第29話
思わぬビッグスターの登場に、ライモンジムは騒然となっていた。
コンテストマスターであるミクリは、ポケモンコンテストが普及していないイッシュ地方でもかなりの有名人。その知名度は、デントとアイリスの反応からも伺えた。
そんな彼の小脇に抱えられたサニワは、目をぱちくりとさせている。それ以外は全くの無表情だが、それから読み取るに完全に思考が停止してしまっているらしい。
「なあそれどういう状況?」
「どういう状況か聞かれてもね……。サニワくんが私を見た途端、完全にフリーズしてしまってね。こんのすけくん、通訳……というか解説してくれるかい?」
「……えぇと、その……ミクリさまは男性でいらっしゃいますよね。その、主さまはてっきり女性だったと勘違いしていたようでして。その衝撃でフリーズしている状態です」
「なるほど。私の美しさの前では、性別なんて関係ない。そういうわけだね」
「もうそういうことでいいですよぅ」
面倒なのでこんのすけは訂正を放棄した。ダンデにしろキバナにしろこのミクリにしろ、サニワの周囲に集まる成人済みの男どもはまともな奴がいないのだろうか。こんのすけは内心溜め息を吐いた。
デント? 一応十代だから(こんのすけにしては)ややまともな部類に入っている。が、やはり管狐にとって彼は変人だった。おもしれー男筆頭である。
だが、ここずっと話を続けるわけにはいかない。サニワたちは一旦ポケモンセンターに移動することにした。
移動する間や、移動してミクリの隣に座った後も、サニワはじーっと自信の美しさに自惚れている彼を穴が開きそうなほどに凝視している。それにはとある理由があった。
「『鬼丸?』 ミクリさん、ゆめ、見た? へんな、ゆめ」
「……変な夢? あぁ、頭に角を生やしたワイルドな男の人が出てきたけど」
ミクリの返答に、サニワはカッと目を見開いた。
今の今までまともな感情すら顕にしなかった彼女の反応に、一同は驚愕した。だが、彼女の言葉に更に戸惑い、驚くことになる。
「ずるい! ミクリさんずるい! わたし、『鬼丸』、話したい!」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎」
「その……ミクリさまの夢に現れたのは、恐らく主さまの刀剣男士であり、天下五剣の一振り、鬼丸である可能性が高いと思われます。付喪神といえど、彼らは神の末席にあたります。夢渡りなど容易いことでしょう」
「神様、ねぇ……あぁでも、そう言えば彼が夢に出てきてから、肌艶が良くなったとは思うけれど。でもさすがにサニワちゃんには負けるかな」
「幼女に肌艶で勝てるわけないでしょ」
ミクリは自身の自慢の頬をするりと撫でた後、サニワの頬も同様に撫でる。そして頬を指でぷにぷに突っついた。
幼女特有のぷにぷにとした柔肌を堪能し、ミクリの顔はとろとろに蕩けていた。だが対するサニワの表情は相変わらずの仏頂面に戻っていたが。
ところが刀剣男士という単語を聞いたキバナとダンデの表情は打って変わり、眉間に皺が寄っている。彼らはサニワの夢であり、目標である「元の世界への帰還」に真っ向から反対した。
「駄目だ駄目だ! 彼らから散々酷い目に遭ったんだろう?」
「もう一度顔合わせなんてしたら、結果は目に見えてるって! また酷い目に遭いに行きたいのか⁉︎」
「ですから! それは別人だって再三言ってるでしょうが‼︎」
なんでこんなに話が通じないの? 別の言語使ってるの?
こんのすけの表情がぐぬぬと苦虫を噛み潰したそれに変わり、サニワの眉間は嫌悪を全く隠すことなく、数本の皺が寄っていた。それを見たミクリは苦笑いを浮かべながら、サニワの頭を優しく撫でる。それでも彼女の表情が元の仏頂面に戻ることはなかった。
「……それで、本題に入らせてもらうけれど。サニワちゃん、ダイゴにキミの力を貸して欲しいんだ。ほら、前にシンオウ地方でアンノーン文字を解読しただろう?」
シンオウ地方はズイの遺跡。牧歌的な風景が広がるズイタウンから近いこの遺跡には、アンノーン文字という古代文字がある。
アンノーン文字は、サニワの世界のアルファベットによく似た文字だ。最も似ている形のアルファベットを当て嵌めるとあら不思議、すらすらと解読が出来ちゃった! ということがあった。
その際、まだ調査段階のズイの遺跡にまだ幼いサニワをたった一人で放り込むはずもなく、チャンピオン兼考古学者のシロナが同行していた。というよりもシロナにサニワが随行していたのだ。
「その時のことをシロナが覚えていてね。と、いうよりも衝撃的過ぎて忘れられなかったの方が正しいかな? その話を聞いたダイゴが、ぜひサニワちゃんの力を借りたいそうだよ。とりあえず、ダイゴに連絡しようか」
ミクリは自身の携帯端末で連絡を取る。あらかじめスタンバイしていたのか、二コール目で応答した。チャンピオンかつ大企業の御曹司の彼のことだ、相当忙しいはずなのだが。
コンテストマスターであるミクリは、ポケモンコンテストが普及していないイッシュ地方でもかなりの有名人。その知名度は、デントとアイリスの反応からも伺えた。
そんな彼の小脇に抱えられたサニワは、目をぱちくりとさせている。それ以外は全くの無表情だが、それから読み取るに完全に思考が停止してしまっているらしい。
「なあそれどういう状況?」
「どういう状況か聞かれてもね……。サニワくんが私を見た途端、完全にフリーズしてしまってね。こんのすけくん、通訳……というか解説してくれるかい?」
「……えぇと、その……ミクリさまは男性でいらっしゃいますよね。その、主さまはてっきり女性だったと勘違いしていたようでして。その衝撃でフリーズしている状態です」
「なるほど。私の美しさの前では、性別なんて関係ない。そういうわけだね」
「もうそういうことでいいですよぅ」
面倒なのでこんのすけは訂正を放棄した。ダンデにしろキバナにしろこのミクリにしろ、サニワの周囲に集まる成人済みの男どもはまともな奴がいないのだろうか。こんのすけは内心溜め息を吐いた。
デント? 一応十代だから(こんのすけにしては)ややまともな部類に入っている。が、やはり管狐にとって彼は変人だった。おもしれー男筆頭である。
だが、ここずっと話を続けるわけにはいかない。サニワたちは一旦ポケモンセンターに移動することにした。
移動する間や、移動してミクリの隣に座った後も、サニワはじーっと自信の美しさに自惚れている彼を穴が開きそうなほどに凝視している。それにはとある理由があった。
「『鬼丸?』 ミクリさん、ゆめ、見た? へんな、ゆめ」
「……変な夢? あぁ、頭に角を生やしたワイルドな男の人が出てきたけど」
ミクリの返答に、サニワはカッと目を見開いた。
今の今までまともな感情すら顕にしなかった彼女の反応に、一同は驚愕した。だが、彼女の言葉に更に戸惑い、驚くことになる。
「ずるい! ミクリさんずるい! わたし、『鬼丸』、話したい!」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎」
「その……ミクリさまの夢に現れたのは、恐らく主さまの刀剣男士であり、天下五剣の一振り、鬼丸である可能性が高いと思われます。付喪神といえど、彼らは神の末席にあたります。夢渡りなど容易いことでしょう」
「神様、ねぇ……あぁでも、そう言えば彼が夢に出てきてから、肌艶が良くなったとは思うけれど。でもさすがにサニワちゃんには負けるかな」
「幼女に肌艶で勝てるわけないでしょ」
ミクリは自身の自慢の頬をするりと撫でた後、サニワの頬も同様に撫でる。そして頬を指でぷにぷに突っついた。
幼女特有のぷにぷにとした柔肌を堪能し、ミクリの顔はとろとろに蕩けていた。だが対するサニワの表情は相変わらずの仏頂面に戻っていたが。
ところが刀剣男士という単語を聞いたキバナとダンデの表情は打って変わり、眉間に皺が寄っている。彼らはサニワの夢であり、目標である「元の世界への帰還」に真っ向から反対した。
「駄目だ駄目だ! 彼らから散々酷い目に遭ったんだろう?」
「もう一度顔合わせなんてしたら、結果は目に見えてるって! また酷い目に遭いに行きたいのか⁉︎」
「ですから! それは別人だって再三言ってるでしょうが‼︎」
なんでこんなに話が通じないの? 別の言語使ってるの?
こんのすけの表情がぐぬぬと苦虫を噛み潰したそれに変わり、サニワの眉間は嫌悪を全く隠すことなく、数本の皺が寄っていた。それを見たミクリは苦笑いを浮かべながら、サニワの頭を優しく撫でる。それでも彼女の表情が元の仏頂面に戻ることはなかった。
「……それで、本題に入らせてもらうけれど。サニワちゃん、ダイゴにキミの力を貸して欲しいんだ。ほら、前にシンオウ地方でアンノーン文字を解読しただろう?」
シンオウ地方はズイの遺跡。牧歌的な風景が広がるズイタウンから近いこの遺跡には、アンノーン文字という古代文字がある。
アンノーン文字は、サニワの世界のアルファベットによく似た文字だ。最も似ている形のアルファベットを当て嵌めるとあら不思議、すらすらと解読が出来ちゃった! ということがあった。
その際、まだ調査段階のズイの遺跡にまだ幼いサニワをたった一人で放り込むはずもなく、チャンピオン兼考古学者のシロナが同行していた。というよりもシロナにサニワが随行していたのだ。
「その時のことをシロナが覚えていてね。と、いうよりも衝撃的過ぎて忘れられなかったの方が正しいかな? その話を聞いたダイゴが、ぜひサニワちゃんの力を借りたいそうだよ。とりあえず、ダイゴに連絡しようか」
ミクリは自身の携帯端末で連絡を取る。あらかじめスタンバイしていたのか、二コール目で応答した。チャンピオンかつ大企業の御曹司の彼のことだ、相当忙しいはずなのだが。