第29話
安全バーが降りて、コースターがガタガタと動き出す。徐々にスピードが上がっていき、トンネルを抜けると、電飾が彩るテーマパークが下に広がっていた。
「さすが電気タイプのジムだ!」
「綺麗……!」
色とりどりに煌めく電飾にサトシたちがうっとりと見惚れているのも束の間。更にコースターのスピードが上昇し、高所から一気に急降下や一回転を繰り返す。コースターがバトルフィールドに到着した頃には、こんのすけはサニワの膝の上で目を回し、仰向けに寝転がっていた。いわゆるヘソ転という体勢だ。
そんな状態でも主人の体調を気づかうこんのすけは、まさに従者の鑑といえるだろう。
「うぎゅう……主さま、大丈夫ですか」
『自分は大丈夫だが……こんちゃん、かなり辛そうだな。休んでもいい……いや、休め』
こんのすけを抱き上げ背中を撫でると、目前のスポットライトが点灯。その中心には、カミツレが美しくポージングを決めて立っていた。
「ようこそ、ライモンジムへ! ごめんねサニワちゃん、さっきは驚かせちゃって」
「……ううん。こっちも、ごめんなさい。……ショー、台無し、しちゃった」
「良いのよ。むしろ多少のハプニングがあった方が面白いわ。……今みたいにね」
カミツレの言葉に反応するかのように、彼女の背後にあった扉が左右に開かれる。そこから登場した男たちの姿に、サニワは瞬時に般若の面を貼り付けた。
「久しぶりだな、サニワくん!」
「大変お久しゅうございます。ダンデさま、キバナさま。ガラル地方で活躍されている貴方がたが、なぜこちらに?」
「何って……このキバナ様が直々に、サニワをガラルに連れ戻しにきたんだよ」
「キミの気分転換になれば良いと思って、イッシュ地方の旅を許可したさ。だが……先日の報道を見た時、肝が冷えたんだ。さ、ガラルへ帰ろう」
『汚い手で触るな』
差し伸べられたダンデの手を叩き落としたサニワ。不愉快だった表情は更に歪められ、眉間には皺が刻み込まれている。だがサニワの放った暴言がダンデたち通じることはなく、キョトンと目を見開いていた。
キバナがワンパチのような人懐っこい笑みを浮かべ、仕方ないと言わんばかりにサニワへ手を伸ばすと、その手も即座に払い退ける。
サニワは表情を変えることなく一つのプレミアボールを手に取ると、中からサーナイトを呼び出した。
『やがみちゃん、悪いが通訳を頼む』
サーナイトはこくん、と頷くと、主人の指示に素直に従った。サニワの喋る内容が、サーナイトによって通訳されて頭の中へ響く。
『思い上がるなよ。自分は貴官らの顔も見たくない。同じ空気も吸いたくないから、要請を受け入れただけだ』
「サニワ⁉︎」
サニワの口から明かされた衝撃の事実に、そしてその口の悪さに、アイリスは困惑していた。
だがそれでも、ガラルチャンピオンと元ガラルチャンピオンとの言い争いは止まる気配すら見せず、更にヒートアップしていく。
「だが、キミは一度誘拐されたんだぞ! これ以上旅を続けるのは危険すぎる、やめたほうが良い!」
『戯れ言を……! 小官をこの世界に留めているのはそちらのエゴだろう! 親元から無理やり引き剥がす所業は、この世界では誘拐じゃないのか⁉︎』
「違うだろー? お前の場合誘拐じゃなくって保護って言うの。あんな危険な世界に、ガラルの英雄を放置するわけにはいかないからな」
『保護だ何だと宣 うが、それは貴官らの自己満足だ! 自分は今ここに宣言する。二度とガラルの地を踏むことはないだろう! それでも無理やり連行すると言うのであれば……今、ここで自害した方がマシだ‼︎』
「おーおー。威勢のいいことで」
『デント、包丁を貸してくれ』
「貸さないよ⁉︎」
サニワの毒交じりの訴えも、ダンデたちにとっては癇癪を起こす赤子のようなものにしか感じられないのか。ケタケタとキバナが笑い飛ばし、それが余計にサニワの火に油を注ぐ結果となっていた。
もしもサニワの手に銃のひとつでもあったなら、彼らの脳天に弾丸が貫通していたことだろう。それほどまでの怒りをサニワは抱いていた。
互いに一歩も意見を譲らない中、カミツレはとある提案を持ちかける。自分とのジムバトルを見てもらうことで、サニワがどれだけ成長したのかを見せつけてはどうか、と。
「それじゃ、カミツレさんに負けたらガラルへ帰るんだな」
「……いいぜ。ただし、サニワ。オマエはガラルのチャンピオンだ。そして相手はジムリーダー。負けはもちろんだが……オマエのポケモンが一体でも戦闘不能になったら、ガラルへ帰還する。それでいいな?」
『……良いだろう。少々勘違いしているようだから訂正しよう。ガラルは、自分の帰るべき場所ではない! 帰還する場所は、本丸ただひとつ‼』
サニワがじろりと大男二人を睨みつける。その深紅の双眸は、まるで憎悪の業火が、ごうごうと轟きながら燃え盛っているようだった。
「おいおい、そんな事言っちゃっていいのかよ! 相手はジムリーダーだぜ⁉︎」
「そうよ、サニワのポケモンが一体でも倒れたら……!」
『自分が負けると決まったわけではない。……ただ今回は、どうしても負けられないからな。あまり使用したくはなかったが、最終兵器を使用させてもらおう』
「公式ルールで使用可能なら、別に問題ないわ。バトルフィールドはあっちよ」
カミツレはダンデたちの向こう側を指差すと、扉が自動で開かれる。そこには、既にファンで満員御礼のバトルフィールドが展開されていた。
「さすが電気タイプのジムだ!」
「綺麗……!」
色とりどりに煌めく電飾にサトシたちがうっとりと見惚れているのも束の間。更にコースターのスピードが上昇し、高所から一気に急降下や一回転を繰り返す。コースターがバトルフィールドに到着した頃には、こんのすけはサニワの膝の上で目を回し、仰向けに寝転がっていた。いわゆるヘソ転という体勢だ。
そんな状態でも主人の体調を気づかうこんのすけは、まさに従者の鑑といえるだろう。
「うぎゅう……主さま、大丈夫ですか」
『自分は大丈夫だが……こんちゃん、かなり辛そうだな。休んでもいい……いや、休め』
こんのすけを抱き上げ背中を撫でると、目前のスポットライトが点灯。その中心には、カミツレが美しくポージングを決めて立っていた。
「ようこそ、ライモンジムへ! ごめんねサニワちゃん、さっきは驚かせちゃって」
「……ううん。こっちも、ごめんなさい。……ショー、台無し、しちゃった」
「良いのよ。むしろ多少のハプニングがあった方が面白いわ。……今みたいにね」
カミツレの言葉に反応するかのように、彼女の背後にあった扉が左右に開かれる。そこから登場した男たちの姿に、サニワは瞬時に般若の面を貼り付けた。
「久しぶりだな、サニワくん!」
「大変お久しゅうございます。ダンデさま、キバナさま。ガラル地方で活躍されている貴方がたが、なぜこちらに?」
「何って……このキバナ様が直々に、サニワをガラルに連れ戻しにきたんだよ」
「キミの気分転換になれば良いと思って、イッシュ地方の旅を許可したさ。だが……先日の報道を見た時、肝が冷えたんだ。さ、ガラルへ帰ろう」
『汚い手で触るな』
差し伸べられたダンデの手を叩き落としたサニワ。不愉快だった表情は更に歪められ、眉間には皺が刻み込まれている。だがサニワの放った暴言がダンデたち通じることはなく、キョトンと目を見開いていた。
キバナがワンパチのような人懐っこい笑みを浮かべ、仕方ないと言わんばかりにサニワへ手を伸ばすと、その手も即座に払い退ける。
サニワは表情を変えることなく一つのプレミアボールを手に取ると、中からサーナイトを呼び出した。
『やがみちゃん、悪いが通訳を頼む』
サーナイトはこくん、と頷くと、主人の指示に素直に従った。サニワの喋る内容が、サーナイトによって通訳されて頭の中へ響く。
『思い上がるなよ。自分は貴官らの顔も見たくない。同じ空気も吸いたくないから、要請を受け入れただけだ』
「サニワ⁉︎」
サニワの口から明かされた衝撃の事実に、そしてその口の悪さに、アイリスは困惑していた。
だがそれでも、ガラルチャンピオンと元ガラルチャンピオンとの言い争いは止まる気配すら見せず、更にヒートアップしていく。
「だが、キミは一度誘拐されたんだぞ! これ以上旅を続けるのは危険すぎる、やめたほうが良い!」
『戯れ言を……! 小官をこの世界に留めているのはそちらのエゴだろう! 親元から無理やり引き剥がす所業は、この世界では誘拐じゃないのか⁉︎』
「違うだろー? お前の場合誘拐じゃなくって保護って言うの。あんな危険な世界に、ガラルの英雄を放置するわけにはいかないからな」
『保護だ何だと
「おーおー。威勢のいいことで」
『デント、包丁を貸してくれ』
「貸さないよ⁉︎」
サニワの毒交じりの訴えも、ダンデたちにとっては癇癪を起こす赤子のようなものにしか感じられないのか。ケタケタとキバナが笑い飛ばし、それが余計にサニワの火に油を注ぐ結果となっていた。
もしもサニワの手に銃のひとつでもあったなら、彼らの脳天に弾丸が貫通していたことだろう。それほどまでの怒りをサニワは抱いていた。
互いに一歩も意見を譲らない中、カミツレはとある提案を持ちかける。自分とのジムバトルを見てもらうことで、サニワがどれだけ成長したのかを見せつけてはどうか、と。
「それじゃ、カミツレさんに負けたらガラルへ帰るんだな」
「……いいぜ。ただし、サニワ。オマエはガラルのチャンピオンだ。そして相手はジムリーダー。負けはもちろんだが……オマエのポケモンが一体でも戦闘不能になったら、ガラルへ帰還する。それでいいな?」
『……良いだろう。少々勘違いしているようだから訂正しよう。ガラルは、自分の帰るべき場所ではない! 帰還する場所は、本丸ただひとつ‼』
サニワがじろりと大男二人を睨みつける。その深紅の双眸は、まるで憎悪の業火が、ごうごうと轟きながら燃え盛っているようだった。
「おいおい、そんな事言っちゃっていいのかよ! 相手はジムリーダーだぜ⁉︎」
「そうよ、サニワのポケモンが一体でも倒れたら……!」
『自分が負けると決まったわけではない。……ただ今回は、どうしても負けられないからな。あまり使用したくはなかったが、最終兵器を使用させてもらおう』
「公式ルールで使用可能なら、別に問題ないわ。バトルフィールドはあっちよ」
カミツレはダンデたちの向こう側を指差すと、扉が自動で開かれる。そこには、既にファンで満員御礼のバトルフィールドが展開されていた。