第37話
それから数日が経ったある日。エイセツシティへ向かうサトシたちは野原が広がる長閑なポケモンセンターに立ち寄っていた。
そこでポケモンセンターに併設されているバトルフィールドを借り、シトロンとこんのすけがサトシとゲッコウガに起きている現象の仮説を検証してみるらしい。
ちょこんとテーブルに礼儀正しくお座りするこんのすけ。彼の首元に装着された鈴に柔い肉球が触れると、プロジェクター機能が作動した。
そして空中に映し出された映像は、ゲッコウガが変化する場面の映像……ではなく、今よりも少し身長の低いサニワが映っていた。
薄紅に色付いた桜の花弁が舞う中、縁側に腰を下ろす銀髪碧眼の見目麗しい男。その隣に腰掛けるのは幼いサニワ。
サトシたちは男の美しさに目を奪われるが、それも一瞬。八面玲瓏な男の美しさよりも、サニワの表情や仕草に視線が移る。常に冷たい無表情の仮面を被っている彼女が、頬を牡丹色に染め、たおやかな微笑みを浮かべているからだ。
共に食べているのは和菓子だろうか、サニワはその美味しさに目を輝かせていた。
サニワは半分に切られた和菓子を隣に座る男に渡し、彼は食べていたものを彼女へ渡す。その際優しく頭を撫でられたサニワは、とても嬉しそうに目を細めていた。
「うぇえええええ⁉︎ サニワって笑うんだ‼︎」
「見てお兄ちゃん、あのサニワさんが笑ってるよ! 隣のお兄さんもすっごくかっこいー‼︎」
「そうね……。隣のお兄さん、すっごくイケメンね」
「あ、あれ? 少々お待ちくださいね……」
こんのすけは慌ててほのぼのとした動画再生を終了し、今度はゲッコウガが変身していた戦闘場面を写す。
その際、しれっと訂正を入れた。兄だと思われていた人物は実は刀剣男士であり、そもそも人間ではない存在であるということを。
オカルトにはやや否定気味のシトロンも、なぜか納得できてしまう不思議さである。
「あぁ、これですね! あと訂正させていただきますが、隣に座っていらっしゃるのは主さまのご兄弟ではなく、山姥切 長義 という刀剣男士であり、刀の付喪神です」
「え! じゃあこのお兄さん、人間じゃないの⁉︎ 神様なの⁉︎ すごーい‼︎」
「……僕は今まで、科学的なものは信じないタイプでしたが、すとんと腑に落ちる不思議な感覚です」
「あと、主さまはこっちが素ですよ。基本的に性格はお優しくておっとりで、ふわっふわしてらっしゃいます」
「あー、それは何かわかる! サニワのポケモン、皆サニワにすっげー懐いてるもんな!」
「とりあえず話元に戻しましょうね」
録画していたゲッコウガの変化したシーンを写す。その中で傾向としてあったのが、変化するのはバトル時のみということ。ゲッコウガの姿が、主人であるサトシの意匠に似ていること。
またエスパータイプの使い手・ゴジカが予言した内容もあり、導き出された仮説は、サトシとゲッコウガに何らかの心理的要因———サトシとゲッコウガの気持ちがシンクロする———が関わり、あの力を引き出しているということだ。
これは刀剣男士の話なので参考程度にしかならないのだが、一定の練度に達した刀剣男士は「修業」を行う。刀剣男士は何百年という自分の過去を振り返り、主への愛を再確認する。
そして修業を経た刀剣男士は、主への信頼、忠誠などが更に深まり、力が桁違いに増すという。
「刀剣男士は付喪神という存在ではありますが、心理的に主人である審神者様に依存しているという点は一緒だと思うんです。この世界のメガシンカも、トレーナーとの『絆』がないと上手く出来ないようですから」
「では、早速実験していきましょう!」
そう言ってシトロンが取り出した機械を、サトシとゲッコウガの手首にそれぞれ装着する。
変化中のサトシとゲッコウガの心拍数や脳波、変化した際のサトシの反応など、さまざまな項目をデータ化・それを記録するという優れものだ。
今までの発明品を鑑みると、耐久性の問題で一度か二度ほどしか測定できなさそうだが、それでも利用する価値は十二分にある。
早速試しにサトシとシトロンとのバトルが開始された。ところがしばらく経っても、なかなか変化が起きる気配はない。今日は変化しない日なのか。一同が一瞬諦めかけた時、プニちゃんを咥えたこんのすけが物陰に隠れた。
「君と会うと、いつもバトルの最中だ」
「アラン!」
ポケモンセンターに訪れたアランが注目したのは、サトシが装着しているバトルパルス測定器だ。シトロンは測定に集中するため、相手をアランが務める運びとなった。
そうと決まれば、善は急げ。ゲッコウガとレントラーを回復させるため、ジョーイさんへ預た。その間にもバトルで時間を潰すつもりのようで、サトシたちはバトルフィールドへ戻ってくる。
物陰に隠れていたこんのすけはプニちゃんを自分の背に隠しながら、バトルジャンキーを呆れたように見詰めていた。
そこでポケモンセンターに併設されているバトルフィールドを借り、シトロンとこんのすけがサトシとゲッコウガに起きている現象の仮説を検証してみるらしい。
ちょこんとテーブルに礼儀正しくお座りするこんのすけ。彼の首元に装着された鈴に柔い肉球が触れると、プロジェクター機能が作動した。
そして空中に映し出された映像は、ゲッコウガが変化する場面の映像……ではなく、今よりも少し身長の低いサニワが映っていた。
薄紅に色付いた桜の花弁が舞う中、縁側に腰を下ろす銀髪碧眼の見目麗しい男。その隣に腰掛けるのは幼いサニワ。
サトシたちは男の美しさに目を奪われるが、それも一瞬。八面玲瓏な男の美しさよりも、サニワの表情や仕草に視線が移る。常に冷たい無表情の仮面を被っている彼女が、頬を牡丹色に染め、たおやかな微笑みを浮かべているからだ。
共に食べているのは和菓子だろうか、サニワはその美味しさに目を輝かせていた。
サニワは半分に切られた和菓子を隣に座る男に渡し、彼は食べていたものを彼女へ渡す。その際優しく頭を撫でられたサニワは、とても嬉しそうに目を細めていた。
「うぇえええええ⁉︎ サニワって笑うんだ‼︎」
「見てお兄ちゃん、あのサニワさんが笑ってるよ! 隣のお兄さんもすっごくかっこいー‼︎」
「そうね……。隣のお兄さん、すっごくイケメンね」
「あ、あれ? 少々お待ちくださいね……」
こんのすけは慌ててほのぼのとした動画再生を終了し、今度はゲッコウガが変身していた戦闘場面を写す。
その際、しれっと訂正を入れた。兄だと思われていた人物は実は刀剣男士であり、そもそも人間ではない存在であるということを。
オカルトにはやや否定気味のシトロンも、なぜか納得できてしまう不思議さである。
「あぁ、これですね! あと訂正させていただきますが、隣に座っていらっしゃるのは主さまのご兄弟ではなく、
「え! じゃあこのお兄さん、人間じゃないの⁉︎ 神様なの⁉︎ すごーい‼︎」
「……僕は今まで、科学的なものは信じないタイプでしたが、すとんと腑に落ちる不思議な感覚です」
「あと、主さまはこっちが素ですよ。基本的に性格はお優しくておっとりで、ふわっふわしてらっしゃいます」
「あー、それは何かわかる! サニワのポケモン、皆サニワにすっげー懐いてるもんな!」
「とりあえず話元に戻しましょうね」
録画していたゲッコウガの変化したシーンを写す。その中で傾向としてあったのが、変化するのはバトル時のみということ。ゲッコウガの姿が、主人であるサトシの意匠に似ていること。
またエスパータイプの使い手・ゴジカが予言した内容もあり、導き出された仮説は、サトシとゲッコウガに何らかの心理的要因———サトシとゲッコウガの気持ちがシンクロする———が関わり、あの力を引き出しているということだ。
これは刀剣男士の話なので参考程度にしかならないのだが、一定の練度に達した刀剣男士は「修業」を行う。刀剣男士は何百年という自分の過去を振り返り、主への愛を再確認する。
そして修業を経た刀剣男士は、主への信頼、忠誠などが更に深まり、力が桁違いに増すという。
「刀剣男士は付喪神という存在ではありますが、心理的に主人である審神者様に依存しているという点は一緒だと思うんです。この世界のメガシンカも、トレーナーとの『絆』がないと上手く出来ないようですから」
「では、早速実験していきましょう!」
そう言ってシトロンが取り出した機械を、サトシとゲッコウガの手首にそれぞれ装着する。
変化中のサトシとゲッコウガの心拍数や脳波、変化した際のサトシの反応など、さまざまな項目をデータ化・それを記録するという優れものだ。
今までの発明品を鑑みると、耐久性の問題で一度か二度ほどしか測定できなさそうだが、それでも利用する価値は十二分にある。
早速試しにサトシとシトロンとのバトルが開始された。ところがしばらく経っても、なかなか変化が起きる気配はない。今日は変化しない日なのか。一同が一瞬諦めかけた時、プニちゃんを咥えたこんのすけが物陰に隠れた。
「君と会うと、いつもバトルの最中だ」
「アラン!」
ポケモンセンターに訪れたアランが注目したのは、サトシが装着しているバトルパルス測定器だ。シトロンは測定に集中するため、相手をアランが務める運びとなった。
そうと決まれば、善は急げ。ゲッコウガとレントラーを回復させるため、ジョーイさんへ預た。その間にもバトルで時間を潰すつもりのようで、サトシたちはバトルフィールドへ戻ってくる。
物陰に隠れていたこんのすけはプニちゃんを自分の背に隠しながら、バトルジャンキーを呆れたように見詰めていた。