第34話

 デボンから飛び立ったヘリコプターはダイゴとサニワ、そして彼らの後をこっそりとついてきたマノンたちを乗せて、虹色の巨石の元へ向かっていた。
 サニワはただでさえ白い顔色を更に悪くさせ、座席部分で寝ころんでいた。


「サニワちゃん、大丈夫かい?」
「……あんまり」
「基本的には、移動手段は転送装置頼りでしたからねぇ……。基本的に乗り物には慣れていないのでしょう。ポケモンの背に乗る場合はそこまで問題はないようですが……」
「いや本当に大丈夫?」


 目標地点に到達し、グラードンをヘリ内部から目視で捕捉したダイゴは、横になっていたサニワを優しく揺さぶり起こした。
 グラードンの周囲にはマスコミや警察などのヘリが周囲を飛び交っているが、グラードンはそれを気にも留めないように一直線に突き進む。


「サニワちゃん、見えるかい? あれがグラードンだ」
「……大きい」
「そうだね!」
『何か……ダイゴさんが全肯定botに思えてきてしまった』
「奇遇ですね、僕もです」


 内心呆れた様子でダイゴを見詰めたサニワだったが、それも束の間。すぐにゲンシカイキしたカイオーガが海上に現れ、グラードンと衝突。
 激しい技のぶつかり合いは、周囲のヘリを撃墜せんばかりの衝撃を発生させる。それはサニワたちの搭乗しているヘリも例外ではなく、ダイゴが立っているだけでやっとの状態だ。
 身体の小さなサニワ、そしてこんのすけはその衝撃で吹き飛ばされ、地面に強い力で叩きつけられたゴム鞠の如くヘリの中を転がった。


「サニワちゃん! 大丈夫かい⁉︎ 痛かったねー……よしよし」
「……ダイゴさん」
「なに? どうしたんだい?」
「うるさい」


 サニワによる辛辣な言葉はダイゴに効果抜群だった。あからさまに落ち込むダイゴを余所に、サニワはじっと煌めいている虚空を見詰める。

 輝く空間に強大なエネルギー反応を検知しており、虹色の巨石は恐らくここに再結晶化して実体を持つことだろう。それがグラードンもしくはカイオーガの手に渡れば、この世界の崩壊は目に見えている。


「全く……仕方ない。ボクはカイオーガを引き受けよう。サニワちゃんはグラードンをお願いするよ」
「……わかった」


 ちらりと窓の外から視線を逸らせば、とあるポケモンが飛んでいた。それを確認すると、サニワはサーナイトをから出した。
 サーナイトのテレパシー能力でダイゴと会話をするのは何気に初めてのことだったので、軍人らしく喋るサニワにダイゴは思わず三度見する。


『ダイゴ様、最終的な指揮を願います。私は現場での統率もとい撹乱を行いますので』
「サニワちゃん難しい言葉話せるんだ⁉︎ 何だか意外だなあ……。サニワさんって呼んだ方が良い?」
『ダイゴ様のお好きなようにお呼びください。ああ、ダイゴ様はお忘れでしょうが、小官は子どもである前に、一介の軍人であります。それにこちらの方が意志疎通を図りやすいでしょう? それにこちらの世界の言葉が拙い小官では、全体的に細やかな采配を振るなど無謀かと考えます』
「なるほどね。正直、サニワちゃんの方がボクより冷静な判断ができそうだけど……良いのかい?」
『えぇ、もちろん。この世界については小官は乳飲み子同然ですから。それに、小官は基本的に最前線で指揮を執る方が性に合っております。あと……現在搭乗しているヘリ内部、物資の保管庫に遭難者を若干二人確認しましたので、後で救助を願います』


 言いたいことだけ伝えたサニワは、サーナイトをメガシンカさせると、ヘリの扉部分をこじ開けた。そこからサーナイトとともにヘリから飛び降りる。
 まさかの行動にダイゴは手を伸ばすが、既にサニワの身体は空を舞う。


「サニワちゃーーーーーーーーーーん!」 


 だがサニワの身体は、途中で止まった。何かの上に乗っているようだ。
 サニワを乗せた何かはダイゴの近くまで上昇すると、隠していたその姿を現した。そのポケモンに、ダイゴはじっと息を飲む。

 こっそりと隠れていたアランとマノン、そしてハリマロンもそのポケモンを初めて見るらしく、窓越しで眺めていた。


「ラ……ラティアス……!」
『ラティアス、ミストボールをグラードンの視界に発射! 濃霧で撹乱するんだ! サーナイトはその隙に瞑想で能力を上昇!』
「ダイゴさま! ぼけーっとしてないで指示出してください! あとここ開けてくださいよ!」


 こんのすけの声で我に返ったダイゴはメタグロスをメガシンカさせると、後部へと続く扉を開ける。そこにはサニワの告げた通り、アランとマノン、そしてハリマロンの姿があった。


「二人とも、なぜここに……」
「サニワさんにカナズミで待っててって言われたけど、あたしたち心配で……」
「おっと!」
「きゃああ!」


 カイオーガの放った根源の波動がメガメタグロスへ直撃し、その衝撃波でヘリが大きく揺れる。ダイゴの意識はすぐにカイオーガの方へ戻された。
 その隙にグラードンが巨石へ手を伸ばすが、サーナイトのムーンフォースで攻撃する。
2/4ページ
スキ