第27話
電車に乗ったサトシたちは大人しく席に座って到着を待っていたが、デントは操縦席が見える位置にへばり付き、キラキラと瞳を輝かせていた。
それをサニワの隣に座った親子連れとこんのすけが苦い笑みで見詰めている。サニワはスマホロトムを弄り倒し、完全に他人を決め込んでいた。
「……デントさま、単刀直入にお伺いします。何してるんですか」
「何って、運転席を見てるんじゃないか! ここはメトロソムリエの特等席だからね!」
デントが離れた隙に、サニワは運転席を覗き込む。しかしそこは複雑な機械が動いているだけで、制御する人間は誰もいなかった。
自動運転技術で動いているのだろうが、もしも暴走した際に止める人間やポケモンがいなかったらと思うとゾッとする。不安になったサニワはデントの服の裾を引っ張り、運転席の機械を指差した。
「ん? どうしたんだい、サニワ」
「デントさま、主さまは操縦席に誰もいないのが気になっているようです」
「大丈夫さ。この電車はATOだからね!」
「いや、自動運転技術で動いているのは主さまも理解しておられるのですが、操縦席に人が存在しないことに不安を感じているようでして」
「今まで暴走した事故は起きていないから大丈夫だよ! ところで、サニワの世界に地下鉄はあるのかい?」
デントの問いに、サニワは首を横に振る。
確かに以前は列車が世界中を縦横無尽に駆け回っていた時代もあった。しかし転送装置が発明され、人々の移動は転送装置に取って代わった。
物資の大量輸送に関しては、トラックや船がまだ現役で使用されているものの、数多くの鉄道会社や航空会社、運輸業者が倒産したのは言うまでもない。
「少なくとも、新たに鉄道の線路が敷かれる事はないでしょう。莫大な費用、膨大な時間がかかりますからね。それに、昔は線路を敷くだけで……」
言葉を遮るかのように、列車が緊急停車する。立って操縦席を眺めていたサニワは咄嗟にこんのすけを庇って壁に激突した。
何か外で起きたのだろうかとデントとサニワが車窓から外をのぞくと、真っ黒な列車とすれ違う。その漆黒の車体に、赤紅色で大きなRの字が記載されているのを、サニワは見逃さなかった。
そして、カツコツと何かが近づく足音。ピクリと尖った耳を動かして、サニワがその方向へ視線を向けると、白と黒のロングコートを羽織った、顔が瓜二つの男二人が懐中電灯を持ってこちらに向かってくる。
「あれは……ノボリさん! クダリさん!」
「ノボリ?」
「クダリ?」
「……知ってる?」
「あの二人は、ライモンシティの地下鉄を管理するサブウェイマスターなんだよ!」
サブウェイマスターの二人が至急対応したことで、乗車していたライモンシティ中央行きの列車はすぐに運行を再開。数分遅れで目的の駅に到着した。
やはりデントとサブウェイマスターは顔見知りらしく、嬉しそうに会話を交わし終えると、アイリスがさっきの緊急停車は何だったのか尋ねた。
最近、ライモンシティの地下鉄で、ダイヤにない列車が出現するようになったらしい。
先ほどサニワたちが乗車していた電車も、跳ね橋駅に突如出現したため、事故防止のためのATOが作動したのだ。しかし幽霊列車はその名前の通り、すれ違った後、煙のように消失したのである。
誰が何のためにこの騒動を引き起こしているのか、そもそもの原因は何なのか。全く手掛かりが掴めていないが、現在調査中を進めている。
「……わたし、見た……きっと、本物。……電車、赤の、模様」
「あ、サニワちゃんだよね! テレビでも見てたけど、本当に背が小さいんだ!」
「ええ。本当に可愛らしい方でございます」
初対面の人にいきなりガッチリと手を掴まれ、サニワは驚いてかちこちに固まった。
確かに初対面の男に手を掴まれれば、誰だって恐怖を感じるものだろう。しかも自分たちは強面の部類に入るのか、よく子ども受けが悪いだの迷子の担当はするなだのと部下にぼろかす言われている。
クダリの脳天に手刀を落としたノボリは、自分のポケットの中からキャンディをサニワへ手渡した。
「弟が失礼いたしました。お詫びに……はい、どうぞ」
「あ、ありがと……ござい、ます」
嬉しいのか恥ずかしいのか、やや俯きがちにキャンディを受け取るサニワ。その姿があまりにもいじらしく、クダリの口角が更に上がる。
「早く行くのニャ! ニャーはもう疲れたのニャ!」
「……さっきの、飴。……機嫌、直して」
「全く、仕方ないのニャ」
渋々ニャースがキャンディを口へ放り込む。そのキャンディはモモンのみ味のはずだが、あまり甘さは感じられなかった。
それをサニワの隣に座った親子連れとこんのすけが苦い笑みで見詰めている。サニワはスマホロトムを弄り倒し、完全に他人を決め込んでいた。
「……デントさま、単刀直入にお伺いします。何してるんですか」
「何って、運転席を見てるんじゃないか! ここはメトロソムリエの特等席だからね!」
デントが離れた隙に、サニワは運転席を覗き込む。しかしそこは複雑な機械が動いているだけで、制御する人間は誰もいなかった。
自動運転技術で動いているのだろうが、もしも暴走した際に止める人間やポケモンがいなかったらと思うとゾッとする。不安になったサニワはデントの服の裾を引っ張り、運転席の機械を指差した。
「ん? どうしたんだい、サニワ」
「デントさま、主さまは操縦席に誰もいないのが気になっているようです」
「大丈夫さ。この電車はATOだからね!」
「いや、自動運転技術で動いているのは主さまも理解しておられるのですが、操縦席に人が存在しないことに不安を感じているようでして」
「今まで暴走した事故は起きていないから大丈夫だよ! ところで、サニワの世界に地下鉄はあるのかい?」
デントの問いに、サニワは首を横に振る。
確かに以前は列車が世界中を縦横無尽に駆け回っていた時代もあった。しかし転送装置が発明され、人々の移動は転送装置に取って代わった。
物資の大量輸送に関しては、トラックや船がまだ現役で使用されているものの、数多くの鉄道会社や航空会社、運輸業者が倒産したのは言うまでもない。
「少なくとも、新たに鉄道の線路が敷かれる事はないでしょう。莫大な費用、膨大な時間がかかりますからね。それに、昔は線路を敷くだけで……」
言葉を遮るかのように、列車が緊急停車する。立って操縦席を眺めていたサニワは咄嗟にこんのすけを庇って壁に激突した。
何か外で起きたのだろうかとデントとサニワが車窓から外をのぞくと、真っ黒な列車とすれ違う。その漆黒の車体に、赤紅色で大きなRの字が記載されているのを、サニワは見逃さなかった。
そして、カツコツと何かが近づく足音。ピクリと尖った耳を動かして、サニワがその方向へ視線を向けると、白と黒のロングコートを羽織った、顔が瓜二つの男二人が懐中電灯を持ってこちらに向かってくる。
「あれは……ノボリさん! クダリさん!」
「ノボリ?」
「クダリ?」
「……知ってる?」
「あの二人は、ライモンシティの地下鉄を管理するサブウェイマスターなんだよ!」
サブウェイマスターの二人が至急対応したことで、乗車していたライモンシティ中央行きの列車はすぐに運行を再開。数分遅れで目的の駅に到着した。
やはりデントとサブウェイマスターは顔見知りらしく、嬉しそうに会話を交わし終えると、アイリスがさっきの緊急停車は何だったのか尋ねた。
最近、ライモンシティの地下鉄で、ダイヤにない列車が出現するようになったらしい。
先ほどサニワたちが乗車していた電車も、跳ね橋駅に突如出現したため、事故防止のためのATOが作動したのだ。しかし幽霊列車はその名前の通り、すれ違った後、煙のように消失したのである。
誰が何のためにこの騒動を引き起こしているのか、そもそもの原因は何なのか。全く手掛かりが掴めていないが、現在調査中を進めている。
「……わたし、見た……きっと、本物。……電車、赤の、模様」
「あ、サニワちゃんだよね! テレビでも見てたけど、本当に背が小さいんだ!」
「ええ。本当に可愛らしい方でございます」
初対面の人にいきなりガッチリと手を掴まれ、サニワは驚いてかちこちに固まった。
確かに初対面の男に手を掴まれれば、誰だって恐怖を感じるものだろう。しかも自分たちは強面の部類に入るのか、よく子ども受けが悪いだの迷子の担当はするなだのと部下にぼろかす言われている。
クダリの脳天に手刀を落としたノボリは、自分のポケットの中からキャンディをサニワへ手渡した。
「弟が失礼いたしました。お詫びに……はい、どうぞ」
「あ、ありがと……ござい、ます」
嬉しいのか恥ずかしいのか、やや俯きがちにキャンディを受け取るサニワ。その姿があまりにもいじらしく、クダリの口角が更に上がる。
「早く行くのニャ! ニャーはもう疲れたのニャ!」
「……さっきの、飴。……機嫌、直して」
「全く、仕方ないのニャ」
渋々ニャースがキャンディを口へ放り込む。そのキャンディはモモンのみ味のはずだが、あまり甘さは感じられなかった。