第4話

 一旦ポケモンセンターに移動し、コーンは申し訳なさそうにサニワの傷の手当てをする。
 妖狐もポケモンも、主人を心配そうに見つめている。だが、裂傷に慣れているサニワにとっては無傷も同然だった。


「さぞお痛かったでしょう。……貴女の腕に怪我を負わせてしまったのは、コーンの責任です。申し訳ありませんでした」
「……コーン、責任、違う。……メガシンカ、させた、わたし」


 確かに、ジム内部を見渡すと女性のファンが多く、きゃあきゃあと黄色い声で埋め尽くされていた。熱狂的なファンがいてもおかしくはない状況だったのだ。
 そんな四面楚歌の状況で、この地方ではマイナーなメガシンカを使用するのは「今のはズルだ! 反則だ!」と非難轟々になっても致し方ない。自分も、もっと考慮すべきだったと猛省した。

 サニワが小さな溜息を零す。すると、一向に店に戻らない兄弟を探しに、デントとポッドがポケモンセンターへ訪れた。
 溢れんばかりに傷口から流血し続けているそれを目に入れた二人は、うっわぁ、と驚きの……否、ドン引きした声を漏らす。


「おいコーン! お前、いきなりジムを飛び出したと思ったら、いつまで店を放ったらかし、に……」
「痛そう……! 一体どうしたんだい!?」
「こんのすけと彼女のキュウコンが全力疾走していたのが見えましたから、只事ではないと感じて追いかけたんです。案の定……コーン達のファンクラブの女性が、彼女のバッジを略奪しようとして、怪我を負わせていたんですよ」
「そうだったのか……。痛い思いをさせてごめんね」
「……だいじょぶ。……唾、塗る。すぐ、治る」
「全然唾塗るとかのレベルじゃねぇだろ、それ……」


 そろそろ傷も癒えた頃なのでシッポウシティに向けて出発しようと考えたサニワはよっこいしょっと、と掛け声を声に出して立ち上がった。
 すると三つ子のジムリーダーたちは、心配そうに引き留める。こんな大怪我をしたのだから、傷を治癒してからでも遅くはない、と。


「も、もう行くのか?」
「まだ完全に止血できていませんよ!」
「……だいじょぶ。痛い、ない」
「たとえ痛くなくても、傷が原因で病気になることもありますから、ちゃんと止血しましょう。ちょっと痛いかもしれませんが、我慢してくださいね」
「コーン……君、いつこの子の母親になったんだい」
「産んだ覚えはないんですがね」
「あったら怖いよ」


 気丈に振る舞うサニワを優しく言いくるめ、コーンは滲んだ包帯を取り換えた。出血量は多いものの傷自体はそこまで深くないようで、止血が終われば問題ないと(ジョーイさんから)許可を得てはいる。
 傷口が塞がり次第、すぐに次の目的地へ出発する予定を立てていた。


「怪我を負わせてしまって申し訳ありませんでした……。こちら、うちの店で使用している茶葉とお水です。どうぞ受け取ってください」
「……でも、さっき、わたしの、責任」

 
 ジムリーダー三兄弟が手渡したのは、店で使用している銘柄のミネラルウォーターや茶葉だ。しかし、サニワは慌てて手を振って受取拒否の意向を示す。
 だがそれも想定の範囲内だったのか、コーンの微笑が更に深いものに代わり、その分圧も強くなる。


「では餞(はなむけ)、ということで。ぜひ受け取ってください」
「……でも」
「受 け 取 っ て く だ さ い」
「ひぇ」


 サニワたちの目に映ったのは、般若……否、真蛇(しんじゃ)を従えたコーンの姿。
 思わず戦慄したサニワは、ジムリーダーからの餞別をありがたく受け取り、彼らに別れを告げてサンヨウシティを出発したのだった。
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