第27話
管理室は異常を訴えるアラームが鳴り響き、壁一面のディスプレイは警告を伝えるウィンドウがいくつも表示されており、駅員たちは皆、前代未聞の異常事態に対応するべく室内を縦横無尽に駆け回っていた。
その風景は異常の一言に尽きる。しかしながら、部屋の内装はサニワが使用していた本丸の一部に酷似しており、こんのすけの平常心を取り戻す役目を果たしていた。
対応に追われていたサブウェイマスターに事情を話すと、彼らは腑に落ちたようで、瓜二つの顔を見合わせる。
「なるほど。保管庫から盗んだモンスターボールを幽霊列車に移し替え、さらにATOをハッキングさせて地下鉄の全車両をストップさせたと」
「でもそんな事したら、止まった車両が邪魔して幽霊列車はもう逃げられないんじゃ……」
「いえ、逃げることは可能です」
ノボリが苦虫を噛み潰したように告げると、デントは連絡線を使えば……と呟いた。
連絡線は、後続や対向の列車に衝突しないよう、道を開けておくための線路である。それを巧みに利用し、幽霊列車は現在も広大な地下を逃げ回っているのだ。
「どうにかして幽霊列車を止められないんですか⁉︎」
「幽霊列車がどこへ向かっているのかはわかりませんが、連絡線を使っているために、奴らがストレートに目的地に行けないのは確かでございます」
「だから、かなりの遠回りを強いられているはずだ。しかも連絡線を使ったルートとなると、どこを向かっているにしても、必ずこのD3ポイントを通ることになる」
クダリが指をさしたその場所は、この管理室からかなりの距離がある。
このライモン中央駅と中央郵便局を結ぶ路線があり、その上を走るトロッコもある。それを使おう、とサブウェイマスターが顔を見合わせた時だった。
突如サトシたちの脳内に、少女の声が響き渡ったのだ。
(……し……もしもし……)
「これって……まさか⁉︎」
(戦況の報告をさせていただこうと思ったんだが……届いているだろうか)
少女の声の主は、行方不明のサニワであった。ヒウンシティの時と同じように、サーナイトのテレパシーを使用して自分たちに話しかけているのだろう。
ひとまず行方不明だった少女の無事に仲間たちが安堵するも、この緊急事態だ。矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「サニワ‼ やっぱりサニワだ……‼」
「今どこにいるの⁉」
(恐らく、貨物車の中であると推測する。ピカチュウやキバゴたちも共に行動している、安心してくれ)
「それで、皆は無事なのかい⁉︎」
(私は手錠で拘束されていた上、ピカチュウも檻に閉じ込められた状態だった。無事、とは言い難い状況ではあるが、命に別状はない)
「キバゴに……ポケモンたち怪我はないの⁉︎」
(ポケモンたちが負傷したわけではない。私は手錠を外した際に負傷したが、それも片手だ。戦闘の継続は可能と判断している)
「そうか……。今のところは皆無事なんだね。良かった……!」
他の面々も顔色がかなり悪かったが、ここでぶっ倒れては自分たちのポケモンが危ない。倒れるわけにはいかないと、気合いで踏ん張っていた。
「それにしても、やっぱりいつもの片言に慣れてるせいかな。違和感が凄いや……」
(最初から通訳を依頼すれば、意志疎通も図りやすい。指示も簡単だ。しかしながらその行為は、異世界の人間であると誇示しているも同然であり、誘拐される危険性も上昇すると確信している所存だ。現に今拉致されている)
「……うん、そうだな」
(私なりのジョークなので笑ってもらえるとありがたいのだが)
「こんな状況で笑えるわけないでしょおおおおぉぉぉぉ‼︎」
何度も激戦や修羅場を潜り抜けている彼女にとっては大したことないのだが、アイリスは余裕が全くないせいか、怒髪天を衝く勢いで怒鳴る。
彼女のすぐ近くにいたこんのすけは、彼女の勢いに気圧されたせいで、テーブルの上からベシャっと落下した。
(勝手ながら、本題に入らせていただこう。サトシたちはこれからどのように行動する予定なのか、作戦を聞きたい)
「今からトロッコを借りて、D3ポイントへ向かうところだよ」
(……なるほど。そのD3ポイントという場所は、小官にはどこにあるか推測不可能ではあるものの、私は地下鉄の車庫や出入り口に向かうべきだと確信している)
「……出入り口?」
(これだけ計画的な犯行だ。相手側も退路を確保していると確信している。トーチカに引き籠るだけでは、いずれ兵器の餌食になるだけ。それが突貫工事の脆弱性なら尚更)
「そうか……! 実に単純かつ、的確な心理だ。そこから入ったのなら、そこから出る‼︎」
(以下の事実を、地下鉄を管理されている双子の車掌……ちょっとお名前は忘れたけれど、その方に伝えていただきたい。では、小官はこれで)
伝えるだけ伝えて一方的に通信(テレパシー)をぶった切ったサニワ。しかしその情報は有益すぎるものであり、サトシたちの顔からは不安の色が消え去っている。
デントは早速サブウェイマスターにサニワの考察を伝え、ライモンシティから北西に進んだ先にある街、カナワタウンに向かうのだった。
その風景は異常の一言に尽きる。しかしながら、部屋の内装はサニワが使用していた本丸の一部に酷似しており、こんのすけの平常心を取り戻す役目を果たしていた。
対応に追われていたサブウェイマスターに事情を話すと、彼らは腑に落ちたようで、瓜二つの顔を見合わせる。
「なるほど。保管庫から盗んだモンスターボールを幽霊列車に移し替え、さらにATOをハッキングさせて地下鉄の全車両をストップさせたと」
「でもそんな事したら、止まった車両が邪魔して幽霊列車はもう逃げられないんじゃ……」
「いえ、逃げることは可能です」
ノボリが苦虫を噛み潰したように告げると、デントは連絡線を使えば……と呟いた。
連絡線は、後続や対向の列車に衝突しないよう、道を開けておくための線路である。それを巧みに利用し、幽霊列車は現在も広大な地下を逃げ回っているのだ。
「どうにかして幽霊列車を止められないんですか⁉︎」
「幽霊列車がどこへ向かっているのかはわかりませんが、連絡線を使っているために、奴らがストレートに目的地に行けないのは確かでございます」
「だから、かなりの遠回りを強いられているはずだ。しかも連絡線を使ったルートとなると、どこを向かっているにしても、必ずこのD3ポイントを通ることになる」
クダリが指をさしたその場所は、この管理室からかなりの距離がある。
このライモン中央駅と中央郵便局を結ぶ路線があり、その上を走るトロッコもある。それを使おう、とサブウェイマスターが顔を見合わせた時だった。
突如サトシたちの脳内に、少女の声が響き渡ったのだ。
(……し……もしもし……)
「これって……まさか⁉︎」
(戦況の報告をさせていただこうと思ったんだが……届いているだろうか)
少女の声の主は、行方不明のサニワであった。ヒウンシティの時と同じように、サーナイトのテレパシーを使用して自分たちに話しかけているのだろう。
ひとまず行方不明だった少女の無事に仲間たちが安堵するも、この緊急事態だ。矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「サニワ‼ やっぱりサニワだ……‼」
「今どこにいるの⁉」
(恐らく、貨物車の中であると推測する。ピカチュウやキバゴたちも共に行動している、安心してくれ)
「それで、皆は無事なのかい⁉︎」
(私は手錠で拘束されていた上、ピカチュウも檻に閉じ込められた状態だった。無事、とは言い難い状況ではあるが、命に別状はない)
「キバゴに……ポケモンたち怪我はないの⁉︎」
(ポケモンたちが負傷したわけではない。私は手錠を外した際に負傷したが、それも片手だ。戦闘の継続は可能と判断している)
「そうか……。今のところは皆無事なんだね。良かった……!」
他の面々も顔色がかなり悪かったが、ここでぶっ倒れては自分たちのポケモンが危ない。倒れるわけにはいかないと、気合いで踏ん張っていた。
「それにしても、やっぱりいつもの片言に慣れてるせいかな。違和感が凄いや……」
(最初から通訳を依頼すれば、意志疎通も図りやすい。指示も簡単だ。しかしながらその行為は、異世界の人間であると誇示しているも同然であり、誘拐される危険性も上昇すると確信している所存だ。現に今拉致されている)
「……うん、そうだな」
(私なりのジョークなので笑ってもらえるとありがたいのだが)
「こんな状況で笑えるわけないでしょおおおおぉぉぉぉ‼︎」
何度も激戦や修羅場を潜り抜けている彼女にとっては大したことないのだが、アイリスは余裕が全くないせいか、怒髪天を衝く勢いで怒鳴る。
彼女のすぐ近くにいたこんのすけは、彼女の勢いに気圧されたせいで、テーブルの上からベシャっと落下した。
(勝手ながら、本題に入らせていただこう。サトシたちはこれからどのように行動する予定なのか、作戦を聞きたい)
「今からトロッコを借りて、D3ポイントへ向かうところだよ」
(……なるほど。そのD3ポイントという場所は、小官にはどこにあるか推測不可能ではあるものの、私は地下鉄の車庫や出入り口に向かうべきだと確信している)
「……出入り口?」
(これだけ計画的な犯行だ。相手側も退路を確保していると確信している。トーチカに引き籠るだけでは、いずれ兵器の餌食になるだけ。それが突貫工事の脆弱性なら尚更)
「そうか……! 実に単純かつ、的確な心理だ。そこから入ったのなら、そこから出る‼︎」
(以下の事実を、地下鉄を管理されている双子の車掌……ちょっとお名前は忘れたけれど、その方に伝えていただきたい。では、小官はこれで)
伝えるだけ伝えて一方的に通信(テレパシー)をぶった切ったサニワ。しかしその情報は有益すぎるものであり、サトシたちの顔からは不安の色が消え去っている。
デントは早速サブウェイマスターにサニワの考察を伝え、ライモンシティから北西に進んだ先にある街、カナワタウンに向かうのだった。