第38話

 カロス地方ミアレシティ。カロス地方の中で最も栄えているこの大都会で、カロスリーグ決勝戦が行われていた。
 頂上決戦はサトシとアランによる一騎打ちとなり、僅差でアランが勝利をもぎ取った。

 決勝戦での激闘が終われば、ともに高みを目指す仲間へ戻る。サトシの小麦色の肌と、アランの白い手が交わる。握手を交わし、二人は健闘を讃える閉会式のため、選手の控室へ戻っていった。

 敗者のサトシには旅の仲間や友人から健闘を讃えられる。対照的に、勝者のアランを待っていたのは、ぬいぐるみのようにちょこんと座る狐が一匹。


「アランさま。この度はカロスリーグ優勝、誠におめでとうございます」
「……このバトルでサトシたちは、俺たちを成長させてくれた」
「そのようですね。今後の予定はどうされるおつもりで?」
「また、メガシンカエネルギーを集めようと思ってる」


 フラダリ代表のために。世界平和のために。そう答えるアランの表情は、これまで以上に柔らかい。
 ところが、こんのすけはそのことについては何も喋ることはない。帰ってきたのは、「そうですか」というたった五文字。相槌の如き返答だけだった。

 そして閉幕式・授賞式の準備が整い、表彰台に登壇したアランが、カロス地方チャンピオンであるカルネから優勝トロフィーを授与される頃。フレア団幹部兼科学者クセロシキと、代表のフラダリはミアレのシンボルであるプリズムタワーの上に登っていた。
 彼の視線の先には、洗脳されて赤色に染まったジガルデ・コア———プニちゃんの片割れ———の姿。

 思考が人間に対する憎悪に満ちたジガルデ・コアはセルを自分の元へ結集させる。すると、触手のように蠢く大木の如き蔦が、ミアレジムの地中から飛び出し、街を破壊し始めたのだ。
 突如始まった未曾有の事態に、人々はただ逃げ惑うのみ。衝撃的な光景をビルの上から眺めていたのは、シトロンが作り上げたロボット・シトロイドと、シトロンの父親であるリモーネだった。


「この夜の、あらゆるものが生まれ変わる……美しい世界に!」


 惨劇はミアレジムを中心としていたが、それはカロスリーグ開催スタジアムも変わらない。突如現れた謎の大木に、スタジアムは混乱を極める。
 そんな大混乱の最中、こんのすけはアランの元へ駆け出し、プニちゃんもユリーカのポシェットから飛び出した。


「あ、待ってプニちゃん!」
「ユリーカ!」


 スタジアムの所々から黒煙がもくもくと立ち昇る中、ユリーカは一目散に駆け出していくプニちゃんを追いかけ、シトロンとセレナはユリーカを追いかけた。


「あぁ……。遂に、始まってしまいましたか……」


 樹木の触手を躱しつつ、アランの元へ全速力で走り出したこんのすけ。主人が予知していた狂気が幕を開けたこと、それを回避できなかったこと。心の中で眠り続ける主人に詫びながら、必死に外へ走っていった。

 サトシたちは外に出て状況を確認する。ミアレジムのあるプリズムタワーを中心に、謎の蔦の発生を伝える放送が流れ、市民に非難を促していた。


「皆さま、ご無事ですか⁉︎」
「こんのすけ! 無事だったか!」
「マノンは⁉︎」
「申し訳ありませんが、マノンさまの居場所は……。ただ僕がわかることは、主さまの予知していた事態が始まってしまったようです」
「何だって……⁉︎」
「恐らく、この蔦はジガルデの仕業でしょう。プニちゃん……いえ、もう一体のジガルデ・コアはこの事態を収束させるために、プリズムタワーへ向かったものと思われます」


 こんのすけの言葉を聞いたユリーカは、一目散にプリズムタワーへ向かって駆け出した。慌ててシトロンとセレナが後を追いかけ、アランとサトシ、そしてこんのすけはマノンの捜索に当たるため、二手に分かれた。
 その際、シトロンから通信機を渡される。発生する電波はあまり強くないものの、こんのすけの話を聞いた際に作っておいたものだ。
 通信機を受け取ったサトシ、そしてアランはユリーカたちと逆の方向へ走り出した。

 混乱を極める最中、ジュンサーたちが避難誘導を行っていた。そこへ、必死に避難する民衆を蔦が襲う。
 逃げ遅れた男へ蔦が接触する直前、高威力のシャドーボールが蔦へ炸裂。蔦は叩き折られたように地面へ撃墜された後、木端微塵に砕け散った。


「怪我はない?」


 シャドーボールを放ったのは、カロスチャンピオン・カルネのパートナーであるサーナイトだ。カルネの他にも、カロスリーグに出場していたショータやサナ、ティエルノ、トロバたちがポケモンの力を借りて、避難経路の確保などに協力していた。

 一方、変装したロケット団の取材に応じていたのは四天王パキラ。
 この状況に、フラダリの狂気にやっと気がついた彼女は、一方的に取材の打ち切りを申し出ると、彼がいるであろうプリズムタワーへ向かっていった。


「取材はおしまいよ。もう自由にしていいわ。……ちょっと大事なことを思い出したの」


 謎の事態に見舞われ、取材していたパキラには勝手に取材を打ち切られたロケット団。彼女への不満は尽きないものの、今自分たちがすべきことはわかっている。


「アタシに考えがあるわ! カメラ!」
「おう!」


 コジロウがカメラを回し、ニャースがマイクを握り、ムサシがカメラの前へ躍り出る。この緊迫した事態を、緊急生中継するのだった。
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