第9話
ズルッグを折りたたんだタオルの上へ下ろし、アイリスがクラボのみとオボンのみを煎じている。デントがポケモンセンターの場所を調べるものの、この近くにはなさそうだ。
「……ごめん、なさい。……止める、でき、ない……だった」
「そんな謝るなって。サニワが気付いてくれなかったら、きっとズルッグはずっとあそこで倒れていたかもしれないんだ。……なぁデント、近くにポケモンセンターはないのか?」
「調べたけれど、ポケモンセンターはなかったな……」
「……」
サニワはズルッグに手を翳すと、神力を徐々に流し込む。手から淡い光が溢れ出し、ズルッグの傷をあっという間に癒していった。
ズルッグは痛みや痺れが取れたことで、今までの疲れもあったのか、すやすやと深い眠りについたようだ。
一部始終を見ていたサトシたちはポカンと呆気に取られていたが、ハッと気を取り直すと矢継ぎ早に問い質す。言葉で上手く説明できず、慌ててこんのすけへ視線を移すと、半分寝ぼけ眼で説明を始めた。
「サニワ、今のは一体何なの!? 超能力!?」
「まぁ……そんなところです。この程度の傷であれば、翌朝には完治していることでしょう」
「……でも、ジョーイさん、診せる、して。……たくさん、使う……疲れる……。ねむい……」
「それにしても、凄いよ……! 超能力が使えるだなんて!」
こんのすけが軽く説明すると、サトシたちは随分あっさりと納得する。しかもデントに至ってはキラキラと瞳を輝かせ、握手を求めてくる始末。
この間の怪奇現象騒ぎで、デントはひたすらオカルトな見解を否定していたから、内心サニワは驚きを隠せない。どちらかというと彼は現実主義者ではなくただのビビリである、とサニワは心の中で結論づけていた。
翌朝、ぐっすりと眠って体力が回復したズルッグは、身体の心配をするサトシの問いかけにこくりと頷いた。しかし全員がホッと安堵の溜め息を吐いたのも束の間、ズルッグはいきなり飛び起きて駆け出していく。
まさか再戦したいのか、と嫌な予感が頭を過ったサニワは、トゲキッスをボールから出し、彼に付いていくように伝える。
ズルッグの向かった先は、やはり昨夜のあの大木だった。そこに頭突きを繰り返したのか、デンチュラの群れに取り囲まれてしまっていて。
トゲキッスがズルッグに覆い被さり、デンチュラの電撃から守っていた。トゲキッスは飛行タイプで電気技に弱い。その上、ズルッグが不意をついて彼女の腕から飛び出すとも限らない状態だ。サトシは急いで攻撃指示を飛ばした。
「皆、ズルッグを守るんだ! ツタージャ、リーフストーム!」
「火炎放射! シャドーボール!」
ツタージャが大量の木の葉を舞い散らす。それは上手くデンチュラの視界を遮った。その隙にキュウコンが灼熱の炎を、サーナイトが複数の邪気を纏った球体を作り出し、デンチュラの放つ技を相殺。ズルッグへ直撃は避けられた。
昨晩のようにデンチュラたちは攻撃の手を止めるも、その瞳には警戒心が宿っていた。そんな彼らを安心させるように、攻撃する意思がないと表明するように。サニワはズルッグへ静かに歩み寄る。
そしてズルッグを抱き上げると、深々とデンチュラたちへ頭を下げた。
「……邪魔、した。ごめん、なさい」
サニワの誠意ある対応にデンチュラたちは納得したのか、警戒心を解いた彼らは茂みの中へ消えていった。ひとまずの危機は去り、サニワはサーナイトたちをボールへ戻しつつ、内心安堵の吐息を漏らす。しかしその顔は無表情の仮面を被ったまま。
抱き上げたズルッグをトレーナーであるサトシへ渡すと、あの丘の上まですたすたと歩き始めた。まるで、何事もなかったかのように。
ズルッグはさすがに反省しているようで、申し訳なさそうにしょんぼりとしていた。サトシはそんな彼を叱っている。
「あの木の下に行っちゃダメだろ!」
<ごめん……>
「……ズルッグ、デンチュラに、復讐……? うーん……やりかえす、したい、だった?」
しゃがんでズルッグに目線を合わせると、彼は小さく頷いた。それを見たサニワの目元がやわらかなそれとなり、頭を優しげな手つきで撫でた。
「でも、もう、だめ。……危ない。それに……デンチュラ、いきなり……お家、入る……されたら、とっても……怖い。……デンチュラたちの、気持ち……考えて、ね」
「……さあズルッグ、皆と一緒に朝飯食おうぜ!」
明るいサトシの声にズルッグはこくりと頷き、昨日とは違ってご飯を一緒に食べ始める。
しかし、キバゴがズルッグに仲良くしようと話しかけるも、無視を決め込み、遂には喧嘩が勃発してしまった。
「……キバゴと、ズルッグ。……バトル、ぴったり。どう?」
「よしキバゴ、アイリス! ズルッグとバトルしようぜ!」
「もちろん受けて立つわ! ね、キバゴ!」
二匹は気合たっぷりに頷いたので、朝食が終わると早速彼らのバトルが始まった。しばらくの間均衡状態にあったが、キバゴの龍の怒りが失敗して、大爆発を引き起こしたところでお開きになる。
どうやらキバゴはいつも失敗するようだが、練習当初よりもだんだんバトルらしくなってきたらしい。
未だにズルッグがボールに入れてないことを思い出したサトシは、空のモンスターボールを空中へ放り投げる。ズルッグがぴょんと跳び上がり、ボールに向かって軽く頭突きした。
うにうにと三回動いた後、ズルッグが正式にサトシの仲間になったのだった。
「……ごめん、なさい。……止める、でき、ない……だった」
「そんな謝るなって。サニワが気付いてくれなかったら、きっとズルッグはずっとあそこで倒れていたかもしれないんだ。……なぁデント、近くにポケモンセンターはないのか?」
「調べたけれど、ポケモンセンターはなかったな……」
「……」
サニワはズルッグに手を翳すと、神力を徐々に流し込む。手から淡い光が溢れ出し、ズルッグの傷をあっという間に癒していった。
ズルッグは痛みや痺れが取れたことで、今までの疲れもあったのか、すやすやと深い眠りについたようだ。
一部始終を見ていたサトシたちはポカンと呆気に取られていたが、ハッと気を取り直すと矢継ぎ早に問い質す。言葉で上手く説明できず、慌ててこんのすけへ視線を移すと、半分寝ぼけ眼で説明を始めた。
「サニワ、今のは一体何なの!? 超能力!?」
「まぁ……そんなところです。この程度の傷であれば、翌朝には完治していることでしょう」
「……でも、ジョーイさん、診せる、して。……たくさん、使う……疲れる……。ねむい……」
「それにしても、凄いよ……! 超能力が使えるだなんて!」
こんのすけが軽く説明すると、サトシたちは随分あっさりと納得する。しかもデントに至ってはキラキラと瞳を輝かせ、握手を求めてくる始末。
この間の怪奇現象騒ぎで、デントはひたすらオカルトな見解を否定していたから、内心サニワは驚きを隠せない。どちらかというと彼は現実主義者ではなくただのビビリである、とサニワは心の中で結論づけていた。
翌朝、ぐっすりと眠って体力が回復したズルッグは、身体の心配をするサトシの問いかけにこくりと頷いた。しかし全員がホッと安堵の溜め息を吐いたのも束の間、ズルッグはいきなり飛び起きて駆け出していく。
まさか再戦したいのか、と嫌な予感が頭を過ったサニワは、トゲキッスをボールから出し、彼に付いていくように伝える。
ズルッグの向かった先は、やはり昨夜のあの大木だった。そこに頭突きを繰り返したのか、デンチュラの群れに取り囲まれてしまっていて。
トゲキッスがズルッグに覆い被さり、デンチュラの電撃から守っていた。トゲキッスは飛行タイプで電気技に弱い。その上、ズルッグが不意をついて彼女の腕から飛び出すとも限らない状態だ。サトシは急いで攻撃指示を飛ばした。
「皆、ズルッグを守るんだ! ツタージャ、リーフストーム!」
「火炎放射! シャドーボール!」
ツタージャが大量の木の葉を舞い散らす。それは上手くデンチュラの視界を遮った。その隙にキュウコンが灼熱の炎を、サーナイトが複数の邪気を纏った球体を作り出し、デンチュラの放つ技を相殺。ズルッグへ直撃は避けられた。
昨晩のようにデンチュラたちは攻撃の手を止めるも、その瞳には警戒心が宿っていた。そんな彼らを安心させるように、攻撃する意思がないと表明するように。サニワはズルッグへ静かに歩み寄る。
そしてズルッグを抱き上げると、深々とデンチュラたちへ頭を下げた。
「……邪魔、した。ごめん、なさい」
サニワの誠意ある対応にデンチュラたちは納得したのか、警戒心を解いた彼らは茂みの中へ消えていった。ひとまずの危機は去り、サニワはサーナイトたちをボールへ戻しつつ、内心安堵の吐息を漏らす。しかしその顔は無表情の仮面を被ったまま。
抱き上げたズルッグをトレーナーであるサトシへ渡すと、あの丘の上まですたすたと歩き始めた。まるで、何事もなかったかのように。
ズルッグはさすがに反省しているようで、申し訳なさそうにしょんぼりとしていた。サトシはそんな彼を叱っている。
「あの木の下に行っちゃダメだろ!」
<ごめん……>
「……ズルッグ、デンチュラに、復讐……? うーん……やりかえす、したい、だった?」
しゃがんでズルッグに目線を合わせると、彼は小さく頷いた。それを見たサニワの目元がやわらかなそれとなり、頭を優しげな手つきで撫でた。
「でも、もう、だめ。……危ない。それに……デンチュラ、いきなり……お家、入る……されたら、とっても……怖い。……デンチュラたちの、気持ち……考えて、ね」
「……さあズルッグ、皆と一緒に朝飯食おうぜ!」
明るいサトシの声にズルッグはこくりと頷き、昨日とは違ってご飯を一緒に食べ始める。
しかし、キバゴがズルッグに仲良くしようと話しかけるも、無視を決め込み、遂には喧嘩が勃発してしまった。
「……キバゴと、ズルッグ。……バトル、ぴったり。どう?」
「よしキバゴ、アイリス! ズルッグとバトルしようぜ!」
「もちろん受けて立つわ! ね、キバゴ!」
二匹は気合たっぷりに頷いたので、朝食が終わると早速彼らのバトルが始まった。しばらくの間均衡状態にあったが、キバゴの龍の怒りが失敗して、大爆発を引き起こしたところでお開きになる。
どうやらキバゴはいつも失敗するようだが、練習当初よりもだんだんバトルらしくなってきたらしい。
未だにズルッグがボールに入れてないことを思い出したサトシは、空のモンスターボールを空中へ放り投げる。ズルッグがぴょんと跳び上がり、ボールに向かって軽く頭突きした。
うにうにと三回動いた後、ズルッグが正式にサトシの仲間になったのだった。