妖怪紅白雛祭り!
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ここで待機するようにぬらりひょんから指示されたスイセンは、言われるがままに待っていた。名前を呼ばれたら、まっすぐ会場へ向かうようにと。
そして待機すること数十分、司会の明朗快活な声とともに妖怪紅白雛祭りが開催された。その熱気はすさまじく、一気に歓声が湧き上がる。
「レディースエーンドジェントルメーン! 妖怪紅白雛祭りの始まりよ!」
「今年の司会は、私椿姫と」
「ふぶき姫が担当しまーす! よろしくね!」
司会ふたりの登場に、会場はざわついた。何でも、彼女たちは毎年この祭りで何百回とお雛様役を争ってきた経歴があるからだ。だが今年はどうやら二人は司会に転向し、雛祭りは仲良く祝う事に決めたそうだ。
その言葉を内心信用していない観客はじとっとした目で彼女たちを見つめていたが、レースで争わないのならばひとまずは平和だろうと他の妖怪たちに諭されて安堵した。
「それじゃ早速、今年のお雛様候補を紹介するわ! 白組からはこの方! スイセンちゃんでーす!」
会場は一瞬の静寂に包まれた後、一気にボルテージが飛び上がった。
長い睫毛に彩られた深紅の瞳は、ガーネットの如く煌めいていて、今にも吸い込まれそうだ。桜色の唇はぷるんと潤い、雪のように真っ白な肌と髪はしっとりと艶めいて、どこか蠱惑的に感じられる。
その現世離れした美貌に酔い痴れた妖怪たちは思わずほぅ、と吐息を漏らした。
だが本人はまさかお雛様候補として参加するとは露にも思っておらず、後でぬらりひょんをきっちりと問いただそうと肝に据えていた。
「そして赤組のお雛様候補は、女郎蜘蛛です!」
「「「「「ちょっと待ったぁ!」」」」」
「あら何? 何か文句あんの?」
「なんでこんなカマ野郎がお雛様候補なんだよ‼︎ せめて牛頭とかの女性妖怪がいるだろ⁉︎」
「もっとこう……フゥミンとかサキちゃんとか可愛い女の子妖怪がいるだろ! 納得いかねえぞ‼︎」
先ほどとは打って変わって、ブーイングの嵐が巻き起こる。可愛らしい女子妖怪が待ち遠しかったのに、出てきたのはカマ野郎だったのだ。無理もないといえばないのだが。
なお女郎蜘蛛のひと睨みですぐにブーイングの嵐は収束した。
「……うちはお雛様に興味はあらへんけど、勝ち負けがあるんなら、本丸の沽券に関わるさかい、本気でいかなあかんねぇ。うふふ、あんじょうよろしゅうな」
「ええ。ぬらりひょん様の愛娘だからって、アタシは手加減しないわよ」
女郎蜘蛛とスイセンが互いの手を取り握手する。双方の凄まじい神気と妖気がぶつかり合い、荒れ狂う強風が巻き起こった。
そして握手するその光景は、まさに美女と野獣であった。と、後に観客たちは語る。
「それじゃ、それぞれの組のサポートメンバーを決めましょ! つーちゃん、お願いね!」
「ええ、いきますよ……! たーまやー‼︎」
紅白の鉢巻きが巨大な椿の花ととともに打ち上げられたと思えば、いきなり椿が花火のように爆発。そして紅白入り乱れた鉢巻きは会場へ降り注いだ。
身長が低い愛染は鉢巻きを取るのにも一苦労。だが彼は練度が最高にまで鍛えられ、その上修業に出て極めている。刀剣男士の中でも随一の機動力を誇る愛染は見事スライディングキャッチで鉢巻きをゲットした。
「よっしゃ! 主さん、鉢巻きゲットしたぜ!」
「よろしおすなあ。せやけど、うちと違うて赤組なんやねえ。うふふ、負けてもええ理由が出来たわあ」
「もー、何言ってんだよ主さん。祭りは全力で楽しまねえと損だぜ? 祭りなんて滅多にねえんだからよ!」
愛染は審神者が敵に回っても祭りを楽しむ気満々のようだ。戦場であれば生きるか死ぬかの命のやり取り。だが、こんな祭りで死にはしないだろう。もちろん世界各国には危険すぎる祭りもあるし、死者が出るような祭典だって存在するのだが。
ちなみにお雛様候補がふぶき姫たちではないと知ったケータたちは、鉢巻き争奪戦に参加。全員赤組であった。
各参加者がスタートラインに立った。ゴールである巨大ひな壇に座った方の勝利である。隣に座る御内裏様は御簾に隠れて顔が見えないが、いかにも高級そうな赤色の道服がちらりとお目見えしている。
「それでは皆さん、準備は良いですか?」
「位置について! よーい、スタートッ!」
ふぶき姫が巨大な氷を生み出し、椿姫がそれを木っ端微塵に破壊する。ド派手な合図とともに、各選手がひな壇の頂上へ向かって駆け出した。