなくない? 人間よりも長生きなんだし……」
ケータの疑問に大王はふるふると首を振って否定する。そして、独り言ちるかのような、微かな声で告げた。
「アイツは……妖怪じゃない。人間と妖怪の間に生まれた子ども。要するに半妖だ」
「「半妖?」」
聞きなれない言葉に小首を傾げたケータとイナホは、説明を求める視線をウィスパーに送る。まさかその説明を求められるとは思わなかったウィスパーは、慌てて愛用の妖怪パッドで調べるものの、それより先にふぶき姫が口を開いた。
「半妖は、妖怪と人間との間に生まれた子どものことよ」
「……オレは、あの子を守ることすらできなかった……」
「私も、あの子に酷い事をしてしまった……!」
「エンマ大王、ふぶき姫……」
エンマ大王は今更何を言っても遅いけどな、と自嘲気味にぼそりと呟くその姿が、余りにも儚げで。まるで彼の体躯が、あまりにも強大な後悔の念に押しつぶされてしまいそうに見えた。しかし、後悔しているだけでは何も始まらない。
コマさんは意気消沈しているエンマ大王とふぶき姫へ、その娘にどんな仕打ちをしたのか問うた。思い切ったのか、はたまた空気を読めなかったのか。おそらく後者だろう。
「二人は、その子に一体何しちまったんズラ?」
「……言い訳にしかならんが、何者かがENMA NOTEにその子の名前を書き込んだんだ。おそらく、オレやぬらりを失脚させようとする魂胆の連中だろうな。その影響で、ぬらりやふぶき姫を含めた妖怪たちはその子に言ってしまった……。
『お前のような下賤な半妖なんざ、生きる価値もない。二度と自分たちの前に姿を現すな』ってな」
「それ以来、その子は妖怪たちに顔を合わすこともなくなって、連絡さえも取れなくなったの。色々と手を尽くした結果、判明したのは審神者という特殊な業務に就いたことだけ……」
「……そりゃ絶縁されてもおかしくないニャ」
しれっと言い放ったジバニャンの口をケータが慌てて塞ぐも、覆水盆に返らず。ふぶき姫とエンマ大王は今まで見たことないほどに、がっくりと落ち込んでいる。
彼らのあまりの落ち込みように、コマじろうは慌ててフォローを入れた。
「きっと大丈夫ズラよ! オラだって、時々コマじろうと喧嘩することもあるけんど、その度にちゃーんと仲直りしてるズラ!」
「コマじろうの言う通りダニ! ちゃんとごめんなさい、って謝れば、その子もきっと許してくれるダニよ!」
「……そう言ってくれると助かる。あいつは審神者という職業をしてるはずだぜ」
「基本的には『本丸』という場所で生活するらしいんだけど……」
「え、でも……。その本丸? って場所にどうやって行くの?」
「それについては俺らが調べてる真っ最中だ。だから、お前らにはこの人間界を調査してもらいたい」
「何か手がかりは? 何か写真とかありません?」
ジバニャンの反応に、ふぶき姫はこくり、と静かに首を縦に振り、懐から古ぼけた2枚の写真を取り出した。
片方には、猫っ毛の青い髪の少年と、今と全く変わらない姿のエンマ大王。そして彼の腕に抱かれる真っ白な幼女が、満面の笑みを浮かべている。そしてもう片方には、白銀の髪留めを手に入れる前のふぶき姫と、やはり真っ白な幼女が写っていた。