第16話

 雷鳴が轟く中、ロケット団を探すサトシたち。
 部屋の花瓶が突如宙に浮かぶ。それと同時に、サニワがヒトモシから手を離し、警戒心を顕にさせる。サニワが威嚇するその方向には、ヒトモシの仲間の姿があった。


「皆さま! 伏せてください!」


 ヒトモシの仲間はサイコキネシスで花瓶をぶつけようとするも、こんのすけの一声で皆に怪我はない。
 だが敵ではないと説得するサトシの声も届く様子もなく、サイコキネシスでシャンデリアを落下させた。直撃すればひとたまりもないので、一旦別の部屋に避難する。ヒトモシたちには深追いする気はないようだ。

 だがその時には、キバゴとヒトモシの姿は消えていた。先ほど逃げる時に逸れてしまったらしい。ひとまずロケット団の捜索を中止し、キバゴを捜索することにした。

 キバゴを呼びながら、廊下を進む一同。だが、サニワとピカチュウの耳に届いたのは探し人の声ではなく、ヒトモシのそれだった。咄嗟にピカチュウとサニワは後ろを振り返るも、背後には何もいない。彼らが顔を見合わせたその時、ヒトモシの魔の手が襲い掛かる。
 ピカチュウとサニワの不在に気づいたのは、それからしばらく経ってからだった。


「……あれ? ピカチュウは?」
「サニワもいないぞ!」
「まさか、ピカチュウとサニワまで逸れちゃったの⁉︎」
「主さま! 主さまー! 返事をなさってくださーい‼︎」


 まさか自身の主人まで行方不明になってしまうとは。隈取りでわかりづらいが、こんのすけの顔から瞬く間に血色が引く。そのまま探しに突っ走ろうとする彼を、慌ててデントが止めた。


「こんのすけ、一度落ち着くんだ! 君まで逸れてしまったら、もっと大変なことになる!」
「そっ……そう、ですね。申し訳ありません」


 冷静さを取り戻したこんのすけは、ふと思い出した。ヒトモシの図鑑説明が途中で途切れたことを。サニワとは別の型と言えど、途中で途切れるなんて今までになかったのに。
 サトシはもう一度図鑑に触れると、ヒトモシの恐ろしい説明が無機質な音声で流れ出す。

 ヒトモシはまるで真っ暗な道の足元を照らし、案内するかのように振舞うが、それは霊界へ誘っているのだと。
 それを聞いた途端、こんのすけは再びパニックになって主さまと連呼しながら、闇雲に突っ走る。すると運よくヒトモシの姿を見つけたのだ。
 彼らの後を追うと、地下室だろうか。薄暗い部屋の壁に凭れ掛かり、すやすやと眠るサニワと、彼らのそばで眠るポケモンたちの姿が。


「ピカチュウ、大丈夫か?」
「キバゴ、大丈夫?」
「主さまーーーーーーーー! あぁ良かった、よくぞご無事でえぇぇ……!」
『……うるさい』
「ひどんい! 私がどれだけ心配したと思ってるんですかぁ‼︎」


 自身のパートナーの無事に安堵する中、サニワだけが辛辣な言葉を浴びせる。まさか毒舌が返ってくると思わなかったこんのすけは、キャンキャンと泣きながら文句を言った。
 胸を撫で下ろすのも束の間、ひとりでに出入り口の扉が閉まる。だがすぐに破壊され、近くにいたデントが情けない声を上げた。


「『な、何だ!』と聞かれたら……」
「答えてあげよう明日のため……」


 いきなり現れたかと思うと、長い口上を喋り始めたロケット団。あまりにも窶(やつ)れた彼らが心配になったサニワは、離し続ける彼らにスタスタと近づいた。なんの躊躇も戸惑いもなく向かってくる彼女に、ロケット団も困惑を隠せない。
 周囲が混乱していると、サニワはムサシと名乗る赤髪の女の手を優しく握った。するとたちまちムサシの顔色が良くなり、肌艶も元通りになっていく。


「……はい」
「も、元に戻ってる⁉︎」
「治った。……次、誰?」
「じゃあ俺ッ! 俺治して‼︎」
「ズルいニャ! ニャーも早くこの状態から抜け出したいのニャ‼︎」
「……順番……落ち着く。できる?」
「ハイなのニャ!」
「……いいこ、いいこ。……かわいいね」
「にゃ、にゃあ……ニャーを可愛いって言ってくれたのは初めてなのニャァ……」


 今度はコジロウと名乗る男の手を握ると、彼も見る見るうちに英気が満ちていく。いつの間にか、ちゃっかりとニャースも彼の後ろに並んでおり、律儀に順番を待っている。もちろんニャースの手も握って、微量の神力を注ぎ込んだ。
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