第19話
ズルッグはタマゲタケの群れへ向かって手を出していた。いきなり頭突きを食らった群れは憤るも、ズルッグは外方を向く。
「……ズルッグ! 早く、こっち‼︎」
ズルッグがタマゲタケたちに挑む姿を発見したサニワは、すぐに離れるように声をかける。その声は緊迫感を孕んでおり、何事かとポケモンたちは一斉にサニワたちの元へ移動した。
タマゲタケは敵に毒の胞子を振りかけ、撃退する習性を持っている。勇猛果敢に向かっていくズルッグは、タマゲタケにとって迎撃すべき敵でしかなかった。
ズルッグは毒の胞子を頭から被る。近くにいたサニワも大量に浴び、近づいていたポケモンたちも吸い込んでしまった。
身体に力が入らず、どさりとその場に崩れ落ちるポケモンたちとサニワ。無事だったのは、遅れて駆けつけたこんのすけとアイリスとデントだけだった。
こんのすけは主の不調を目に入れると、途端に顔色を青ざめる。慌てて逃げ去るタマゲタケの姿を視界に入れたデントが事態を把握し、アイリスが水辺で特訓するサトシを呼びに行く。
『主さま‼︎ 気をお確かに……!』
「ピカチュウ! 大丈夫か⁉︎」
「きっと、タマゲタケたちの毒胞子を吸い込んでしまったのね。皆動けないみたい……」
「皆を治すには毒消しが必要なんだけど、生憎手持ちが無いんだ。……駄目だ、近くにポケモンセンターもないみたいだ」
デントがタウンマップを操作していると、こんのすけがサニワの鞄の中身を次から次へと放り出していく。その中には、ポケモン用の毒消しが大量にあった。
「やった! これで皆が治るぞ!」
「これで一先ずは大丈夫だけど、治るにはしばらくかかりそうね。それに人間のサニワには、どれも使えない物ばかりだわ……」
そう。サニワの鞄に入っていたのは、ポケモン用の毒消しである。彼女に使えば、むしろ逆効果になりかねない代物だったのだ。
心配そうに表情を曇らせるアイリスだったが、何かを思い出したのか、パッと顔をあげる。
「ねぇ、向こうの池にシレット水草は生えてないかな。煎じて飲めば毒消しの効果があるの。人間のサニワにも効くわ!」
「助かった! あるよ水草!」
「よし! ミジュマル、探しに行こう!」
「僕も行くよ!」
シレット水草は、人間が通れないような池の底にある割れ目に生えている。そのため、昔は専門の職人が水ポケモンの力を借りて採取していたそうだ。
水の中で目を開けていられないミジュマルだと、取りに行くのに時間がかかりそうだ。だが、サトシが耳を引っ張って位置を教えると豪語している。
ミジュマルと酸素ボンベを背負ったサトシは、水の中へ飛び込んだ。酸素ボンベは、サニワがトゲキッスの背に乗り、かなりの高度を飛行する際に使用する物だった。
水の中へ沈んでいく二人を見て、デントは心配そうに呟いた。
一方その頃、毒状態から回復したポケモンたちが、熱に魘されているサニワを心配そうに見詰めていた。
あの後、サニワの鞄からは少量のラムのみとモモンのみ、それから体力回復のオレンのみやオボンのみが発掘されたが、これだけではサニワの解毒するには量が足りないのだ。
だが摂らないよりは良いとアイリスは判断し、それらをすり潰してジュースにしたものを口へ含ませた。バンギラスは飲みやすいようにと主人の身体を支え、甲斐甲斐しく彼女の世話を焼いている。サニワのポケモンたちの目は涙で潤んでおり、キュウコンは今にも泣き出しそうだ。
すると、熱に浮かされたサニワの口から、苦しそうに言葉が紡がれた。
「……だめ、止めて、ダンデさ、キバナ、さ……。お願い……」
ダンデはサニワがチャンピオンを務める前に君臨していた人物だ。
またキバナはガラル地方のトップジムリーダーであり、ドラゴンタイプを扱う男で、アイリスが憧れを抱いている一人でもある。二人の強さは、違う地方出身のアイリスもよく知っていた。
彼女は二人に対してなのか、必死に「やめて」と懇願している。一体何があったのだろうか。
「サニワ? どうしたの?」
「……壊さないで……。帰れ……な……」
ヒウンシティで、こんのすけから聞いた話。ダンデとキバナの手により、サニワの世界を繋ぐものを破壊された、と。恐らく、彼女はその時の事を熱で繰り返しているのだろう。一筋の涙が頬を伝った。
アイリスが彼女を起こすと、サニワは蕩けた眼でアイリスを見つめる。夢だとわかり安堵したのか、一瞬だけ儚げな笑みを浮かべると、眠るように意識を飛ばした。
それからしばらくすると、サニワの呼吸が一気に荒いものとなり、体温も急激に上昇した。一気に重症化したのだ。
意識を失った主人を一瞥すると、こんのすけは湖畔の方向へ駆け出した。
「……ズルッグ! 早く、こっち‼︎」
ズルッグがタマゲタケたちに挑む姿を発見したサニワは、すぐに離れるように声をかける。その声は緊迫感を孕んでおり、何事かとポケモンたちは一斉にサニワたちの元へ移動した。
タマゲタケは敵に毒の胞子を振りかけ、撃退する習性を持っている。勇猛果敢に向かっていくズルッグは、タマゲタケにとって迎撃すべき敵でしかなかった。
ズルッグは毒の胞子を頭から被る。近くにいたサニワも大量に浴び、近づいていたポケモンたちも吸い込んでしまった。
身体に力が入らず、どさりとその場に崩れ落ちるポケモンたちとサニワ。無事だったのは、遅れて駆けつけたこんのすけとアイリスとデントだけだった。
こんのすけは主の不調を目に入れると、途端に顔色を青ざめる。慌てて逃げ去るタマゲタケの姿を視界に入れたデントが事態を把握し、アイリスが水辺で特訓するサトシを呼びに行く。
『主さま‼︎ 気をお確かに……!』
「ピカチュウ! 大丈夫か⁉︎」
「きっと、タマゲタケたちの毒胞子を吸い込んでしまったのね。皆動けないみたい……」
「皆を治すには毒消しが必要なんだけど、生憎手持ちが無いんだ。……駄目だ、近くにポケモンセンターもないみたいだ」
デントがタウンマップを操作していると、こんのすけがサニワの鞄の中身を次から次へと放り出していく。その中には、ポケモン用の毒消しが大量にあった。
「やった! これで皆が治るぞ!」
「これで一先ずは大丈夫だけど、治るにはしばらくかかりそうね。それに人間のサニワには、どれも使えない物ばかりだわ……」
そう。サニワの鞄に入っていたのは、ポケモン用の毒消しである。彼女に使えば、むしろ逆効果になりかねない代物だったのだ。
心配そうに表情を曇らせるアイリスだったが、何かを思い出したのか、パッと顔をあげる。
「ねぇ、向こうの池にシレット水草は生えてないかな。煎じて飲めば毒消しの効果があるの。人間のサニワにも効くわ!」
「助かった! あるよ水草!」
「よし! ミジュマル、探しに行こう!」
「僕も行くよ!」
シレット水草は、人間が通れないような池の底にある割れ目に生えている。そのため、昔は専門の職人が水ポケモンの力を借りて採取していたそうだ。
水の中で目を開けていられないミジュマルだと、取りに行くのに時間がかかりそうだ。だが、サトシが耳を引っ張って位置を教えると豪語している。
ミジュマルと酸素ボンベを背負ったサトシは、水の中へ飛び込んだ。酸素ボンベは、サニワがトゲキッスの背に乗り、かなりの高度を飛行する際に使用する物だった。
水の中へ沈んでいく二人を見て、デントは心配そうに呟いた。
一方その頃、毒状態から回復したポケモンたちが、熱に魘されているサニワを心配そうに見詰めていた。
あの後、サニワの鞄からは少量のラムのみとモモンのみ、それから体力回復のオレンのみやオボンのみが発掘されたが、これだけではサニワの解毒するには量が足りないのだ。
だが摂らないよりは良いとアイリスは判断し、それらをすり潰してジュースにしたものを口へ含ませた。バンギラスは飲みやすいようにと主人の身体を支え、甲斐甲斐しく彼女の世話を焼いている。サニワのポケモンたちの目は涙で潤んでおり、キュウコンは今にも泣き出しそうだ。
すると、熱に浮かされたサニワの口から、苦しそうに言葉が紡がれた。
「……だめ、止めて、ダンデさ、キバナ、さ……。お願い……」
ダンデはサニワがチャンピオンを務める前に君臨していた人物だ。
またキバナはガラル地方のトップジムリーダーであり、ドラゴンタイプを扱う男で、アイリスが憧れを抱いている一人でもある。二人の強さは、違う地方出身のアイリスもよく知っていた。
彼女は二人に対してなのか、必死に「やめて」と懇願している。一体何があったのだろうか。
「サニワ? どうしたの?」
「……壊さないで……。帰れ……な……」
ヒウンシティで、こんのすけから聞いた話。ダンデとキバナの手により、サニワの世界を繋ぐものを破壊された、と。恐らく、彼女はその時の事を熱で繰り返しているのだろう。一筋の涙が頬を伝った。
アイリスが彼女を起こすと、サニワは蕩けた眼でアイリスを見つめる。夢だとわかり安堵したのか、一瞬だけ儚げな笑みを浮かべると、眠るように意識を飛ばした。
それからしばらくすると、サニワの呼吸が一気に荒いものとなり、体温も急激に上昇した。一気に重症化したのだ。
意識を失った主人を一瞥すると、こんのすけは湖畔の方向へ駆け出した。