第41話

 巨石が眠る、フラダリラボの研究室。プラターヌ博士は、傍にある装置を弄り始めた。サニワはまだ眠っている。


「何してるんですか?」
「ここでどんな研究がされていたのか、調べないと」


 数多くの中にある一つのフォルダ。それをタップすると、ディスプレイに表示されたサニワの顔写真とともに、数多くの情報が溢れ出す。


「これは……!」
「何かあったんですか⁉︎」


 ダイゴがプラターヌへ問いかけた、その時。
 エラー音が部屋中に鳴り響き、部屋中が赤色に染まる。警報を伝える証明かと思ったが、そうではない。巨石自体が赤く光っているのだ。
 巨石の反応に呼応するように、サニワの身体も赤色に光る。


「何だ……⁉︎」


 突如、ガラスが膨張して破損した。周辺にガラスの破片が飛び散り、サニワの綺麗な顔を傷つけまいとダイゴが庇う。その時、サニワが離れようとする感覚がダイゴに走った。
 目が覚めたのかとダイゴはサニワに目を遣るが、そうではない。巨石が彼女を求めているのだ。
 ぐいぐいと引き寄せられるサニワの身体は、遂にダイゴから離れて巨石に接触。そのまま何者かに引きずり込まれるかのように。水の中に入水自殺するかのように。巨石の中へ取り込まれてしまった。


「サニワちゃん……! サニワちゃん!」
「待ってください、ダイゴさん!」
「サニワちゃんがいなくなってしまう……!」


 完全にサニワを取り込んだ巨石は、ミシミシと不吉な音を立てて硬化する。そして植物が急成長するかのように、巨石は一気に体積を肥大化させ始めた。
 巨石は天井を突き破り、上から雨のように瓦礫が降り注ぐ。それでもダイゴはサニワを助け出そうと必死だったが、このままでは瓦礫の山に埋もれてしまうだけだ。マノンはダイゴの手を引き、脱出を促す。


「サニワちゃん……! サニワちゃーーーーーん!」
「ダイゴさん、危ないよ! 一緒に逃げよう!」
「でも……!」
「このままじゃ、ダイゴさんが死んじゃう! そしたら、サニワさんだって悲しむよ!」


 マノンに促され、仕方なく撤退するダイゴ。フラダリラボから脱出し、来た道を振り返ると。建物が音を立てて崩落したところだった。
 土煙の奥から現れたのは、ジガルデを模ったような巨石だ。ミアレシティを襲った巨大な蔦も確認できる。


「博士……。これって……」
「わからない……。巨石にこんな力が……」
「巨石そのものの力なんです。何が起きても不思議ではない」


 爆発するフラダリラボから脱出したのは、マノンたちだけではない。始めは報道キャスターとして潜入したロケット団も必死に逃げていた。


「スクープのチャンスよ! アタシたちがやらなきゃ誰がやる!」
「世界は真実を待っている!」
「世界のこの危機伝えなきゃ!」
「世界の情報届けなきゃ!」
「愛と真実の報道を貫く!」
「ラブリーチャーミーなテレビマン!」
「生中継で伝えるロケット団の二人には!」
「ホワイトホール! 白い明日が待ってるぜぃ!」


 報道ヘリに乗り込んだロケット団は、早速状況をカメラに写す。進撃を開始する巨石、蠢く蔦。爆発炎上、そして崩落するフラダリラボ。一目瞭然の異常事態だ。
 巨石は一定方向へ向かっていた。ヒャッコクシティに鎮座する日時計だ。いつもなら美しく薄紅に煌めく日時計が、深紅に染まっていた。まるで立ち昇る地獄の劫火のように。人々に警報を発するかように。赤く、輝いていた。

 プリズムタワーの頂上から、ジムのある内部へ移動したサトシたち。だがジムのあった痕跡は跡形もない。
 バトルフィールドだった場所には、破壊されたマインドシステム。そしてがっくりと力なく座り込むシトロンがいた。その目前には、無惨にも壊れてしまったシトロイドが倒れている。


「……直るんだよな」
「直してみせます。僕はまだ、彼に何もしてあげられてないんですから」


 シトロンが力なく答えると、再びサトシの通信機が着信を告げた。相手はセレナではなく、マノンだ。


「サトシ! アラン! 大変だよ!」
「サニワちゃんが……巨石に吸収された!」
「主さまが⁉︎」
「その巨石は今もどこかに向けて移動中なの!」
「何処に向かっているのかはわからない。現在の位置情報を送るから、バシャーモ仮面と向かってくれ。ボクたちはこのまま追跡して分析する!」
「サトシ、気を付けて‼︎」


 通信を終えたサトシは、シトロンへ声をかける。大丈夫です。そう答えたシトロンの声は、先ほどの声とは違い、いつもの凛としたそれに戻っていた。


「行きましょう。戦いはまだ終わっていない」
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