第15話

「んもー、どこに行っちゃったのよー……」


 サニワはアイリスの服の裾を引っ張り、木の上を指す。その方向へアイリスが見遣ると、そこにはエモンガがすやすやと眠っていた。エモンガはちらりとアイリスを一瞥すると、再び眠りに入る。
 流石のアイリスもこの態度には酷く腹が立ったようで、先ほどとは違い怒り心頭であった。


「もう! ボルトチェンジでツタージャとチャオブーがバトルすることになっちゃったのよ! これじゃ練習にならないじゃない!」


 ところが、主人の声も全く意に介さず、エモンガは二度寝を決め込む。それを見兼ねたサニワはサーナイトをボールから出すと、サイコキネシスでエモンガを下ろすように指示を出した。


「……やがみちゃん、サイコキネシス。エモンガ、おろして」


 私じゃないの? とじっと主人を見つめるバンギラス。サニワは彼女を撫でて宥めた。
 周囲の目には、サニワの顔は無表情のまま変わっていないように見えるだろう。だが、バンギラスは主人の表情の変化がわかっていた。


「……ギリギリ、届かない。……無理やり、落とす……ちょっと、やりすぎ?」


 流石にバンギラスのストーンエッジを放つのは行き過ぎだと考えたのである。
 だがサーナイトがサイコキネシスを放つ前に、蔓がエモンガの身体に巻きつく。そして木の上から引き摺り下ろされ、サトシたちの元へ差し出された。この蔓はツタージャのものらしい。
 アイリスも慌ててサトシたちの元へ駆け戻っていく。だがサニワは、彼女の背を追いかけることはなかった。


「……昨日、野生。……指示、聞くの、きらい?」
<そもそもの性格が酷いんじゃないですか? ボールの中から拝見しておりましたが……。あの自己中心的な性格を直さないと駄目でしょう。ボールに入ったのだから、トレーナーの指示は聞くべきです>
<そうねぇ……。でも、エモンガちゃんはバトルする気がないのに、無理やりさせるから怒っちゃうのも仕方ないと思うわ。でも、指示は聞かないと駄目よね。反抗期なのかしら>
「……心配」


 そうサニワが言葉を溢した途端、ツタージャがこちらに駆け寄ってきた。一体どうしたのか尋ねようとしゃがみ込むと、サトシたちの方角から黄色い稲妻が迸る。一瞬ピカチュウのものかと思いきや、ツタージャに聞くとエモンガが放電したらしい。

 サニワたちは慌ててサトシたちの元へ駆け寄ると、エモンガの放電の影響で、彼らの髪型が大爆発を起こしていた。
 こんのすけと彼の側にいたキバゴだけが無傷である。こんのすけが咄嗟に結界を張ったものの、いきなりのことなので広範囲まで展開できなかったのだ。


「……?」
「サニワー……!」
「ねぇねぇサニワちゃん! この髪型良くない⁉︎ あたし気に入っちゃった!」


 アイリスは大粒の涙を流してサニワに抱きつくが、サニワの身体はあっさりとそれを躱す。サーナイトがサイコキネシスでサニワの身体を動かしたのだ。
 勢いづいていたアイリスの身体は後ろに控えていたバンギラスに激突したが、そのままアイリスはバンギラスに慰めてもらっている。
 この場で笑顔なのは、ボンバーヘアが気に入ったベルだけであった。
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