第26話
ミジュマルもニャースもチョロネコに夢中になっているが、アイリスも比較的好感触だ。
何も言及しないサニワは何を考えているのかわからない無表情だ。見定めようとしているのか、その目は無機質で何も感じられない。
「ミジュマルもチョロネコの味方か……」
「二人ともチョロネコに夢中なのよ。だって可愛いんだもんあの子!」
「騙されるな!」
「キュートな尻尾」
「まるで悪魔だ……」
「大きくて切れ長な目!」
「いかにも悪そうだ……」
「ニャースやミジュマルでなくても、好きになる気持ちは分かる気がする!」
「全然分かりません!」
「サニワだって、チョロネコのこと可愛いって思うでしょ?」
「サニワ、その可愛さに騙されちゃ駄目だ‼ 昔の僕みたいに、酷い目に遭うよ‼」
「……」
二人から同意を求められたサニワは無言を貫き通す。
辛うじて嫌悪感や正義感は持っているが、そもそも殆どの感情を失った彼女に、愛しいという感受性は持ち合わせているのだろうか。
アイリスはチョロネコをゲットしようとモンスターボールを手に取る。捕まえて悪事を働かせないように躾けるつもりらしい。
早速モンスターボールをチョロネコへ投げつけるも、咄嗟にチョロネコを庇ったニャースがボールへ吸い込まれていく。しかし必死に抵抗したのか三回ボールが揺れ動いただけで、息も絶え絶えに転 び出た。
「危うくゲットされるところだったのニャ……。危なかったのニャ……」
「ちょっとニャース! 邪魔しないでよ!」
「チョロネコお嬢さんをゲットできるのはモンスターボールでも何でもないのニャ!」
「はぁ⁉」
「それはニャーのハートなのニャ!」
「あっそ……」
ニャースはどこから取り出したのか、薔薇の花束を携え告白するもミジュマルが花束を奪い取り、同様にチョロネコへ愛を伝える。
取っ組み合いの喧嘩が始まり、空中へ投げ出された花束を受け取ったチョロネコは二匹の愛をウィンクで返事し、二匹まとめてノックアウト。そして礼を告げると、すたすたと器用に二足歩行でその場を立ち去った。
「ニャースとミジュマルになんて言えばいいんだ?」
「事実を伝えればいいんだよ、事実を」
「それはそれとして! ミジュマルはサニワに一目惚れしたのに、別の子に目移りするなんて……! 信じられないわ! 本当に子どもね‼」
「浮気に子どもか否かは関係ないのでは?」
「ミジュマルは恋多きポケモンだとはいえど、チョロネコに惚れるのはどうかと思うよ」
「……もうちょっと、手加減、してあげて……」
アイリスとデントがミジュマルを非難し、サニワが二人を宥めている中、慌てた様子でチョロネコがサトシたちへ駆け寄ってきた。今度はチョロネコの友人が深い洞窟に閉じ込められているらしい。
サトシたちはチョロネコの言葉に耳を傾け、早速救出へ向かおうとする。ところがデントだけはチョロネコの言葉を信用できなかった。
「どうしてもチョロネコの言うことを信じる気になれないんだ。悪いけど僕はここで待ってる」
「……じゃあ、私も」
「サニワまで!」
「……大丈夫だと、願っても、裏切られる……。それは、とても……辛いこと。そう……とても、辛い……」
デントとともに待機を申し出るサニワ。彼女の口から漏れ出た理由は、どことなく重苦しい。
サニワがこの世界から逃げられない理由は、ダンデとキバナが世界を繋ぐ境界 を破壊したのが原因だ。わざわざサニワを嘘の理由で呼び出して。
その様子を脳内で反芻しているのか。サニワの顔はどこか険しいそれだった。
「チョロネコお嬢さん急ぎましょう! お友達が待っていますニャ‼」
「みっじゅ!」
「案内してくれ!」
「……こんちゃんも。……何かあったら、すぐに呼んで」
チョロネコの案内にサトシとアイリスが付いて行く。こんのすけが何か不祥事が起きたときのために、彼らの後をこっそり追う。デントの表情は今だに晴れないままで、不安げにサトシたちを見詰めていた。
デントの不安を和らげるようにと、サニワの小さな手が彼を背をさする。神通力でも使っているのか、まるで日だまりの中で日光浴しているかのような、どこか暖かな感覚だった。
それでもデントの心が晴れることはない。何とか気持ちを紛らわせようと、いつもと変わらない穏やかな口調で語りかけた。
「それにしても、あれだけミジュマルはサニワに猛アタックしていたのに、あんなにもあっさり鞍替えするとはね……。それにチョロネコだなんて、趣味が悪いとしか思えないよ」
「……そう、なの?」
「そうだよ。普通は心を決めたら、一途にその人だけを愛するものさ」
「……この世界、よく、わからない。……私は……相手、許すなら……。あと……皆、お腹いっぱい、なら……別に……何番目でも、構わない」
「……サニワ、君はもう少し自分を大切にするべきだよ。あと、これから倫理のお勉強しようね」
「……? はあい」
純粋なサトシたちにとって、サニワの答えはとても酷なものだろう。ここにサトシたちが居なくて正解だったと、内心デントは安堵の吐息を漏らす。
食育に情操教育と、彼女に施す教育の道のりは、かなり険しそうだ。これは相当覚悟しなければならないと、デントは心中で兜の緒を締める。
暢気によいこのお返事をするサニワのプラチナの頭を、デントは優しく撫で回した。
何も言及しないサニワは何を考えているのかわからない無表情だ。見定めようとしているのか、その目は無機質で何も感じられない。
「ミジュマルもチョロネコの味方か……」
「二人ともチョロネコに夢中なのよ。だって可愛いんだもんあの子!」
「騙されるな!」
「キュートな尻尾」
「まるで悪魔だ……」
「大きくて切れ長な目!」
「いかにも悪そうだ……」
「ニャースやミジュマルでなくても、好きになる気持ちは分かる気がする!」
「全然分かりません!」
「サニワだって、チョロネコのこと可愛いって思うでしょ?」
「サニワ、その可愛さに騙されちゃ駄目だ‼ 昔の僕みたいに、酷い目に遭うよ‼」
「……」
二人から同意を求められたサニワは無言を貫き通す。
辛うじて嫌悪感や正義感は持っているが、そもそも殆どの感情を失った彼女に、愛しいという感受性は持ち合わせているのだろうか。
アイリスはチョロネコをゲットしようとモンスターボールを手に取る。捕まえて悪事を働かせないように躾けるつもりらしい。
早速モンスターボールをチョロネコへ投げつけるも、咄嗟にチョロネコを庇ったニャースがボールへ吸い込まれていく。しかし必死に抵抗したのか三回ボールが揺れ動いただけで、息も絶え絶えに
「危うくゲットされるところだったのニャ……。危なかったのニャ……」
「ちょっとニャース! 邪魔しないでよ!」
「チョロネコお嬢さんをゲットできるのはモンスターボールでも何でもないのニャ!」
「はぁ⁉」
「それはニャーのハートなのニャ!」
「あっそ……」
ニャースはどこから取り出したのか、薔薇の花束を携え告白するもミジュマルが花束を奪い取り、同様にチョロネコへ愛を伝える。
取っ組み合いの喧嘩が始まり、空中へ投げ出された花束を受け取ったチョロネコは二匹の愛をウィンクで返事し、二匹まとめてノックアウト。そして礼を告げると、すたすたと器用に二足歩行でその場を立ち去った。
「ニャースとミジュマルになんて言えばいいんだ?」
「事実を伝えればいいんだよ、事実を」
「それはそれとして! ミジュマルはサニワに一目惚れしたのに、別の子に目移りするなんて……! 信じられないわ! 本当に子どもね‼」
「浮気に子どもか否かは関係ないのでは?」
「ミジュマルは恋多きポケモンだとはいえど、チョロネコに惚れるのはどうかと思うよ」
「……もうちょっと、手加減、してあげて……」
アイリスとデントがミジュマルを非難し、サニワが二人を宥めている中、慌てた様子でチョロネコがサトシたちへ駆け寄ってきた。今度はチョロネコの友人が深い洞窟に閉じ込められているらしい。
サトシたちはチョロネコの言葉に耳を傾け、早速救出へ向かおうとする。ところがデントだけはチョロネコの言葉を信用できなかった。
「どうしてもチョロネコの言うことを信じる気になれないんだ。悪いけど僕はここで待ってる」
「……じゃあ、私も」
「サニワまで!」
「……大丈夫だと、願っても、裏切られる……。それは、とても……辛いこと。そう……とても、辛い……」
デントとともに待機を申し出るサニワ。彼女の口から漏れ出た理由は、どことなく重苦しい。
サニワがこの世界から逃げられない理由は、ダンデとキバナが世界を繋ぐ
その様子を脳内で反芻しているのか。サニワの顔はどこか険しいそれだった。
「チョロネコお嬢さん急ぎましょう! お友達が待っていますニャ‼」
「みっじゅ!」
「案内してくれ!」
「……こんちゃんも。……何かあったら、すぐに呼んで」
チョロネコの案内にサトシとアイリスが付いて行く。こんのすけが何か不祥事が起きたときのために、彼らの後をこっそり追う。デントの表情は今だに晴れないままで、不安げにサトシたちを見詰めていた。
デントの不安を和らげるようにと、サニワの小さな手が彼を背をさする。神通力でも使っているのか、まるで日だまりの中で日光浴しているかのような、どこか暖かな感覚だった。
それでもデントの心が晴れることはない。何とか気持ちを紛らわせようと、いつもと変わらない穏やかな口調で語りかけた。
「それにしても、あれだけミジュマルはサニワに猛アタックしていたのに、あんなにもあっさり鞍替えするとはね……。それにチョロネコだなんて、趣味が悪いとしか思えないよ」
「……そう、なの?」
「そうだよ。普通は心を決めたら、一途にその人だけを愛するものさ」
「……この世界、よく、わからない。……私は……相手、許すなら……。あと……皆、お腹いっぱい、なら……別に……何番目でも、構わない」
「……サニワ、君はもう少し自分を大切にするべきだよ。あと、これから倫理のお勉強しようね」
「……? はあい」
純粋なサトシたちにとって、サニワの答えはとても酷なものだろう。ここにサトシたちが居なくて正解だったと、内心デントは安堵の吐息を漏らす。
食育に情操教育と、彼女に施す教育の道のりは、かなり険しそうだ。これは相当覚悟しなければならないと、デントは心中で兜の緒を締める。
暢気によいこのお返事をするサニワのプラチナの頭を、デントは優しく撫で回した。