第46話
結局、セレナたちのパフォーマンス大会の直後にサニワの世界の歌を披露する流れとなった。
とはいえ、旋律も加わると、この世界の言語に上手く翻訳できない。それは退院パーティの日に判明していた。
しかし話を聞いていたのか、メガネをきらりと輝かせたシトロンが取り出したのは、一本のヘッドセットマイクだ。その様子は某猫型ロボットを彷彿とさせる。
ヘッドホン型のサニワの翻訳機は、今装着している翻訳機の反省点を踏まえて、新たに旋律が変化しないように改良されたものだ。
「科学が未来を切り開くとき! シトロニックギア・オン‼ ふっふっふ……そういうこともあろうかと、『サニワさんの言語翻訳機』の改良版を準備しておいたんです! 今回はメロディをそのままに、こちらの言葉へ翻訳できる優れものですよ!」
「科学の力ってすげー!」
「これで問題は解決したみたいね!」
「やめて……。解決せんでいい……せんでいい……」
セレナたちのパフォーマンスは佳境を迎え、フィニッシュにそれぞれのポケモンたちの技が炸裂する。
会場が多いに盛り上がった後、プラターヌ博士によって締めくくられ、そしてサニワが壇上へ登る段取りを語り始めた。
諦めたサニワはヘッドセットマイクを装着すると、静かに壇上へ上がる。真っ白なワンピースと黄金色の装飾を身に纏ったサニワは、どこか創造神 を彷彿とさせ、とても神々しい。まるでちいさな女神が舞い降りたかのようだったと、後にアランは語る。
サニワを体現するかの如く、賛美歌のような気品のある厳かな音楽なのかと思いきや。スピーカーから聞こえたのは、軽快なドラムとエレキギターの奏でる疾走感が特徴的なサウンド。しかし難しい早口のパートや、その後のシンセサイザーの伴奏は、どこか厳かさを感じる。
まさかの選曲に観客たちはぽかんと呆けるものの、魂を揺さぶられるようなサニワの歌声に、そして難しい旋律を完璧に歌い上げるサニワに、彼女を彩るように技を放つ彼女のポケモンたちに。観客たちは一気に引き込まれていった。
セイレーンや人魚は、その歌声で人を引き込むという。麻薬のように引きつけて離さない、そんな魔力ともいえる魅力。それがサニワの歌声にも宿っていた。
歌が終わり、会場を後にしようとするサニワ。しかし彼女の歌声の魅力にどっぷりと取り憑かれた観客たちは、割れんばかりの声援と拍手を送り、アンコールを熱望する。
会場を取り仕切るプラターヌ博士を見れば、親指を立てている。ゴーサインと受け取ったサニワは、再びスピーカーから流れるBGMへ身を任せた。
今度はリズムを刻み込む軽快なシンセサイザーと指パッチンの音、繊細なピアノのメロディ。そして難易度の高い旋律も完璧に、高らかに歌い上げるサニワの歌声。全てがマッチした今、精緻な芸術が完成する。
最後はピアノだけの伴奏になり、サニワの吐息で締めくくられた。
サニワが静かに歌い終わり、静まり返っていた会場の熱気は、再び不死鳥のように盛り返した。アンコールも先ほどより圧倒的に強い。
助け船を求めるようにプラターヌ博士へ視線を移すも、観客と一緒にアンコールを熱望していた。戦場にひとりで放り出されたような感覚にサニワは陥るも、助け船なんてない。
三曲目では、ギターとピアノの織りなす繊細な伴奏と、他の二曲と比べてゆったりとしたリズム、歌詞が特徴的な曲だ。サビの部分からはドラムの刻むリズムが入り、繊細ながらも力強さも感じられる。
まるでひとりで泣くように、独白を語るように。自らの感情を乗せて歌い上げるサニワに、観客は思わず涙を流していた。
アンコールの声援が巻き起こる前に、サニワはヘッドセットマイクを外す。そして空高く放り投げた。観客たちはサニワのまさかの行動に舌を巻くが、宙に浮いたヘッドセットマイクが更にサイコキネシスで上へ上へと上昇していく。そして、見えなくなった瞬間にキュウコンのソーラービーム、トゲキッスのエアスラッシュが直撃。衝撃に耐えきれるはずもなく、ヘッドセットマイクは大爆発を起した。
爆発は技との色合いも重なって、まるで最初から計画していたかのように、舞台演出の如くきらきらと極彩色の淡い光が降ってくる。
サニワは観客へ向けて深々と頭を下げると、大歓声を浴びながら壇上から逃げるように降りていった。
そんな彼女へ待ち受けていたのは、マノンによる熱烈なハグだ。マノンを始め、アラン、シトロン、セレナ、ユリーカ、果てにはプラターヌ博士まで目から大量の涙を垂れ流している。
「お前は……お前はちゃんと! 生きてる……‼」
「ノンノン! サニワさんは死んでなんかないよ……!」
『え???』
「これからサニワさんは、確かに本丸に帰還されます。ですけど、身を挺してまで僕らを護ってくれたじゃないですか‼」
「貴女みたいな英雄のこと、絶対に忘れるわけないじゃない……‼」
「それにキミは、感情や色んなものを失ってしまったかもしれないけれど……! ここで過ごした日々を無駄に思わないでくれ……!」
「勝手に消えるまで待つなんて、寂しいこと言わないでよぉ……!」
『あの、皆さま楽曲に感情移入しすぎでは……?』
表情を困惑に染めつつも、首輪型の翻訳機を身に付けるサニワ。しかし彼女のそれは、どことなく満更でもない顔でもあった。
とはいえ、旋律も加わると、この世界の言語に上手く翻訳できない。それは退院パーティの日に判明していた。
しかし話を聞いていたのか、メガネをきらりと輝かせたシトロンが取り出したのは、一本のヘッドセットマイクだ。その様子は某猫型ロボットを彷彿とさせる。
ヘッドホン型のサニワの翻訳機は、今装着している翻訳機の反省点を踏まえて、新たに旋律が変化しないように改良されたものだ。
「科学が未来を切り開くとき! シトロニックギア・オン‼ ふっふっふ……そういうこともあろうかと、『サニワさんの言語翻訳機』の改良版を準備しておいたんです! 今回はメロディをそのままに、こちらの言葉へ翻訳できる優れものですよ!」
「科学の力ってすげー!」
「これで問題は解決したみたいね!」
「やめて……。解決せんでいい……せんでいい……」
セレナたちのパフォーマンスは佳境を迎え、フィニッシュにそれぞれのポケモンたちの技が炸裂する。
会場が多いに盛り上がった後、プラターヌ博士によって締めくくられ、そしてサニワが壇上へ登る段取りを語り始めた。
諦めたサニワはヘッドセットマイクを装着すると、静かに壇上へ上がる。真っ白なワンピースと黄金色の装飾を身に纏ったサニワは、どこか
サニワを体現するかの如く、賛美歌のような気品のある厳かな音楽なのかと思いきや。スピーカーから聞こえたのは、軽快なドラムとエレキギターの奏でる疾走感が特徴的なサウンド。しかし難しい早口のパートや、その後のシンセサイザーの伴奏は、どこか厳かさを感じる。
まさかの選曲に観客たちはぽかんと呆けるものの、魂を揺さぶられるようなサニワの歌声に、そして難しい旋律を完璧に歌い上げるサニワに、彼女を彩るように技を放つ彼女のポケモンたちに。観客たちは一気に引き込まれていった。
セイレーンや人魚は、その歌声で人を引き込むという。麻薬のように引きつけて離さない、そんな魔力ともいえる魅力。それがサニワの歌声にも宿っていた。
歌が終わり、会場を後にしようとするサニワ。しかし彼女の歌声の魅力にどっぷりと取り憑かれた観客たちは、割れんばかりの声援と拍手を送り、アンコールを熱望する。
会場を取り仕切るプラターヌ博士を見れば、親指を立てている。ゴーサインと受け取ったサニワは、再びスピーカーから流れるBGMへ身を任せた。
今度はリズムを刻み込む軽快なシンセサイザーと指パッチンの音、繊細なピアノのメロディ。そして難易度の高い旋律も完璧に、高らかに歌い上げるサニワの歌声。全てがマッチした今、精緻な芸術が完成する。
最後はピアノだけの伴奏になり、サニワの吐息で締めくくられた。
サニワが静かに歌い終わり、静まり返っていた会場の熱気は、再び不死鳥のように盛り返した。アンコールも先ほどより圧倒的に強い。
助け船を求めるようにプラターヌ博士へ視線を移すも、観客と一緒にアンコールを熱望していた。戦場にひとりで放り出されたような感覚にサニワは陥るも、助け船なんてない。
三曲目では、ギターとピアノの織りなす繊細な伴奏と、他の二曲と比べてゆったりとしたリズム、歌詞が特徴的な曲だ。サビの部分からはドラムの刻むリズムが入り、繊細ながらも力強さも感じられる。
まるでひとりで泣くように、独白を語るように。自らの感情を乗せて歌い上げるサニワに、観客は思わず涙を流していた。
アンコールの声援が巻き起こる前に、サニワはヘッドセットマイクを外す。そして空高く放り投げた。観客たちはサニワのまさかの行動に舌を巻くが、宙に浮いたヘッドセットマイクが更にサイコキネシスで上へ上へと上昇していく。そして、見えなくなった瞬間にキュウコンのソーラービーム、トゲキッスのエアスラッシュが直撃。衝撃に耐えきれるはずもなく、ヘッドセットマイクは大爆発を起した。
爆発は技との色合いも重なって、まるで最初から計画していたかのように、舞台演出の如くきらきらと極彩色の淡い光が降ってくる。
サニワは観客へ向けて深々と頭を下げると、大歓声を浴びながら壇上から逃げるように降りていった。
そんな彼女へ待ち受けていたのは、マノンによる熱烈なハグだ。マノンを始め、アラン、シトロン、セレナ、ユリーカ、果てにはプラターヌ博士まで目から大量の涙を垂れ流している。
「お前は……お前はちゃんと! 生きてる……‼」
「ノンノン! サニワさんは死んでなんかないよ……!」
『え???』
「これからサニワさんは、確かに本丸に帰還されます。ですけど、身を挺してまで僕らを護ってくれたじゃないですか‼」
「貴女みたいな英雄のこと、絶対に忘れるわけないじゃない……‼」
「それにキミは、感情や色んなものを失ってしまったかもしれないけれど……! ここで過ごした日々を無駄に思わないでくれ……!」
「勝手に消えるまで待つなんて、寂しいこと言わないでよぉ……!」
『あの、皆さま楽曲に感情移入しすぎでは……?』
表情を困惑に染めつつも、首輪型の翻訳機を身に付けるサニワ。しかし彼女のそれは、どことなく満更でもない顔でもあった。