第18話
「主さま! 大丈夫ですか⁉」
しばらく話し込んでいると、こんのすけを筆頭に、サニワのビリジオンやサトシ、アイリスたちがポケモンセンターまで駆けつけてきた。更には途中で偶然出会ったのか、シューティの姿もある。
思い掛けない人物の登場にサニワの表情が元の無表情に戻っていたが、淡々とこんのすけに現状を伝える。もちろんあちらの世界の言葉で。
『浅達性部分層熱傷だ。入院も勧められたが、厚意だけ受け取ったよ。あと少し範囲が広ければ、手術の可能性も視野に入っていたようだ』
「そうですか……。となると、完治するまでにはおよそ二週間は必要ですね」
「そんなにかかるの⁉」
「えぇ。主さまは……その……特異体質なので……」
「それってサニワは異世界出身だからか?」
慌てて負傷していない右手で咄嗟にサトシの口を塞ぐも、既に手遅れだった。
シューティは目を点にして驚いた顔を浮かべていたが、デジカメを取り出すとシャッターを押し始めた。もちろん被写体はサニワだ。
こんのすけがサニワの前に出て唸り声を上げて威嚇するも、粗方撮影したシューティは満足したのか、すぐにカメラをポケットへ仕舞った。
「しばらくはこのポケモンセンターに滞在しようよ。患部を清潔に保つにも、野宿では不可能だ」
「それにしても、どうしてこんな火傷を負ったんですか?」
「実は———」
デントの口から語られた事情は、シューティの顔は呆れたものへ変えていく。改めてサトシとアイリスへ向き直ったシューティは、何の躊躇もなく毒舌を吐いた。
「君たち、本当に常識ってものがないよね」
「何だと⁉」
「僕は事実を言ったまでだ。結果的にサニワさんに火傷を負わせてるじゃないか。しかも痕が残るかもしれないし、頭から被っていれば全身火傷で死んでいたかもしれないだろ」
「それは……その……」
シューティの正論にぐうの音も出ず、サトシとアイリスは押し黙る。元はといえば自分たちがデントの頭上でターザンごっこをしていたのが原因だからだ。少なからず、呵責の念は抱いていた。
シューティの服の裾が軽く引っ張られた。視線を下げれば、真っ白なもみじの手が制止していた。サニワのガーネットの瞳と視線が合うと、フルフル首を横に振られる。これ以上責めるなと言いたげだった。
ところがシューティの意識はサニワへと向けられた。さすがに負傷した状態でのバトルはサニワに負担がかかるからか、申し込まれることはなかった。だが、異世界という単語は彼の好奇心を擽るには十分過ぎた。
こんのすけがサトシたちの元へ訪れたときには、既にシューティとのバトルを行っており、ミジュマルがアクアジェットを披露していた最中だった。
シューティはミジュマルのアクアジェットの命中率が低い理由を見抜いた。一応サニワも見抜いていたものの、水タイプのミジュマルが水中で目を開けられないはずがないと周囲から諭され、サトシへ伝えずじまいだったのだ。
「貴女は僕と同様、ミジュマルがアクアジェットをする際に目を瞑る癖があると見抜いていた。異世界の人間は貴女のように、皆動体視力がいいんですか?」
「……さあ? どうだろ」
「さあ? って……答える気あるんですか」
「……ここ、人……いっぱい。……部屋、取る。待ってて」
左腕を火傷しているものの、サニワのフットワークは軽い。待機を言い残すと、彼女はジョーイへ宿泊予約の手続きを行った。
こんな辺鄙な場所ではあまりトレーナーも来ないようで、あっさりと個室を予約できた。サニワはちょいちょいと唖然としている一同を手招き、個室の鍵を手にしたタブンネが先導する。
個室へ通された一同はソファへと座る。案内したタブンネはサニワへカードキーを手渡すと、カウンターへ戻っていった。
サニワは全員をボールから出す。かなりポケモンたちもトレーナーのことを心底心配していたようで、包帯が巻かれた患部が目に映り、悲しい影が過る。
中でもサーナイトとバンギラス、モスノウがまるで自分事のように心を痛めた顔をしていたが、怪我をした本人は何ともないように平然と振る舞っていた。瑣末なことだと、気にするなとでも言いたげだ。
彼女の意図はポケモンたちにも伝わった。しかしやはりそれでも心を痛めていることに変わりはない。キュウコンが狛狐さながら後ろにそっと寄り添い、バンギラスとトゲキッス、ビリジオンが護衛のように傍に佇む。モスノウはサニワが腰を下ろすソファの背もたれに止まったものの、酷く寒がるアイリスの姿を見て自らボールへ戻っていった。
ところが、最も新入りのモンメンだけが見当たらない。心配になって周囲を見渡すと、幸いすぐに見つかった。サニワの黒いレザーリュックの中で休んでいる。
突然、モンメンが光に包まれる。サニワもよく見た、進化の光景だ。
昨日、リュックサックの中身を整理したのが仇となった。進化系アイテム———太陽の石———が、モンメンに触れてしまったのだ。
「……進化、した」
ぱちくりと目を点にするモンメン……否、エルフーン。自らの身に何が起こったのか把握できていないようだが、両手を見て進化したのだと理解できたようだ。
進化できたのが嬉しいのか、ふわふわとサニワの周囲を漂うエルフーン。しかし負傷した状態で飛びつくのは避ける程度の理性は持っていたので、嬉しそうに空中を舞うだけに留まっていた。
しばらく話し込んでいると、こんのすけを筆頭に、サニワのビリジオンやサトシ、アイリスたちがポケモンセンターまで駆けつけてきた。更には途中で偶然出会ったのか、シューティの姿もある。
思い掛けない人物の登場にサニワの表情が元の無表情に戻っていたが、淡々とこんのすけに現状を伝える。もちろんあちらの世界の言葉で。
『浅達性部分層熱傷だ。入院も勧められたが、厚意だけ受け取ったよ。あと少し範囲が広ければ、手術の可能性も視野に入っていたようだ』
「そうですか……。となると、完治するまでにはおよそ二週間は必要ですね」
「そんなにかかるの⁉」
「えぇ。主さまは……その……特異体質なので……」
「それってサニワは異世界出身だからか?」
慌てて負傷していない右手で咄嗟にサトシの口を塞ぐも、既に手遅れだった。
シューティは目を点にして驚いた顔を浮かべていたが、デジカメを取り出すとシャッターを押し始めた。もちろん被写体はサニワだ。
こんのすけがサニワの前に出て唸り声を上げて威嚇するも、粗方撮影したシューティは満足したのか、すぐにカメラをポケットへ仕舞った。
「しばらくはこのポケモンセンターに滞在しようよ。患部を清潔に保つにも、野宿では不可能だ」
「それにしても、どうしてこんな火傷を負ったんですか?」
「実は———」
デントの口から語られた事情は、シューティの顔は呆れたものへ変えていく。改めてサトシとアイリスへ向き直ったシューティは、何の躊躇もなく毒舌を吐いた。
「君たち、本当に常識ってものがないよね」
「何だと⁉」
「僕は事実を言ったまでだ。結果的にサニワさんに火傷を負わせてるじゃないか。しかも痕が残るかもしれないし、頭から被っていれば全身火傷で死んでいたかもしれないだろ」
「それは……その……」
シューティの正論にぐうの音も出ず、サトシとアイリスは押し黙る。元はといえば自分たちがデントの頭上でターザンごっこをしていたのが原因だからだ。少なからず、呵責の念は抱いていた。
シューティの服の裾が軽く引っ張られた。視線を下げれば、真っ白なもみじの手が制止していた。サニワのガーネットの瞳と視線が合うと、フルフル首を横に振られる。これ以上責めるなと言いたげだった。
ところがシューティの意識はサニワへと向けられた。さすがに負傷した状態でのバトルはサニワに負担がかかるからか、申し込まれることはなかった。だが、異世界という単語は彼の好奇心を擽るには十分過ぎた。
こんのすけがサトシたちの元へ訪れたときには、既にシューティとのバトルを行っており、ミジュマルがアクアジェットを披露していた最中だった。
シューティはミジュマルのアクアジェットの命中率が低い理由を見抜いた。一応サニワも見抜いていたものの、水タイプのミジュマルが水中で目を開けられないはずがないと周囲から諭され、サトシへ伝えずじまいだったのだ。
「貴女は僕と同様、ミジュマルがアクアジェットをする際に目を瞑る癖があると見抜いていた。異世界の人間は貴女のように、皆動体視力がいいんですか?」
「……さあ? どうだろ」
「さあ? って……答える気あるんですか」
「……ここ、人……いっぱい。……部屋、取る。待ってて」
左腕を火傷しているものの、サニワのフットワークは軽い。待機を言い残すと、彼女はジョーイへ宿泊予約の手続きを行った。
こんな辺鄙な場所ではあまりトレーナーも来ないようで、あっさりと個室を予約できた。サニワはちょいちょいと唖然としている一同を手招き、個室の鍵を手にしたタブンネが先導する。
個室へ通された一同はソファへと座る。案内したタブンネはサニワへカードキーを手渡すと、カウンターへ戻っていった。
サニワは全員をボールから出す。かなりポケモンたちもトレーナーのことを心底心配していたようで、包帯が巻かれた患部が目に映り、悲しい影が過る。
中でもサーナイトとバンギラス、モスノウがまるで自分事のように心を痛めた顔をしていたが、怪我をした本人は何ともないように平然と振る舞っていた。瑣末なことだと、気にするなとでも言いたげだ。
彼女の意図はポケモンたちにも伝わった。しかしやはりそれでも心を痛めていることに変わりはない。キュウコンが狛狐さながら後ろにそっと寄り添い、バンギラスとトゲキッス、ビリジオンが護衛のように傍に佇む。モスノウはサニワが腰を下ろすソファの背もたれに止まったものの、酷く寒がるアイリスの姿を見て自らボールへ戻っていった。
ところが、最も新入りのモンメンだけが見当たらない。心配になって周囲を見渡すと、幸いすぐに見つかった。サニワの黒いレザーリュックの中で休んでいる。
突然、モンメンが光に包まれる。サニワもよく見た、進化の光景だ。
昨日、リュックサックの中身を整理したのが仇となった。進化系アイテム———太陽の石———が、モンメンに触れてしまったのだ。
「……進化、した」
ぱちくりと目を点にするモンメン……否、エルフーン。自らの身に何が起こったのか把握できていないようだが、両手を見て進化したのだと理解できたようだ。
進化できたのが嬉しいのか、ふわふわとサニワの周囲を漂うエルフーン。しかし負傷した状態で飛びつくのは避ける程度の理性は持っていたので、嬉しそうに空中を舞うだけに留まっていた。