妖怪紅白雛祭り!
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最上段まで登り詰めると、遂に御内裏様の御簾が開帳に及んだ。御内裏様はいつも通りの服ではなく、同じカラーリングの狩衣衣装を着たエンマ大王だ。これには昨年と一昨年のお雛様候補であった今年の司会ふたりから非難殺到である。
「お待ちください! おかしいではありませんか‼︎」
「全く。どこがどうおかしいんだよ」
「そうよそうよ! つーちゃんの言う通りだわ! どうして女郎蜘蛛の時は大王様が御内裏様なワケ⁉︎」
「昨年も一昨年もクソ野郎だったんですよ! 私たち、一体どれだけ傷ついた事か!」
「せめてクソプーって言ってやれニャン」
「それもそれで酷いと思うよ……」
ケータは苦い笑みを零して、フォローのつもりが逆に傷口に塩を塗りたくっているジバニャンに苦言を呈する。
スイセンはスンッと真顔になっていた。普段人当たりの良い作り笑顔の仮面を貼り付けているからか、その真顔というのは非常に恐ろしい。だがすぐに口角を歪ませた。
「うちは特にお雛さんには興味あらへんけど、勝ち負けにはこだわるさかい。ここ通すわけにいかへんなあ」
「……悪いけど、それはアタシたちも一緒よ。ジバニャン、一緒に戦いましょ!」
「ニャ〜……。勝てる気が全然しないニャ……」
「あ゙あ゙ん゙⁉︎ ちょっとやる気出せやこの猫畜生がァ!」
グダるジバニャンの首根っこを引っ掴んで揺さぶる女郎蜘蛛。だがジバニャンのやる気は、逆にどんどん削がれていく。その様子を見たスイセンは面白そうに笑い飛ばすと、一つの案を提示した。
「せや! ハンデつけたるさかい、うちらと一緒に遊ばへん?」
「ニャに? どんなハンデだニャ?」
「せやな……。うちはある程度護身術が使えるさかい、呪符とかの武器は一切持たへん。これでええ?」
「……両手を攻撃に使わないなら良いニャン」
「それでもええわ。うふふ、交渉成立やね。ほな、早速好きなようにやらせてもらうけど、堪忍ね!」
その言葉を合図に、早速女郎蜘蛛へ突撃していくスイセン。愛染も続けて女郎蜘蛛へ飛び出していく。
だがふたりはリーチの関係上、どうしても接近戦に持ち込まねば攻撃できない。ジバニャンがひゃくれつ肉球で攻撃の阻止すると、今度は女郎蜘蛛が反撃に転じた。
これを皮切りに、右大臣に扮した大ガマ戦と大差ないほどの苛烈さを誇る戦闘が開始される。だがあの時とは異なり、スイセンは攻撃を躱すのではなく受け流し、その勢いを攻撃に転じている。まるで舞うような彼女の動きに、会場は思わず見とれてしまった。
だが、勝敗はすぐに決した。愛染の攻撃を避けた女郎蜘蛛は、振り向いたその勢いでスイセンを狙う。だがその攻撃は彼女に見透かされていた。
ひらりと何事もないように女郎蜘蛛の拳を回避すると、ジバニャンの鳩尾に強烈な蹴りが炸裂した。
「あははっ! たあんと喰らいや!」
「僕は死にましぇーーーーーーーーーーん!」
「何だ今の」
「……何か、寸止め事故業界? では有名らしいよ」
トラックに轢かれたような衝撃がジバニャンを襲う。スイセンのしなやかな脚から繰り出された一撃はジバニャンを吹き飛ばした。
幸い、立て掛けられていた十二単がクッションの役割を果たし、ゴロゴロとエンマ大王の隣へ転がっていく。そしてあろうことか、見事お雛様の位置にジバニャンが座り込んだ体勢になったのだ。
「勝負あったわね! 今年は赤組の勝利よ!」
「だけど……お雛様は女郎蜘蛛じゃなくてジバニャンみたいですけどね」
まさかジバニャンがお雛様になってしまうとは。会場はアリかナシかで一瞬揉めたが、女郎蜘蛛よりはマシという事でアリという判決に落ち着いたようだ。
「あらまあ。白組が負けてもうたわあ、ざぁんねん」
「……主さん、全然残念って思ってねえだろ」
「うふふ、そんな事ありまへんえ。決着もついたことやし、気晴らしに屋台でも回ってパーッと遊び回ろか!」
「よっしゃ! なあなあ主さん、オレかき氷とリンゴ飴と……あと焼きそばが食いたい! あと焼きトウモロコシも‼︎」
「食べ過ぎてお腹壊さんとき。せや、うちと焼きそば半分こせぇへん? うちも焼きそば食べたいわあ」
拳を握りしめて喜びを表現する愛染国俊を引き連れて、スイセンは屋台のお菓子を制覇しにひな壇を降りていく。ケータや女郎蜘蛛、そしていつの間にか復活してたジバニャンたちもそれに便乗し、屋台グルメを堪能したのだった。