第36話

 八つ目のジムバッジを求め、エイセツシティへ向かうサトシ。
 イッシュ地方のライモンシティでサニワと別れた後、一種リーグに挑戦。そしてカロスリーグにも挑戦するべく、カロスで出逢った仲間とともに旅していた。

 そんな旅の道中、森の中で小休憩を取っていた彼ら。旅の仲間の一人であるユリーカは、サトシのピカチュウ、そして自身のキープであるデデンネと一緒に枯れ葉のベッドで遊んでいる。
 まだまだ幼いユリーカは、ポケモンを所持するには早い。だから彼女の兄であり、ミアレシティのジムリーダーを務めるシトロンに頼んで、彼にゲットしてもらったデデンネを「キープ」しているのだ。

 デデンネは基本的に、移動中は彼女の黄色いポシェットの中に入っている。だがこの日は、そこには既に先約がいた。
 緑色の、デデンネよりも一回りほど小さな、柔い感触の何か。


「わあ、動いた!」
「でねね!」


 何かはすやすやと眠っていたが、目前で目を輝かせるユリーカを見ると慌ててポシェットから逃げ出した。
 ところが好奇心旺盛な幼女がそれを許すはずもなく追い掛け回す。サトシの股の間を潜り、ユリーカとセレナの顔面に衝突。宙を浮いた何かを見事ユリーカがキャッチ。

 始めて目にするポケモンに、サトシとセレナが図鑑を翳すも、該当するデータが存在しない。一同は新種のポケモンに、冷や汗をかいたり困惑したりしているが、ユリーカだけは動じずに謎のポケモンを抱っこしている。
 ユリーカは緑色の謎のポケモンを「ぷにぷにしているから」ということで「プニちゃん」と名付け、それを世話をすることに決めた。

 
「えぇ⁉︎ まだ何もわからないことだらけだよ⁉︎」
「お世話してたらわかるよ!」


 デデンネがキープポケモンの先輩風を吹かせていると、茂みの向こう側から足音が聞こえてきた。それとともに伝わる、微かな地響き。
 何事だとその方向へ一同が顔を向けると、そこには猛スピードで地を駆けるド—ドリオの群れだ。
 慌てて回避するサトシたち。その隙にプニちゃんはユリーカの腕から逃げ出す。彼が逃げた先には、隈取りを施した狐がいた。プニちゃんを口に咥えて走り出す狐は野生だからか、毛並みはボサボサで、身体の所々に傷を負っていた。


(……かたじけない)
「いえ、主さまのご命令ですので。あの方たちは、正義感の強い善良な方ですよ。ともに行動することをお勧めします」
(そうか……だが、人間はお前の主人しか信用できぬ。彼らと離れた場所に向かって欲しい)


 狐はプニちゃんを背中に乗せて大地を駆ける。どんどんサトシたちから離れ、周囲の景色は木々が生い茂った森の中ではなく、岩肌が露出した岩山に変わっていた。
 ここまで来たなら恐らく安全だろうとこんのすけは判断したが、サトシたちとは、また異なる気配を感じ、咄嗟にプニちゃんを背に庇う。

 周囲を取り巻くのは、赤いスーツにサングラスを身につけた集団とデルビルたち。デザインの異なる赤色の格好の女はドラピオンを連れていた。


「あらあら……逃げるだなんて悪い子ね!」


 女のドラピオンは彼らにミサイル針を放つ。こんのすけが慌てて結界を張るが、ミサイル針の威力は凄まじく、結界は破られ、土煙が昇った。
 こんのすけは吹き飛ばされて地面に伏せ、プニちゃんはドラピオンに捕らえられてしまった。


「プニちゃん!」
「何してんだお前ら! そのポケモンを離せ!」


 騒ぎを聞きつけたのか、サトシたちの姿がそこにあった。ボロボロになったこんのすけにとって、彼らは救世主のように思えたのだ。
 サトシもまさかの再会に驚きを隠せない。だが、それよりも疑問の方が先に浮上した。こんのすけは満身創痍の状態であり、何よりも常に一緒だった、彼が心から慕う主人の姿はそこにはない。


「さ、サトシさま……うぅっ……」
「こんのすけ⁉︎ どうしてカロスに⁉︎ サニワは⁉︎」
「お助けください、僕の力では……主さまの約束を、果たすことができません……!」
「へえ、もう目が覚めるかわからないのに? 随分と律義なことね!」


 女の指示に従い、躊躇なく攻撃を仕掛けるドラピオン。ピカチュウが10万ボルトで相殺し、緑髪の少年のパートナーらしきジュプトルはリーフストームで攻撃。
 効果は今一つではあるが、その威力は大柄なドラピオンを吹き飛ばし、その手で拘束していたプニちゃんとこんのすけが自由の身になる。
 宙に投げ飛ばされたプニちゃんはユリーカが、こんのすけはシトロンが受け止めた。

 比較的サトシたちの方に追い風が吹いていたが、相手はまだ敵意を満たしたポケモンたちがいる。こんのすけのアドバイスにより、相手の隙を見てサトシたちは撤退した。
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