第34話

 未だに続く激戦の中、攻撃の雨を掻い潜りながら指揮を執り続けるサニワ。ラティアスのミストボールで撹乱を続けながら、メガサーナイトによる猛攻を続けていた。

 こちらの猛攻をびくともしない、鬼のような頑丈さ。さながら要塞だ。だがここを突破されてしまえば、最悪世界は崩壊する。言うなれば最終防衛線、例えるとするならばマジノ線だ。


『マジノ要塞のように、結果的に崩壊しなければ良いんだがな……! シャドーボール‼︎』


 サーナイトが一気に複数のシャドーボールを生み出し、グラードンへぶつける。それでもグラードンは倒れるどころか怯む気配すら見せない。
 グラードン繰り出した噴煙を、ラティアスは必死に躱している。さすがに相手と接触する物理技はサニワの危険度が一気に跳ね上がるため、ミストボールと竜の波動で対応していた。


「メタグロス、コメットパンチ!」


 一方、ダイゴとメガメタグロスもカイオーガと応戦。どちらも一歩も引かぬ勢いだが、カイオーガのヒレに弾き飛ばされてしまった。しかもその方向には、応戦するサニワとラティアスが。


『高度を下げろ!』


 猛スピードで飛んできたメガメタグロスを、咄嗟に高度を下げることで衝突を防いだ。だが、その隙を突いたグラードンの攻撃が炸裂する。
 一気に海面すれすれまで降下したせいで、断崖の剣がラティアスへ直撃。その衝撃で爆発が発生し、メガサーナイトのメガシンカは解除された。


「サニワちゃんッ‼︎」
「あ、あぁ……主さま……‼︎」


 異世界出身のサニワは、ポケモンが存在しない世界の人間だからか、この世界の人間に比べて耐久力が極端に低い。生存は絶望的だった。
 だが不幸中の幸いか、咄嗟に展開した結界のお陰と、間に挟まれたラティアスが緩衝材となったため、五体満足の状態で分厚い氷の上を転がった。身に纏っている軍服や背中に乗っていたラティアスは血で赤く汚れ、軍服に至ってはボロ雑巾と化していた。


「……アラン。悪いけれど、サニワちゃんとラティアス、サーナイトをこのヘリまで移動させてくれないか……。グラードンとカイオーガはボクが引きつけておくから」
「もちろんです。リザードン、頼む」
「ダメだよ! ……アラン、見たでしょ⁉︎ 死んじゃうよ……!」


 必死に引き留めるアランを引き留めるマノン。目の前であんなに衝撃的なことが起きたのだ。無理もない。
 だが、そんな彼女のズボンの裾を、くいくいと引っ張る存在がいた。こんのすけだった。


「お願いです、マノンさま……主さまの遺体を回収させてください。ご遺髪の一本でも構いません。貴女のお気持ちは非常によくわかります。ですが……このままでは、主さまをまともに弔うことも、できないんです……」
「でも……」
「……行くぞ、リザードン」


 アランはリザードンをメガシンカさせると、その背中に跳び乗った。目標地点は、サニワの倒れている場所だ。

 メガシンカを解いたサニワのサーナイトは、先にサイコキネシスでラティアスをヘリまで移動させ、比較的安全な場所で主人を介抱していた。
 何とか目標地点に到着したアランは、完全に意識を失っているサニワの容体を確認する。出血量はかなりのものだが、奇跡的に自発呼吸を行っていた。
 アランはサニワのサーナイトによるテレパシー能力を通じ、ダイゴへサニワの状態を伝えた。


「アラン……サニワちゃんは、意識を失っているだけ……だよね。死んでないよね……」
『呼吸は確認した。だが、早く治療しないと……』


 アランの声に気付いたのか、サニワの目がうっすらと開かれる。意識が戻ったとアランが安堵したのも束の間、その口から吐き出されたのは血液だった。
 咳き込むように吐き出された大量の血液は、アランの服を赤黒く染まっていく。


「マズいな、吐血してるぞ……!」
「急いでヘリまで移動させてくれ! 早く!」
「わかってる!」


 サーナイトをボールへ戻し、サニワの幼い身体を抱き上げる。
 恐らくマノンよりも小さいであろう身体だが、彼女は自分自身を軍人だと告げていた。こんな幼い子どもが、犠牲になっていいはずがない。アランはぎゅっと唇を噛みしめた。

 リザードンの背中に再び騎乗したその時、巨石が遂に実体化する。それとともに、ずっと空を覆っていた黒雲から、光が差し込んだ。

 メガレックウザが、巨石を狙って襲来したのである。もちろんそれを指を咥えて眺めるはずもなく、グラードンとカイオーガがレックウザ目がけて攻撃を仕掛けた。
 伝説のポケモンによる激しい攻撃の応酬に、なかなかリザードンは飛び立つことができない。もしも攻撃が当たれば、サニワの命が刈り取られるだろう。ただその場で待つしかできなかった。
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