第43話
しばらくの時間が経ち、ダンデが顔を上げた。苦しみを噛み砕いたような表情だった。
「……認めたくはないが、元の世界へ返した方が賢明、か」
「そうだな。……けどよ、転送装置 はオレサマたちが破壊したはずだぜ? そもそも帰れんのか?」
「詳しくは言えないけど……もう一つ見つかった。あの子が退院して本調子が戻ってから、フラダリラボの跡地を訪れる予定なんだ。その後に、もう一つの転送装置 へ向かう予定さ」
「そう、か……。せめて見送りくらいしたいが、サニワくんは嫌がるだろうな……」
嫌われているのを自覚しているのか、ダンデはがっくりと項垂れる。
転送装置 をサニワの目前で破壊してからというもの、サニワのダンデとキバナへ対する信頼感はゼロをとっくに通り越してマイナスにまで陥っていた。
せめてもの伝言をマノンへ託す。サニワが大切なポケモンを託すくらいだ。彼女なら、きっと。自分たちの言伝も、渡してくれるだろう。
「オレサマたちはガラルへ戻る。あっちの世界でも元気でいろよ〜って、伝えておいてくれるか?」
「うん。伝えておく。喧嘩したままお別れになっちゃったけど……いつかきっと、サニワさんも理解してくれるときが来るよ!」
「……ありがとう、カロスのお嬢さん」
二人が席を立った。カルネが予定を尋ねると、そのままヒヨクシティから船でガラルへ戻る予定だ。ミアレシティ中のホテルは今回の大惨事で営業停止を余儀なくされ、滞在していた観光客は周辺の街に流れたため、予約が取れなかったらしい。
ダンデとキバナはガラル地方を代表するポケモントレーナーだ。そんな著名人がその辺の野道で野宿しようものなら、あっという間に人集りができるのも想像に難くない。
ただでさえ混乱状態が解除されていない中、更に混乱を招く真似は二人としても避けたかった。
「……それじゃ、俺たちは帰るとしよう」
「わかったわ。それじゃ二人とも、気を付けてね」
「ああ」
二人はそのまま研究所を立ち去った。
ミアレシティは随分と広く、道に迷ってしまうだろう。カロス地方出身でないと尚更だ。その上ただでさえ一本道でも迷うダンデのことだ、真反対の方向へ突き進むのは簡単に予見出来る。
迷子を心配したカルネが、同じ方向にちょうど女優の仕事があるため、二人を一緒にヒヨクシティまで案内した。
ダンデ、キバナ、カルネの三人の離席とほぼ同時に、ダイゴのスマホロトムが着信を告げる。サニワの入院している病院からだった。
幸い、サニワの刺し傷は浅く、すぐに傷の治療に取り掛かったということもあり、一週間程度入院期間が伸びる程度で済むそうだ。命に別状がないと知り、マノンは安堵の溜め息を零した。
「良かった……」
「サニワちゃんのメンタルを鑑みれば、退院するまでは会えないけれど……その程度で済んで良かった」
「えぇ、そうですね。ただ……こんのすけ君に伝えるべきかどうか。自殺未遂の事実を伝えれば、恐らく困惑するでしょう」
「……事情は伏せて伝えますが、聞かれたらちゃんと答えるつもりです」
誰よりも主人と一緒に過ごした時間が長いこんのすけのことだ。彼女ならやりかねないだろうと理解はする。それよりも、あそこまで追いつめたあの二人に、酷く憤慨するだろう。
だが彼は、自分の立場や力量というものを、人一倍、否、狐一倍理解している。そして主人の心情と、それに付随する行動も。非力な狐一匹だけでは、何も出来ないと、理解しているはず。手を出そうとはしないだろうが。
ダイゴがすっかり冷めてしまった紅茶を啜る。その味は、何もしないような気がした。
「……認めたくはないが、元の世界へ返した方が賢明、か」
「そうだな。……けどよ、
「詳しくは言えないけど……もう一つ見つかった。あの子が退院して本調子が戻ってから、フラダリラボの跡地を訪れる予定なんだ。その後に、もう一つの
「そう、か……。せめて見送りくらいしたいが、サニワくんは嫌がるだろうな……」
嫌われているのを自覚しているのか、ダンデはがっくりと項垂れる。
せめてもの伝言をマノンへ託す。サニワが大切なポケモンを託すくらいだ。彼女なら、きっと。自分たちの言伝も、渡してくれるだろう。
「オレサマたちはガラルへ戻る。あっちの世界でも元気でいろよ〜って、伝えておいてくれるか?」
「うん。伝えておく。喧嘩したままお別れになっちゃったけど……いつかきっと、サニワさんも理解してくれるときが来るよ!」
「……ありがとう、カロスのお嬢さん」
二人が席を立った。カルネが予定を尋ねると、そのままヒヨクシティから船でガラルへ戻る予定だ。ミアレシティ中のホテルは今回の大惨事で営業停止を余儀なくされ、滞在していた観光客は周辺の街に流れたため、予約が取れなかったらしい。
ダンデとキバナはガラル地方を代表するポケモントレーナーだ。そんな著名人がその辺の野道で野宿しようものなら、あっという間に人集りができるのも想像に難くない。
ただでさえ混乱状態が解除されていない中、更に混乱を招く真似は二人としても避けたかった。
「……それじゃ、俺たちは帰るとしよう」
「わかったわ。それじゃ二人とも、気を付けてね」
「ああ」
二人はそのまま研究所を立ち去った。
ミアレシティは随分と広く、道に迷ってしまうだろう。カロス地方出身でないと尚更だ。その上ただでさえ一本道でも迷うダンデのことだ、真反対の方向へ突き進むのは簡単に予見出来る。
迷子を心配したカルネが、同じ方向にちょうど女優の仕事があるため、二人を一緒にヒヨクシティまで案内した。
ダンデ、キバナ、カルネの三人の離席とほぼ同時に、ダイゴのスマホロトムが着信を告げる。サニワの入院している病院からだった。
幸い、サニワの刺し傷は浅く、すぐに傷の治療に取り掛かったということもあり、一週間程度入院期間が伸びる程度で済むそうだ。命に別状がないと知り、マノンは安堵の溜め息を零した。
「良かった……」
「サニワちゃんのメンタルを鑑みれば、退院するまでは会えないけれど……その程度で済んで良かった」
「えぇ、そうですね。ただ……こんのすけ君に伝えるべきかどうか。自殺未遂の事実を伝えれば、恐らく困惑するでしょう」
「……事情は伏せて伝えますが、聞かれたらちゃんと答えるつもりです」
誰よりも主人と一緒に過ごした時間が長いこんのすけのことだ。彼女ならやりかねないだろうと理解はする。それよりも、あそこまで追いつめたあの二人に、酷く憤慨するだろう。
だが彼は、自分の立場や力量というものを、人一倍、否、狐一倍理解している。そして主人の心情と、それに付随する行動も。非力な狐一匹だけでは、何も出来ないと、理解しているはず。手を出そうとはしないだろうが。
ダイゴがすっかり冷めてしまった紅茶を啜る。その味は、何もしないような気がした。