第9話

 サトシたちの厚意に甘え、旅路を共にすることになったサニワ。
 彼らはランチを摂り終え、気持ちいい天候なので丘の上でしばらく休憩を取ることにした。

 ふわり、と春の香りを運ぶ暖かな風を堪能する中、アイリスのキバゴが慌てた様子でタマゴを指差す。それは眩い光を放ち、今にも孵りそうだ。
 急ぎつつもサニワは手慣れた動作で孵化装置からタマゴを取り出し、折り畳んだタオルの上へ移動させた。
 キバゴは初めてタマゴが孵る場面を初めて見るらしく、好奇に満ちた様子でしげしげと眺めている。


「そっか、キバゴはポケモンが孵るのを見るの初めてだもんね。キバゴ、お兄ちゃんになるんだよ!」


 「お兄ちゃん」という言葉に嬉しくなったのか、キバゴはぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しさを表現する。しかしその際に手がタマゴを弾いてしまい、坂をタマゴがかなりの勢いで転がり落ちてしまった。
 サニワは咄嗟にサーナイトをボールから出し、彼女へ坂を転がるタマゴを保護するように指示を飛ばした。
 タマゴは一気に加速していき、石に弾かれ宙を舞う。地面に衝突する直前、サーナイトがサイコキネシスでタマゴを受け止めた。


「サトシ、ごめんね。サニワもサーナイトも、ありがとう」
「気にすんなって。タマゴは無事だったんだから」
「……タマゴ、もうすぐ」


 先ほどよりも発光が強くなり、ピキ、パキ、と割れる音が聞こえてくる。そして遂に、目も当てられないほど光り輝き、タマゴからポケモンが孵った。
 そこにいたのは、悪・格闘の複合タイプで、伸縮性のある自身の皮が特徴的な———あのポケモン。


「これはズルッグだ!」
「ズルッグ?」


 サトシは初めてズルッグを見るのか、ポケモン図鑑をズルッグへ翳しつつ自己紹介を始めた。


「俺、サトシ! よろしくな、ズルッグ!」
<おう>
「私は管狐のこんのすけと申します。こちらは主人であるサニワさまです」
「……よ、よろしく、ね」
<あ゛ぁ゛ん!?>
<……ど初っ端からマスターに喧嘩売るとは、大した度胸ですね。ムーンフォースをぶつけて差し上げましょうか?>
「……さっき、生まれる、した。……優しく、ね」


 ズルッグは自らの主人となる人物に対しては普通に返事を返した。対して、サニワにはギロリと睨みつける。ところが、生まれたばかりで大して怖くない。
 図鑑の説明にもあるように、視線のあったものに攻撃を仕掛けるので、この子はただ本能のままに行動しているだけなのだ。
 しかしその行為に怒ったサーナイトは、効果抜群かつタイプ一致技のムーンフォースをズルッグに繰り出そうとするが、何とかキュウコンとトゲキッスが宥めて阻止していた。

 今度はサトシのピカチュウに頭突きをかますも、あっさりと避けられて地面に頭をぶつける。
 どうやら彼はピカチュウとバトルがしたいようなので、ズルッグとピカチュウでバトルすることになった。ピカチュウはそこまで乗り気ではないようだったが、渋々了承していた。
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