第12話

 ポケモンセンター付近まで何とか辿り着くと、目を回したフシデたちが無残な姿で転がっていた。どうやら炎ポケモンたちが、トレーナーの指示でフシデの群れを攻撃しているようだ。
 リーダー格の少年は、群れに向かって情け容赦なく火炎放射を指示する。彼の合図で、炎タイプのポケモンたちがを一斉に炎を炸裂させた。


「火炎放射!」
「まがみちゃん、アヌビス、フシデ、護って!」


 放たれた炎の光線は、神々しい二匹の狼によってフシデたちに直撃することはなかった。
 まがみちゃんと呼ばれた一匹は、蒼い色に黄金に輝く剣を携え、アヌビスと呼ばれたもう一匹は、紅い色に鬣が盾のように煌めいている。


「何でこんな事をするんだ!」
「それを言うのはこっちだシューティー! どうしてフシデたちを攻撃するんだよ!」
「彼らは一方的に人間を襲っている。排除するのは当然のことだよ」


 シューティーと呼ばれた少年はふん、と鼻を鳴らして、やや見下した態度を取る。それに苛立ったサトシは突っかかろうとしたが、サニワと二匹の狼が素早く彼らの間に入って仲裁した。


「……フシデ、怖がる、してる。……今、原因、調べてる。……攻撃、もっと怖い。……だから、だめ」
「ガラル地方のチャンピオンが、まさかこんな場所で油を売っているとは思いませんでしたよ。サニワさん」
「……初めまして、ちがう?」


 周囲がざわつき始めたが、とにかく今はフシデたちの排除をやめさせないと。口を開こうとしたと同時に、グレーのスーツを身に纏った恰幅の良い男性が現れた。


「このままではヒウンシティの都市機能が停止してしまう。それにフシデの毒も危険だ。市民の安全を考えれば強制排除もやむを得ない」
「攻撃、だめ! 絶対だめ!」
「君は……! アローラ地方のあの事件を、数日で鎮圧させた……‼︎」
「アローラ地方の、あの事件……?」


 
 何かに惹かれたのか、はたまた偶然の重なり合いか。この世界に迷い込んでしまった時間遡行軍(じかんそこうぐん)は、アローラ地方へ侵略を開始。
 更に驚くべきことに、時間遡行軍はウツロイドに寄生された状態だった。ウツロイドに寄生された対象は極度の興奮と自我の開放により、心理的な抑制力が麻痺し、自らの情動や欲望のままに暴走する。
 そんな状態で現れた時間遡行軍を、たった五日で殲滅。あまりにも次元が離れた強さに、この世界中のパパラッチがサニワたちを英雄扱いして追いかけ回したのは言うまでもない。

 まさかこんな小さな少女が、大事件を解決させていたとは。一緒に旅に同行しているサニワが、歴史に名を残すような英雄であると知らなかったサトシたちは、まるでマメパトが水鉄砲を喰らったような、呆気にとられた面持ちだ。
 だが肝心の本人は、ヒウンシティの市長へ説得するのに必死だ。服の裾をガッチリと掴み、首をぶんぶんと左右に振って、フシデの群れへの攻撃を考え直すよう、必死に説得する。


「フシデ、攻撃……いっぱい怖い、だめ! もっと怖い、感じる!」
「対テロリスト対策部隊に在籍し、激しい戦場を潜り抜けてきたいたという君のことだ。その通りなのだろうが……他に方法があるのかね?」
「サニワちゃんは、フシデたちを中央に集めるべきだと主張してます。これだけ大きな大群ですから、統率する指揮官が必要だと。それと和平協定を結べば良い……で、合ってるかい?」
「なるほど……わかった。君の作戦に乗ってみよう。ただし、セントラルエリアに集めることができなければ、強制排除に踏み切る。それでいいね?」
「……わかった」


 そう頷くサニワ。子どものような喋り方で、市長を納得させるその様は、異様の一言に尽きる。ところが、サニワはそれができてしまうのだった。サニワは、立派な軍人なのだから。
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