第37話

 こんのすけがサトシたちの旅に加わってから、しばらく経過した頃。八つ目のバッジを手に入れるため、エイセツシティへ向かっていた。

 その道中、ショータと再会したサトシは、早速彼とバトルするようだ。ギャラリーはバトルフィールドの傍に設置しているベンチに腰を下ろす。

 ショータはヒトツキを、サトシはパートナーであるピカチュウを繰り出した。ショータのヒトツキを目にした途端、こんのすけのくりくりとした目が点に変わる。


「あのポケモンは……主さまが見たらどう思われるのでしょうか?」
「こんのすけ? どうしたんだい?」
「いえ、主さまがあのポケモン……ヒトツキを見た際、きっと一緒に遊びたがるだろうと思いまして」


 サニワは跋扈する歴史修正主義者を討伐するため、刀の付喪神———刀剣男士———と共に、本丸という異空間で暮らしていた。そのせいか、コマタナやエアームドなど鋭い切れ味の刃を持つポケモンに対し、非常に興味を抱く傾向が強い。

 以前イッシュ地方を旅していた時、ドラゴンマスターを目指すアイリスのライバルであり、自称ドラゴンバスターであるラングレーがサトシとバトルする機会があった。
 ラングレーのコマタナを見た途端、サニワはいつも死んだ魚のような目をしていた深紅の双眸をキラキラと輝かせていたのだ。そのあまりにも鋭い切れ味に触れてもいいかと尋ねていたが、タイミングを逃し触ることは叶わなかった。もしも触っていたら全身裂傷・大量出血のあまり入院不可避の事態に陥っていたことだろう。

 そのままバトルは着々と進んでいく。ショータの切り札は最終進化したジュカインだ。それに対し、サトシは相性不利なゲッコウガをバトルへ送り出す。
 ショータはサトシを目標としている。ゲッコウガの戦い方についてもじっくり研究していた。
 ゲッコウガは一気に敵の懐に入り込み、至近距離で一気に攻め落とす接近戦が得意としている。近づかれる前に遠距離から攻撃する対策を立てていた。
 相性も相まって、ショータの方に追い風が吹いている状態。だがサトシは、相性をものともせずに機転を利かせ、逆転勝利をもぎ取るスタイルだ。


「ゲッコウガ、まだまだやれるよな! この勝負、絶対に勝つぞ‼︎」


 バトルフィールドに響き渡るサトシの声援。それがきっかけとなり、ゲッコウガは覚醒する。頭部にはサトシの髪や帽子を彷彿とさせる意匠となり、全体に水を纏う姿となった。
 見たことのない現象にショータとジュカインは困惑しつつも、兜の緒を締め直すように相手を見据えた。


「どうなってんのコレ……。ジュカイン、気を引き締めていきましょう!」
「燕返し‼︎」


 素早さが格段に上昇し、一気に距離を詰めたゲッコウガ。威力も跳ね上がった燕返しをジュカインに放つ。
 草に飛行技は効果が抜群ということもあり、一発でジュカインは壁まで吹き飛び、一気に戦闘不能まで追い込まれた。


「ジュカイン戦闘不能! ゲッコウガの勝ち! よって勝者サトシ‼︎」


 変身が解除され、ゲッコウガとサトシはその場に立っていられず、地面に腰を下ろす。
 その勝負の一部始終を、じっと眺めていた少年の。こんのすけは彼を一瞥すると、ユリーカの元に駆け寄る。


「デデンネさま、場所失礼しますねー」
「ででね?」
「あれ、こんのすけもポシェット入るの?」


 ユリーカのポシェットからデデンネをさらっと追い出し、器用に蓋を手繰り寄せて隠す。基本的に外に出ているこんのすけにポシェットのサイズが追いついておらず、はち切れんばかりにぱんぱんな状態になっていた。

 謎の現象に興味津々なショータは瀕死になったジュカインをボールへ戻すと、手帖を手にぐいぐい質問する。
 だがゲッコウガはもちろん、サトシ自身も何があったのかわからない。わかるのは、ゲッコウガとサトシの感覚が共有されること、バトル状態の時のみあの状態になること、なった後は非常に疲労が溜まることだけ。
 まるでゲッコウガと同一人物になるような不思議な感覚だが、本人は「なれたらなれたで面白そうだ」と楽観的だ。

 この世界の人間はどうも楽観視するきらいがあるようだ。サトシはまだ十歳の子ども。彼の負担にならないといいが。
 こんのすけはセレナのブラッシングを受けながら、楽しそうに談笑するサトシを一瞥した。
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