第3話
コーンと呼ばれた青い髪のウェイターは、うっとりと恍惚の表情で、ぎゅっとサニワの手を握りこむ。
彼がゆっくりと話し合いたいと言うので、サニワは周囲の女性客の刺すような視線に怯えつつ、奥の部屋の席へ移動した。
おずおずと案内された席へ腰掛け、出されたロイヤルミルクティを恐る恐る口へ含む。彼が淹れてくれたその紅茶は泥水のような味がしたが、サニワはそれを表に出すことはなかった。
「……おいしい」
「それは良かったです」
コーンは向かいの席へ腰掛けると、サニワがカチャリ、とティーカップをソーサーの上へ置く。彼女の自由になった手を、まるで壊れ物を扱うように、コーンはそっと繊細に握った。
「あの時、貴女たちが救ってくれなければ……コーンはここにはいなかったでしょう。本当に、ありがとうございました」
「そんな……お気になさらないでください。主さまがしたくて行ったことですから」
お店の様子が気になったこんのすけは、ちらりと後ろを見遣る。
この部屋に引っ込んでから一気に客の数が減り、店は閑古鳥の鳴く状態に。完全に店を閉めたのか、緑髪と赤髪の従業員も同じテーブルに腰かけると、興味津々にサニワを見つめているのだ。
なんだか営業の邪魔をしてしまったような気がして、どこか罪悪感を感じるサニワ。しかし、その顔つきは変わらない無表情のままだ。
「それにしても、あの時の子がこんなに立派に成長していらしたとは!」
「えぇ。あれからかなりの年月が経過しましたから。……ですが、貴女はあの時と変わらない……。お美しいお姿のままですね」
「……まあ、あそこは隠り世というか、常世 みたいなところですからねぇ……」
「「「へ?」」」
異口同音に気の抜けた声をあげる従業員三名。この世界ではあまり聴き慣れない言葉なのだろう。
完全にリラックスモードに突入したこんのすけは、かしかしと頭を後ろ足で掻きながら説明をした。
「コーンさま、よく思い出してみてください。どうやって主さまの本丸へ訪れたのか」
「……確か、サザナミ湾でホエルコウォッチングをしていましたね」
「そん時、船からコーンが海に落ちたんだよな」
「コーンが見つかったのは、それから二週間後……だったけど」
「……つまり、コーンさまは一度溺死されたものの、主さまの恩徳を賜り、現世 へ帰還された。要するに『あの世巡り』をその身を持って体験なさったのです」
「あの世って、まさか……」
「えぇ、そのまさかです」
くわあぁ、と大きな欠伸を漏らすこんのすけとは対照的に、コーン以外の二人は感心したように彼を見つめていた。
ところがコーンは幼い頃に見ているからか、全く驚く素振りを見せない。むしろ血の気が引いていた。だが、すぐ顔色を元に戻し、あまり聞かれたくない話を持ち出してきたのだ。
「そういえば……この世界にいらしたのはどうしてですか? 審神者のお仕事で?」
「……いえ、違います。今からお話しする内容は、くれぐれもご内密にお願いします」
妖狐は本当の事を語るべきか悩んでいた。だが、味方は多い方が良い。事情を話せば、彼らはきっと協力してくれるであろう。
こんのすけはじっと従業員を見据える。対する彼らは、どこか威厳のある佇まいに固唾を呑み込んだ。
彼がゆっくりと話し合いたいと言うので、サニワは周囲の女性客の刺すような視線に怯えつつ、奥の部屋の席へ移動した。
おずおずと案内された席へ腰掛け、出されたロイヤルミルクティを恐る恐る口へ含む。彼が淹れてくれたその紅茶は泥水のような味がしたが、サニワはそれを表に出すことはなかった。
「……おいしい」
「それは良かったです」
コーンは向かいの席へ腰掛けると、サニワがカチャリ、とティーカップをソーサーの上へ置く。彼女の自由になった手を、まるで壊れ物を扱うように、コーンはそっと繊細に握った。
「あの時、貴女たちが救ってくれなければ……コーンはここにはいなかったでしょう。本当に、ありがとうございました」
「そんな……お気になさらないでください。主さまがしたくて行ったことですから」
お店の様子が気になったこんのすけは、ちらりと後ろを見遣る。
この部屋に引っ込んでから一気に客の数が減り、店は閑古鳥の鳴く状態に。完全に店を閉めたのか、緑髪と赤髪の従業員も同じテーブルに腰かけると、興味津々にサニワを見つめているのだ。
なんだか営業の邪魔をしてしまったような気がして、どこか罪悪感を感じるサニワ。しかし、その顔つきは変わらない無表情のままだ。
「それにしても、あの時の子がこんなに立派に成長していらしたとは!」
「えぇ。あれからかなりの年月が経過しましたから。……ですが、貴女はあの時と変わらない……。お美しいお姿のままですね」
「……まあ、あそこは隠り世というか、
「「「へ?」」」
異口同音に気の抜けた声をあげる従業員三名。この世界ではあまり聴き慣れない言葉なのだろう。
完全にリラックスモードに突入したこんのすけは、かしかしと頭を後ろ足で掻きながら説明をした。
「コーンさま、よく思い出してみてください。どうやって主さまの本丸へ訪れたのか」
「……確か、サザナミ湾でホエルコウォッチングをしていましたね」
「そん時、船からコーンが海に落ちたんだよな」
「コーンが見つかったのは、それから二週間後……だったけど」
「……つまり、コーンさまは一度溺死されたものの、主さまの恩徳を賜り、
「あの世って、まさか……」
「えぇ、そのまさかです」
くわあぁ、と大きな欠伸を漏らすこんのすけとは対照的に、コーン以外の二人は感心したように彼を見つめていた。
ところがコーンは幼い頃に見ているからか、全く驚く素振りを見せない。むしろ血の気が引いていた。だが、すぐ顔色を元に戻し、あまり聞かれたくない話を持ち出してきたのだ。
「そういえば……この世界にいらしたのはどうしてですか? 審神者のお仕事で?」
「……いえ、違います。今からお話しする内容は、くれぐれもご内密にお願いします」
妖狐は本当の事を語るべきか悩んでいた。だが、味方は多い方が良い。事情を話せば、彼らはきっと協力してくれるであろう。
こんのすけはじっと従業員を見据える。対する彼らは、どこか威厳のある佇まいに固唾を呑み込んだ。