第2話

「あら? この子……」


 アララギ博士(娘)は興味津々に、じーっとサニワの肩に乗っているこんのすけを見詰める。
 もしかしたら、昔のシンオウ地方に存在したといわれるゾロアにでも見えているのかもしれない。だとすれば、こんなに凝視するのもおかしくはないだろう。


「……ヒスイゾロア、見る、初めて?」
「……いえ、見たことがあるわ。写真でだけど」


 彼女のような明朗快活な性格であれば、もっときゃっきゃうふふとした感じで触ろうとするだろう。だが、彼女の反応は上の空というか、ただサニワの言葉を肯定するだけだった。それを怪訝に感じたサニワが尋ねる。


「……どうか、した?」
「いえ、何でもないわ! ただ、異世界から来たっていうのが信じられないだけで……」
「なっ! アララギさま、それをどこから……!」


 何爆弾発言投下してるんですかアララギ博士ェ! ホップもホップだ! 個人情報を、しかもトップシークレットを何あっさり暴露してるんだ、あの馬鹿……! 
 内心毒を吐きまくっている妖狐。想定外の事態に、ずっとポケモンのフリをしていた妖狐も、うっかり言葉を零す。

 しかし幸いにも、バレた相手は博士だ。ロケット団などのポケモンマフィアや、悪の組織に存在が露見されたわけではない。
 こんのすけはアララギ博士(娘)に自分の個人情報についてどこまで知っているのか問い質すと、サニワの過去と、こんのすけはポケモンではなく、言葉を話せることは何となく知っていた。

 言葉を解すると知られたこんのすけは、もうこの際どうにでもなれ、と口酸っぱくアララギ博士(娘)へ注意を呼びかける。
 本人は自信満々に大丈夫だ、問題ないと胸を張るが、サニワもこんのすけも、アララギ博士(父)も内心信用していない。


「……アララギ博士。これは主さまと私の重大な個人情報なので、絶対に! 口外しないでくださいね! 下手したら悪の組織に身柄を追われる可能性もありますから! くれぐれもお願いしますよ‼︎」
「もちろんよ! このアララギ博士に任せなさい!」
「お前、さっきボロ出したばっかりだろう」
「ゔっ……! で、でもそれはパパだからよ!」


 ぎゃいのぎゃいのとアララギ親子の喧嘩が勃発した。
 そろそろ出発したいサニワ。主人の気持ちを察知したこんのすけが、半ば無理やり口喧嘩の中に入ると、ん? と親子二人同時にこちらへ振り向く。
 タイミングもその仕草も、やっぱり親子だな、と彼は感心していた。


「「何(だ)?」」
「……アララギ博士、我々はそろそろ出発いたします!」
「そうか。確かサニワちゃんはジム戦に挑戦するんだろう? 君の実力であれば、ジム戦に挑戦する必要はないと思うが……。この道を真っ直ぐ進めば、カラクサタウンに到着する」
「そこからカラクサタウンを進んでいけば、ジムのあるサンヨウシティに辿り着くわ。ジム戦頑張ってね!」
「「ベストウイッシュ! 良い旅を!」」


 アララギ親子と別れたサニワは、まずはカラクサタウンに向かうべく、彼らの言う通りの道を突き進んだ。
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