第31話
この先は海。道幅はトラック一台通るのに精一杯だ。ア☆ギルダーは近くの積み上げられた荷物をバイクで駆け上がり、その勢いで空中へ舞い上がった。
真っ赤なバイクは流星の如くバニプッチ団のトラックを飛び越え、彼らを追い詰める。サトシたちが追い付いた頃には、怪傑ア☆ギルダーとバニプッチ団のボスが対峙していた。
「チャールズさん! じゃなくて……怪傑ア☆ギルダー‼」
「チャールズ? そうか……あの若造か。だが変身できるのは貴様だけではない‼ ご覧に入れよう、私の真の姿を‼」
ボスは羽織っていたマントを翻すと、フリージオを模した仮面を身に付けていた。名をフリージ男 と名乗り、モンスターボールを放り投げた。
「行けぃ! 我がポケモンよ‼」
「フリージ男だけに、フリージオを出すつもりだな……!」
「また氷タイプ……嫌だぁ!」
「ぐえっ」
「アイリス、サニワが気絶しそうだよ……」
寒さが大の苦手なアイリスが、氷タイプに怯えてサニワの後ろへ隠れて抱きついた。しかし野生児アイリスの力はあまりにも強く、サニワの顔から血の気が引いていく。
ところが一同の予想に反して出てきたのは、バニリッチだった。これには基本的に冷静沈着なダイゴも、目を点にして驚いていた。さすがにサニワの顔は相変わらずの無表情だったが。
バニプッチ団の下っ端たちは、再びバニプッチを繰り出した。トラックの移動中に傷薬で回復したようだ。
しかし再びメタグロスのコメットパンチが炸裂。吹き飛ばされたバニプッチたちは下っ端の顔面に衝突し、全員目を回して撃沈した。
ボスはバニリッチに絶対零度を指示するも、アギルダーの虫の抵抗で反撃される。その隙にスピードスターで攻撃され、急所に直撃したバニリッチは目を回して地面へ伏せた。
部下も手持ちのポケモンすらも頼れなくなった怪人フリージ男に、怪傑ア☆ギルダーとアギルダーによるアギルダー☆キックが顔面に炸裂。
フリージ男の仮面が地面に落ち、バニプッチ団の野望とともにフリージ男は崩れ落ちた。
なおフリージ男がなぜフリージオを使わなかったのかというと、単純に強過ぎてゲットできなかっただけだった。
到着の合図を告げるサイレンが港に響き渡る。怪傑ア☆ギルダーはサトシたちへバニプッチ団の身柄を託すと、自身は颯爽と去っていった。
「やっぱり恰好良いぜ! アギルダーも怪傑ア☆ギルダーも!」
「ところで……あの、サニワの偽物は一体何なの?」
「ああ、あれは主さまが咄嗟に作った式———式神です。死体偽装って割と禁術寄りというか、ギリギリアウトなんですけどね。まあ死体を操る僵尸 の術よりはまだ倫理的にセーフかなと」
「ソウナンダァ……」
何かヤバい言葉がこんのすけの口から聞こえたような気がして、ダイゴは半笑いで返事を返す。怖がりなデントは耳を塞いでしゃがみ込んだ。
「それよりも、今までどこにいたんだい? 心配したんだよ……!」
「……? お手紙、書いた」
「柔らかい紙で、香り付きのやつだろ? でもさ、サニワの世界の字だから、俺たちは読めないんだよ」
「……あ。そっか……ごめんなさい」
サトシの説明に合点が行ったのか、サニワはぺこりと頭を下げて謝罪する。
ちなみにサニワがどこに逃げていたかというと、ダイゴと別れた後、バニプッチ団によるストーキングに薄々勘付いていたサニワは、ホテルに戻ると大急ぎで死体 を偽装してダイゴへ向けた置き手紙を残すと、サーナイトのサイコパワーで作った異空間に避難。
その後、頃合いを見て元の空間に戻り、ひとりでバニプッチ団を制圧しようとこの倉庫を探索していたところ、ちょうどダイゴが下っ端たちをこてんぱんに伸していたところだった。
気絶状態から復活したフリージ男は、ジュンサーたちが到着する前にこそこそと逃亡を画策する。が、サニワが易々と見逃すはずもなく、モスノウによる冷凍ビームで頭以外を氷漬けにした。
四つん這いの状態で氷漬けにされたフリージ男と顔を合わせるようにしゃがみ込むサニワ。どうやらパートナーがフリージオであること以外にも、彼に訊ねたいことがあるようだ。
さすがに異世界への戻り方は知らないだろうとダイゴは口を開けたものの、そこから声が出ることはなかった。彼女の問いは、そんな単純明快なそれではなかったからだ。
「……なぜ、こんなことを?」
「何故それを聞きたい⁉ どうせ作戦すらまともに立てられない馬鹿だと言いたいのか‼」
「ちがう。わたし、聞きたい……なぜ、悪いこと、したか。……きっと、理由があるから、悪いことした」
こんのすけ経由ではあるものの、サニワはあくまで憶測の域を過ぎないと前置きしてから、冒頭のホドモエマーケットでの泥棒の件を例に出した。
もしかしたら、泥棒とコアルヒーは食べさせる子どもがいるかもしれない。ところが、今日明日の食事にありつけることすら困難だった故の凶行だったのかもしれない。
今回は泥棒(とコアルヒー)を捕まえて牢屋へ放り込んだとしても、また食べられない子どもたちはどうするか。再びマーケットで盗みを働くだろう。
「……つまり主さまが仰りたいのは、万事は清濁併せ飲むもの。善か悪かの二択で判断できるような事例は滅多にないということです」
「む、難し過ぎてよくわかんないぜ……」
「なるほどね。だけど情状酌量の余地があるか否かは、この後じっくりと聞かせてもらうわ!」
フリージ男は到着したジュンサーに抵抗することなくパトカーへ押し込められると、サイレンが再び点灯する。
幽霊や妖怪などの得体の知れない人外よりも、生きている人間の方が余程恐ろしい。心許ない発音で独り言ちたサニワは、こんのすけを抱き上げるとどこか遠くを眺めていた。
真っ赤なバイクは流星の如くバニプッチ団のトラックを飛び越え、彼らを追い詰める。サトシたちが追い付いた頃には、怪傑ア☆ギルダーとバニプッチ団のボスが対峙していた。
「チャールズさん! じゃなくて……怪傑ア☆ギルダー‼」
「チャールズ? そうか……あの若造か。だが変身できるのは貴様だけではない‼ ご覧に入れよう、私の真の姿を‼」
ボスは羽織っていたマントを翻すと、フリージオを模した仮面を身に付けていた。名をフリージ
「行けぃ! 我がポケモンよ‼」
「フリージ男だけに、フリージオを出すつもりだな……!」
「また氷タイプ……嫌だぁ!」
「ぐえっ」
「アイリス、サニワが気絶しそうだよ……」
寒さが大の苦手なアイリスが、氷タイプに怯えてサニワの後ろへ隠れて抱きついた。しかし野生児アイリスの力はあまりにも強く、サニワの顔から血の気が引いていく。
ところが一同の予想に反して出てきたのは、バニリッチだった。これには基本的に冷静沈着なダイゴも、目を点にして驚いていた。さすがにサニワの顔は相変わらずの無表情だったが。
バニプッチ団の下っ端たちは、再びバニプッチを繰り出した。トラックの移動中に傷薬で回復したようだ。
しかし再びメタグロスのコメットパンチが炸裂。吹き飛ばされたバニプッチたちは下っ端の顔面に衝突し、全員目を回して撃沈した。
ボスはバニリッチに絶対零度を指示するも、アギルダーの虫の抵抗で反撃される。その隙にスピードスターで攻撃され、急所に直撃したバニリッチは目を回して地面へ伏せた。
部下も手持ちのポケモンすらも頼れなくなった怪人フリージ男に、怪傑ア☆ギルダーとアギルダーによるアギルダー☆キックが顔面に炸裂。
フリージ男の仮面が地面に落ち、バニプッチ団の野望とともにフリージ男は崩れ落ちた。
なおフリージ男がなぜフリージオを使わなかったのかというと、単純に強過ぎてゲットできなかっただけだった。
到着の合図を告げるサイレンが港に響き渡る。怪傑ア☆ギルダーはサトシたちへバニプッチ団の身柄を託すと、自身は颯爽と去っていった。
「やっぱり恰好良いぜ! アギルダーも怪傑ア☆ギルダーも!」
「ところで……あの、サニワの偽物は一体何なの?」
「ああ、あれは主さまが咄嗟に作った式———式神です。死体偽装って割と禁術寄りというか、ギリギリアウトなんですけどね。まあ死体を操る
「ソウナンダァ……」
何かヤバい言葉がこんのすけの口から聞こえたような気がして、ダイゴは半笑いで返事を返す。怖がりなデントは耳を塞いでしゃがみ込んだ。
「それよりも、今までどこにいたんだい? 心配したんだよ……!」
「……? お手紙、書いた」
「柔らかい紙で、香り付きのやつだろ? でもさ、サニワの世界の字だから、俺たちは読めないんだよ」
「……あ。そっか……ごめんなさい」
サトシの説明に合点が行ったのか、サニワはぺこりと頭を下げて謝罪する。
ちなみにサニワがどこに逃げていたかというと、ダイゴと別れた後、バニプッチ団によるストーキングに薄々勘付いていたサニワは、ホテルに戻ると大急ぎで
その後、頃合いを見て元の空間に戻り、ひとりでバニプッチ団を制圧しようとこの倉庫を探索していたところ、ちょうどダイゴが下っ端たちをこてんぱんに伸していたところだった。
気絶状態から復活したフリージ男は、ジュンサーたちが到着する前にこそこそと逃亡を画策する。が、サニワが易々と見逃すはずもなく、モスノウによる冷凍ビームで頭以外を氷漬けにした。
四つん這いの状態で氷漬けにされたフリージ男と顔を合わせるようにしゃがみ込むサニワ。どうやらパートナーがフリージオであること以外にも、彼に訊ねたいことがあるようだ。
さすがに異世界への戻り方は知らないだろうとダイゴは口を開けたものの、そこから声が出ることはなかった。彼女の問いは、そんな単純明快なそれではなかったからだ。
「……なぜ、こんなことを?」
「何故それを聞きたい⁉ どうせ作戦すらまともに立てられない馬鹿だと言いたいのか‼」
「ちがう。わたし、聞きたい……なぜ、悪いこと、したか。……きっと、理由があるから、悪いことした」
こんのすけ経由ではあるものの、サニワはあくまで憶測の域を過ぎないと前置きしてから、冒頭のホドモエマーケットでの泥棒の件を例に出した。
もしかしたら、泥棒とコアルヒーは食べさせる子どもがいるかもしれない。ところが、今日明日の食事にありつけることすら困難だった故の凶行だったのかもしれない。
今回は泥棒(とコアルヒー)を捕まえて牢屋へ放り込んだとしても、また食べられない子どもたちはどうするか。再びマーケットで盗みを働くだろう。
「……つまり主さまが仰りたいのは、万事は清濁併せ飲むもの。善か悪かの二択で判断できるような事例は滅多にないということです」
「む、難し過ぎてよくわかんないぜ……」
「なるほどね。だけど情状酌量の余地があるか否かは、この後じっくりと聞かせてもらうわ!」
フリージ男は到着したジュンサーに抵抗することなくパトカーへ押し込められると、サイレンが再び点灯する。
幽霊や妖怪などの得体の知れない人外よりも、生きている人間の方が余程恐ろしい。心許ない発音で独り言ちたサニワは、こんのすけを抱き上げるとどこか遠くを眺めていた。