第27話

 ライモンシティのポケモンセンターは、さすがバトルの聖地と言われるだけあって、イッシュ地方でも屈指の広さを誇る。
 またポケモンセンターで施術される機械の治療だけでなく、心と体を癒すリラクゼーションも豊富らしい。


「そんなわけだから、手持ちのポケモンは全部預けた方が良いニャ!」
「……どこで、知った?」
「当然ニャ! イッシュ地方では有名な話なのニャ!」


 むふんと自慢げに答えるニャース。サニワは疑いの目を向けていたが、彼女の問いに答える気はないらしい。
 ニャースの話を聞いたサトシたちはポケモンを全て預けるつもりだったが、サニワは到底預ける気にはなれない。だが、自分だけポケモンを預けないというのもおかしな話なので、ボールは皆預けることに決めた。


「じゃああたしたちは……」
「イッツランチタイムだね!」
「……ちょっと、用事。……先、食べてて」
「そうか? じゃあ先にメニュー注文しておくよ。何が良い?」
「……任せる」


 そう言い残すと、サニワはポケモンセンターから飛び出していった。
 ややサニワの様子がおかしいのは自分たちの気のせいだろう。そう結論づけたサトシたちは、ポケモンセンターに備え付けられているレストランへ直行した。

 サトシたちと別れたサニワは早速路地裏へ向かった。地下鉄の幽霊列車騒動について調べるためだ。
 幽霊列車とすれ違ったあの時、確かにRの文字が見えた。ニャースのあの口振りは、恐らくポケモンセンターに預けられているポケモンたちを狙っているのだろう。

 誰かに聞かれてはマズい内緒話でもしているのだろうか、囁き声がサニワの耳元に届く。彼女の長い耳がピクリと動き、様子を覗き見しようとした。


「……順調のようだな」
「このまま行けば、ライモンシティのポケモンセンターに預けられているポケモンを強奪できるわ」


 彼らの話を耳に挟んだ途端、一本の線が繋がった。地下鉄の幽霊列車事件と、これから起こるであろう窃盗事件。これらの事件は組織的な犯行で、犯罪組織によるものであることが。
 一刻も早く証拠を集めて、通報しなければ。踵を返した、その時だった。


「ナイトヘッド‼︎」
「⁉︎」


 突如ポケモンの攻撃をまともに食らったサニワの小さな細い身体は地面へと崩れ落ちる。異世界から来たサニワはポケモンの繰り出す技の耐性を持っているはずもない。意識を保っているので精一杯だった。
 こんのすけは精一杯主人の傍で声を張り上げ、必死に起こそうとするものの、段々と彼女の意識は遠のいていく。


「主さま! 気をお確かに……!」
『こんちゃん、だけ、でも……早く逃げろ………!』


 ロングコートを羽織った男女二人がサニワたちへ接近する。こんのすけは毛を逆立てて威嚇するものの、相手はデスマスとコロモリを連れている。管狐といえど、攻撃を食らったら。危ないのは明白だった。


「コロモリ! エアカッター‼︎」


 風の刃がこんのすけに襲来し、彼は咄嗟に避けるものの、数発が彼の身体を掠る。斬られた傷からは、だらりと血が流れ出した。
 サニワは最後の力を振り絞り、何とか相手の足に触れる。ところが女に蹴り飛ばされ、強く身体を打ち付けた。その衝撃で、完全に意識を失ってしまったのだった。


「……逃げられたわね。追おうにも人混みに出られたらマズいわ」
「……まぁ良い。ガラルチャンピオンの身柄の確保、その目的は達成されたからな」


 男はサニワの小さな身体を抱き上げると、路地裏の奥へと消えた。
 こんのすけはそれを物陰から眺め、自分の非力さに唇を噛み締める。だが自分一人では相手にもされないことは目に見えていて。
 ポケモンセンターで待機しているサトシたちに助けを求めるべく駆け出した。
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