第39話
もふもふとした、白く小さな物体。それがゲッコウガを苦しめている蝿を模した機械と衝突した。
すると。機械は、薄氷を踏んだようなパキパキという乾いた音とともに、さらさらと、砂漠を舞う砂のように、塵芥の如く粉々に砕けていくではないか。それはゲッコウガを拘束する機械にも、同様の現象が表れている。
サトシは一度、その光景を見たことがあった。イッシュ地方を旅していた時、ライモンシティでロケット団によって大量のモンスターボールが強奪された、あの事件の時。
サニワが忌々しい気配を感じる赤色の呪符を、ロケット団の機械に貼り付けた時だった。
「何ッ⁉︎」
「こんのすけ! 助けに来てくれたのか‼︎」
「……アランさま、いい加減目を覚ましてください! いつまでいじけてるんですか⁉︎ 貴方のすべきことは何か、もう既にわかっているでしょう‼︎」
白い小さな物体はこんのすけだった。完全に全員の意識が逸れるその時まで、機会をうかがっていたようだ。
アランへきゃんきゃんとけたたましく喝を入れたこんのすけは、サトシたちをフラダリから庇うように、グルルルと喉を鳴らして威嚇する。
完全に粉々になった機械と拘束具は、さらさらと風に乗って消えていく。壊れ切ったことで赤色の禍々しい呪符は完全に効力を失ったのか、ひらりと床に落ちた。
「残念ながら……呪殺札のストックは底を尽きそうでして。皆さまの拘束具を破壊するだけの数はありませんが……今のサトシさま、そしてゲッコウガさまのお力で、自力で脱出できますよね」
「あぁ! ゲッコウガ、俺たちを助けてくれ‼︎」
キズナへんげしたゲッコウガは、水手裏剣で全員の枷を破壊する。アランもリザードンをボールから繰り出し、フラダリへ敵対の意を見せた。
「……こんのすけ、ありがとう。お陰で目が覚めたよ」
「もしも主さまなら、躊躇なく胸倉を引っ掴んで平手打ちしていることでしょう。あのうじうじ具合を見たら、飛んでくるのは顔面ストレートかもしれませんけど。主さまじゃなくて僕で良かったですね」
あの幼女、そんなえげつないことするのか。アランは一瞬困惑した。
なおサニワは忠義に篤く、義理堅い性格なのだが、受けた仕打ちもきっちりと倍以上にして返すタイプだ。自身をこの世界に縛りつけているダンデとキバナに対し、非常に根深い憎悪の念を抱いているのも頷ける。
反旗を翻したアラン、この世界を壊させまいと息巻くサトシ、そしてこんのすけ。二体一という不利な状況でも、フラダリは余裕綽々たる態度を崩さない。
「……私に勝つつもりなのかね」
「代表。誰かを守るための最強を、俺が証明してみせる! 貴方に勝って‼︎」
「残念だよアラン。私が築き上げる世界に君たちは不要だ‼︎」
「必要とか不要とか、そんなもん決められてたまるか!」
「……仕方ない」
フラダリが蟀谷 に装置を取り付けると、呼応するように背中と左腕に謎の機械が装着された。まるで取り憑いているかのように。
こんのすけがサニワへ報告するかのように、遠吠えをした。それはどこまでも遠く響き渡った。
サトシたちが対峙するその下では、シトロンとシトロイドがフレア団幹部のバラ、アケビと戦闘していた。
レパルダスとクリムガンの攻撃をエレザードがフラッシュで防ぎ、その隙にレントラーのワイルドボルトが直撃。高威力の電気技を受けて吹き飛ばされた二体を、ホルビーとハリマロンが追撃する。
レパルダスとクリムガンの体力はもう底を尽きそうだ。仕方なく二匹をボールに戻したその隙に、シトロイドがバラとアケビをロープで縛り上げる。
「捕獲完了!」
「さすがですシトロイド!」
「あんたのせいよ!」
「バラのせいですわ!」
互いに失敗の責任を押し付け合う二人の女幹部。その啀み合いはあまりにも滑稽だ。しばらくの間やいのやいのと喧嘩していたが、拘束されていてはどうにもできず、顔を背けた。
一方、シトロンから離れたユリーカは蔦で縛られたプニちゃんの元へ駆けて行く。心配そうにプニちゃんの名前を呼ぶと、つきりと胸の奥から痛みが駆け巡った。
ユリーカが来た道を振り返ると、メガシンカエネルギーがプリズムタワーから発射された。赤黒い光線は、片割れが洗脳された強力なものだ。ジガルデは苦しそうな声を上げる。
苦痛から逃れようとしたのか、地面から生えたのはあの巨大な蔦。ユリーカへ襲いかかるが、間一髪メガバシャーモが建物の上へ避難させた。
「お嬢ちゃん、なんで一人で来たんだ!」
「プニちゃんが……負けちゃう……」
プニちゃんと感覚がリンクしているのか、ユリーカは息も絶え絶えだ。額には脂汗も浮かんでいる。頭を抱えて叫び声をあげた。
すると。機械は、薄氷を踏んだようなパキパキという乾いた音とともに、さらさらと、砂漠を舞う砂のように、塵芥の如く粉々に砕けていくではないか。それはゲッコウガを拘束する機械にも、同様の現象が表れている。
サトシは一度、その光景を見たことがあった。イッシュ地方を旅していた時、ライモンシティでロケット団によって大量のモンスターボールが強奪された、あの事件の時。
サニワが忌々しい気配を感じる赤色の呪符を、ロケット団の機械に貼り付けた時だった。
「何ッ⁉︎」
「こんのすけ! 助けに来てくれたのか‼︎」
「……アランさま、いい加減目を覚ましてください! いつまでいじけてるんですか⁉︎ 貴方のすべきことは何か、もう既にわかっているでしょう‼︎」
白い小さな物体はこんのすけだった。完全に全員の意識が逸れるその時まで、機会をうかがっていたようだ。
アランへきゃんきゃんとけたたましく喝を入れたこんのすけは、サトシたちをフラダリから庇うように、グルルルと喉を鳴らして威嚇する。
完全に粉々になった機械と拘束具は、さらさらと風に乗って消えていく。壊れ切ったことで赤色の禍々しい呪符は完全に効力を失ったのか、ひらりと床に落ちた。
「残念ながら……呪殺札のストックは底を尽きそうでして。皆さまの拘束具を破壊するだけの数はありませんが……今のサトシさま、そしてゲッコウガさまのお力で、自力で脱出できますよね」
「あぁ! ゲッコウガ、俺たちを助けてくれ‼︎」
キズナへんげしたゲッコウガは、水手裏剣で全員の枷を破壊する。アランもリザードンをボールから繰り出し、フラダリへ敵対の意を見せた。
「……こんのすけ、ありがとう。お陰で目が覚めたよ」
「もしも主さまなら、躊躇なく胸倉を引っ掴んで平手打ちしていることでしょう。あのうじうじ具合を見たら、飛んでくるのは顔面ストレートかもしれませんけど。主さまじゃなくて僕で良かったですね」
あの幼女、そんなえげつないことするのか。アランは一瞬困惑した。
なおサニワは忠義に篤く、義理堅い性格なのだが、受けた仕打ちもきっちりと倍以上にして返すタイプだ。自身をこの世界に縛りつけているダンデとキバナに対し、非常に根深い憎悪の念を抱いているのも頷ける。
反旗を翻したアラン、この世界を壊させまいと息巻くサトシ、そしてこんのすけ。二体一という不利な状況でも、フラダリは余裕綽々たる態度を崩さない。
「……私に勝つつもりなのかね」
「代表。誰かを守るための最強を、俺が証明してみせる! 貴方に勝って‼︎」
「残念だよアラン。私が築き上げる世界に君たちは不要だ‼︎」
「必要とか不要とか、そんなもん決められてたまるか!」
「……仕方ない」
フラダリが
こんのすけがサニワへ報告するかのように、遠吠えをした。それはどこまでも遠く響き渡った。
サトシたちが対峙するその下では、シトロンとシトロイドがフレア団幹部のバラ、アケビと戦闘していた。
レパルダスとクリムガンの攻撃をエレザードがフラッシュで防ぎ、その隙にレントラーのワイルドボルトが直撃。高威力の電気技を受けて吹き飛ばされた二体を、ホルビーとハリマロンが追撃する。
レパルダスとクリムガンの体力はもう底を尽きそうだ。仕方なく二匹をボールに戻したその隙に、シトロイドがバラとアケビをロープで縛り上げる。
「捕獲完了!」
「さすがですシトロイド!」
「あんたのせいよ!」
「バラのせいですわ!」
互いに失敗の責任を押し付け合う二人の女幹部。その啀み合いはあまりにも滑稽だ。しばらくの間やいのやいのと喧嘩していたが、拘束されていてはどうにもできず、顔を背けた。
一方、シトロンから離れたユリーカは蔦で縛られたプニちゃんの元へ駆けて行く。心配そうにプニちゃんの名前を呼ぶと、つきりと胸の奥から痛みが駆け巡った。
ユリーカが来た道を振り返ると、メガシンカエネルギーがプリズムタワーから発射された。赤黒い光線は、片割れが洗脳された強力なものだ。ジガルデは苦しそうな声を上げる。
苦痛から逃れようとしたのか、地面から生えたのはあの巨大な蔦。ユリーカへ襲いかかるが、間一髪メガバシャーモが建物の上へ避難させた。
「お嬢ちゃん、なんで一人で来たんだ!」
「プニちゃんが……負けちゃう……」
プニちゃんと感覚がリンクしているのか、ユリーカは息も絶え絶えだ。額には脂汗も浮かんでいる。頭を抱えて叫び声をあげた。