第5話

「驚いたよ、まさかミルホッグが倒されるなんてね。でも幸運はそう続くかな? 出ておいで、ハーデリア!」


 ジムリーダーはハーデリアをもう一度バトルフィールドへ送り出したが、サニワはこのまま交代せずに続けるつもりだ。
 
 ハーデリアの放つシャドーボールとトゲキッスの波動弾がぶつかり合う。数が多い波動弾の弾幕が襲いかかるものの、攻撃が直撃する直前に再び吠えるを放たれた。
 忠犬の咆哮は、白銀の鳥をも吹き飛ばす。ボールに引っ込んだトゲキッスの代わりに、再びフィールドに現れたのは闘志を燃やす白狐だった。


「攻めるよハーデリア! シャドーボールだ!」
「火炎放射」


 先ほど同様、ハーデリアのシャドーボールを火炎放射で掻き消してダメージを与える。主人の激励により、忠犬は気力だけで地面に立っているものの、その足下は覚束ない。


「立ちなさい! 立つのよハーデリア! ギガインパクト!」
「ソーラービーム」


 ギガインパクトは一度放つと、しばらく動けなくなるほどの高威力を誇る技。しかし、足元が覚束ない状態で放つには時間がかかる。その上火傷を負い、攻撃の威力も格段に落ちている。
 決着は既に付いているようなものだが、その諦めない闘志を讃えるつもりのようだ。キュウコンの口元には、眩い光が集まっている。
 ハーデリアが光を纏うその隙に、放たれた高威力のソーラービーム。バトルフィールドから勢いよく弾き出された忠犬は、目を回していた。


「ハーデリア戦闘不能! よって勝者、チャレンジャー・サニワ!」
「……ありがと、勝てた」
「面白いバトルをありがとう! これがシッポウジムの勝利の証、ベーシックバッジだよ。さ、受け取りな!」
「そうだ、サニワさん。もしシッポウシティにしばらく滞在するのであれば、書庫の本を借りて読んでも良いですよ。ね、ママ!」
「もちろんだよ。アタシはしばらく出張でいないし、しばらく秘宝展の準備で閉館だから、二、三日で読める本を持って行きな。アタシのあくなき探究心、気に入ったしね!」


 囁くような微かな声で囁くサニワは、近日開催される秘宝展の展示を、手伝わせて欲しいと依頼した。ぺこり、と律義に頭を下げたサニワに、ジムリーダー夫婦はきょとんとしたあと顔を見合わせる。
 お仕事でお忙しい中、ジム戦を引き受けて頂いたうえ、本来なら持ち出し禁止の本を貸し出すように慮ってくださったのだ。できることがあれば、何かお手伝いしたい。サニワはそう考えていた。


「あっははは! 構わないさ、むしろ助かるよ! それじゃあ遠慮なくお願いしようかね!」
「今回のチャレンジャーはとおぉっても良い子ですね、ママ……!」


 キダチが感涙に咽び泣き、アロエがからからと笑い飛ばし、サニワの背をバシバシと叩く。対照的だが仲睦まじい夫婦を目にしたこんのすけは、刀剣男士たちを思い出して笑みを浮かべたのだった。
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