第11話
「サニワちゃん、遠慮は要らないし、僕も手加減しない。君の真の実力を見せておくれ」
「……」
アーティの言葉に頷いたサニワがボールを握った。彼女の纏う雰囲気が、清廉で儚げで、聖女の持つ神秘的なそれから打って変わり、恐ろしくて威厳があって、軍人らしい、猛者の持つそれへと変貌する。
能あるウォーグルは爪を隠すと言う。まさしく彼女は、そのウォーグルであった。
互いにモンスターボールを宙へ放り投げ、ポケモンをバトルフィールドへ送り出す。ジムリーダーの先鋒は岩・虫タイプのイシズマイ。対するチャレンジャーは草・格闘タイプのビリジオンだ。
まさか伝説のポケモンを捕獲していたとは思いもよらず、ギャラリーは驚愕の声を上げた。
「えげェッ⁉︎ いつの間にゲットしてたのォ⁉︎」
「かなり懐いているようですね……。これではまるで人懐っこいウールーの如し……」
「イシズマイ、シザークロス!」
「くしなちゃん!」
先に攻撃を仕掛けたのはジムリーダーであった。
イシズマイの輝く鋭利な爪をしなやかな動きで避けていく。そして反撃に転じ、聖なる剣を繰り出すものの、守るで障壁を張られ防がれた。
「今だイシズマイ! 岩石砲!」
「くしなちゃん!」
至近距離からの岩石砲を舞い踊るかのように間一髪で躱した。それに相対するかのように、サニワの口角も歪む。ビリジオンのその動きに、サニワの表情の変化に、アーティは違和感を感じた。
「聖なる剣!」
「穴を掘って躱すんだ!」
神秘的に煌く角がぶつかる直前で、地中に潜るイシズマイ。
ビリジオンの背後を取り岩石砲を放つも、イシズマイの放った岩石の弾丸は、軽やかな動きで避けられた。
再び聖なる剣を繰り出したものの、やはり守るで防がれ、岩石砲が襲いかかる。今回は躱されることなく若草色の身体に命中した。
ところが、高威力とはいえ相性が不利な技。そこまでダメージは入っておらず、戦意は喪失していない。むしろ逆に闘志は燃え上がっているようだった。
「リーフブレード!」
「躱すんだ!」
岩石砲は高威力な反面、撃つと疲弊により次の行動までに時間がかかる。何発も連続で放ったせいで、イシズマイは一歩も動けない状態だ。無防備なイシズマイに、ビリジオンのリーフブレードが襲いかかる。
急所に攻撃を食らったイシズマイはアーティの後ろまで吹き飛ばされ、ぐるぐると目を回す。審判の声がジム内部に轟き、戦闘不能になったイシズマイをボールへ戻した。
「イシズマイ、戦闘不能! ビリジオンの勝ち!」
「気づかなかったよ。剣の舞を繰り出していたとはね」
「……わたし、何も、言ってない。……でも、わかった、どうして?」
「気づいたのは攻撃を食らってからさ」
無事に勝利を収めたビリジオンを労るサニワの瞳。先ほどまでの猛者のそれは鳴りを潜め、優しいそれへ戻っている。しかしそれも一瞬のことだった。
ジムリーダーの中堅はホイーガだ。相手との相性を鑑みたサニワは一旦ボールへ戻そうとするが、ビリジオンはまだ戦う意志を見せる。
「……気持ち、わかる。でも、痛い。……一度、退 くべき。……無茶、だめ」
「サニワちんが言うと、一段と重みが増して仄暗く聞こえるね〜」
自身の身を案じる主人の言葉に逆らえるわけがない。厚い忠誠を誓った若草色の騎士は、小さく頷くと素直にボールへ戻る。
しかしながら、不条理に満ちた悲惨な戦場を身を持って経験してきたサニワの言葉は、その事情を知る者にとって一段と重みを増していて。特にバトルを見守るギャラリーにとっては、まるでカビゴンがのしかかったように、人一倍その重さを感じていた。
次にサニワがバトルフィールドへ送り出したのは、氷・虫タイプのモスノウ。彼女はボールから出ると、信頼する主人へ顔を向け頷いた。
「ほう、氷と虫タイプのモスノウか。虫タイプのジムリーダーである僕に、虫ポケモンで挑まれるとはね……。今度は易々と勝たせないよ!」
「……勝つのは、こっち」
両者がしばらく睨み合う。先に攻撃を仕掛けたのはジムリーダーの方だった。
「ホイーガ、ハードローラー!」
「メロメロ!」
高速回転して突っ込んでいくホイーガ。見事命中したものの、すれ違いざまにメロメロを浴びせられ、まともに命令すら聞かない。
攻撃を受け止めた白銀の蚕は、痛くも痒くもない素振りを見せる。全く物ともしないその様子に、アーティは目を丸くした。
「ハードローラーが効いていない⁉︎」
「エアスラッシュ!」
「ホイーガ、守るだ!」
驚いているその隙に、モスノウの猛攻が襲いかかる。咄嗟に守るを指示するが、メロメロ状態のホイーガに命令が通るはずもなく、効果抜群の技が直撃する。
アーティは敵地に入り込んだような、険しい表情を浮かべる。敵地に乗り込んだのは、相手のはずなのに。
さすが無敵と称されるダンデを下し、ガラル地方のチャンピオンに君臨しただけのことはある。戦力差は圧倒的だ。しかしジムリーダーとして、諦めるわけにはいかない。
ところがアーティの決意を容易く圧し折るかの如く、メロメロ状態から復活しないまま連続エアスラッシュの餌食となり、ホイーガは目を回して力尽きた。
「……」
アーティの言葉に頷いたサニワがボールを握った。彼女の纏う雰囲気が、清廉で儚げで、聖女の持つ神秘的なそれから打って変わり、恐ろしくて威厳があって、軍人らしい、猛者の持つそれへと変貌する。
能あるウォーグルは爪を隠すと言う。まさしく彼女は、そのウォーグルであった。
互いにモンスターボールを宙へ放り投げ、ポケモンをバトルフィールドへ送り出す。ジムリーダーの先鋒は岩・虫タイプのイシズマイ。対するチャレンジャーは草・格闘タイプのビリジオンだ。
まさか伝説のポケモンを捕獲していたとは思いもよらず、ギャラリーは驚愕の声を上げた。
「えげェッ⁉︎ いつの間にゲットしてたのォ⁉︎」
「かなり懐いているようですね……。これではまるで人懐っこいウールーの如し……」
「イシズマイ、シザークロス!」
「くしなちゃん!」
先に攻撃を仕掛けたのはジムリーダーであった。
イシズマイの輝く鋭利な爪をしなやかな動きで避けていく。そして反撃に転じ、聖なる剣を繰り出すものの、守るで障壁を張られ防がれた。
「今だイシズマイ! 岩石砲!」
「くしなちゃん!」
至近距離からの岩石砲を舞い踊るかのように間一髪で躱した。それに相対するかのように、サニワの口角も歪む。ビリジオンのその動きに、サニワの表情の変化に、アーティは違和感を感じた。
「聖なる剣!」
「穴を掘って躱すんだ!」
神秘的に煌く角がぶつかる直前で、地中に潜るイシズマイ。
ビリジオンの背後を取り岩石砲を放つも、イシズマイの放った岩石の弾丸は、軽やかな動きで避けられた。
再び聖なる剣を繰り出したものの、やはり守るで防がれ、岩石砲が襲いかかる。今回は躱されることなく若草色の身体に命中した。
ところが、高威力とはいえ相性が不利な技。そこまでダメージは入っておらず、戦意は喪失していない。むしろ逆に闘志は燃え上がっているようだった。
「リーフブレード!」
「躱すんだ!」
岩石砲は高威力な反面、撃つと疲弊により次の行動までに時間がかかる。何発も連続で放ったせいで、イシズマイは一歩も動けない状態だ。無防備なイシズマイに、ビリジオンのリーフブレードが襲いかかる。
急所に攻撃を食らったイシズマイはアーティの後ろまで吹き飛ばされ、ぐるぐると目を回す。審判の声がジム内部に轟き、戦闘不能になったイシズマイをボールへ戻した。
「イシズマイ、戦闘不能! ビリジオンの勝ち!」
「気づかなかったよ。剣の舞を繰り出していたとはね」
「……わたし、何も、言ってない。……でも、わかった、どうして?」
「気づいたのは攻撃を食らってからさ」
無事に勝利を収めたビリジオンを労るサニワの瞳。先ほどまでの猛者のそれは鳴りを潜め、優しいそれへ戻っている。しかしそれも一瞬のことだった。
ジムリーダーの中堅はホイーガだ。相手との相性を鑑みたサニワは一旦ボールへ戻そうとするが、ビリジオンはまだ戦う意志を見せる。
「……気持ち、わかる。でも、痛い。……一度、
「サニワちんが言うと、一段と重みが増して仄暗く聞こえるね〜」
自身の身を案じる主人の言葉に逆らえるわけがない。厚い忠誠を誓った若草色の騎士は、小さく頷くと素直にボールへ戻る。
しかしながら、不条理に満ちた悲惨な戦場を身を持って経験してきたサニワの言葉は、その事情を知る者にとって一段と重みを増していて。特にバトルを見守るギャラリーにとっては、まるでカビゴンがのしかかったように、人一倍その重さを感じていた。
次にサニワがバトルフィールドへ送り出したのは、氷・虫タイプのモスノウ。彼女はボールから出ると、信頼する主人へ顔を向け頷いた。
「ほう、氷と虫タイプのモスノウか。虫タイプのジムリーダーである僕に、虫ポケモンで挑まれるとはね……。今度は易々と勝たせないよ!」
「……勝つのは、こっち」
両者がしばらく睨み合う。先に攻撃を仕掛けたのはジムリーダーの方だった。
「ホイーガ、ハードローラー!」
「メロメロ!」
高速回転して突っ込んでいくホイーガ。見事命中したものの、すれ違いざまにメロメロを浴びせられ、まともに命令すら聞かない。
攻撃を受け止めた白銀の蚕は、痛くも痒くもない素振りを見せる。全く物ともしないその様子に、アーティは目を丸くした。
「ハードローラーが効いていない⁉︎」
「エアスラッシュ!」
「ホイーガ、守るだ!」
驚いているその隙に、モスノウの猛攻が襲いかかる。咄嗟に守るを指示するが、メロメロ状態のホイーガに命令が通るはずもなく、効果抜群の技が直撃する。
アーティは敵地に入り込んだような、険しい表情を浮かべる。敵地に乗り込んだのは、相手のはずなのに。
さすが無敵と称されるダンデを下し、ガラル地方のチャンピオンに君臨しただけのことはある。戦力差は圧倒的だ。しかしジムリーダーとして、諦めるわけにはいかない。
ところがアーティの決意を容易く圧し折るかの如く、メロメロ状態から復活しないまま連続エアスラッシュの餌食となり、ホイーガは目を回して力尽きた。