第27話

 巨大な歓楽街、ライモンシティ。ガラル地方のシュートシティに勝るとも劣らないほど、活気に満ち溢れた都市だ。
 この街はジム以外にもバトル用の施設が数多く存在しており、数多くのトレーナーが腕試しに訪れ、「ポケモンバトルの聖地」とも称される。それを聞いたサトシは、闘志を燃え滾らせたのだが。


「よーし、燃えてきたぜ。早速ジム戦だ!」
「ちょっと待つのニャ……」


 ニャースはここに来るまで疲れたのか、地面にへたり込んでいた。脚の長さが人間のサトシたちと異なる分、必然的に歩数が多くなる。そのためだろうか。
 小腹が空いたのはアイリスとキバゴも同じようで、ニャースの提案に同意する。気持ちが先走るサトシは真っ先にジム戦をしたがったが、彼の腹の虫が盛大に鳴った。


「ほーら、二人ともお腹が悲鳴を上げてるじゃない!」
「えへへ、聞こえた?」
「そう言うことなら、僕がポケモンセンターへ案内するよ! さぁこっちだ!」


 滅多にないハイテンションで突っ走っていくデント。先ほどまで通常運転だったのに今の彼は全くの別人だ。
 サニワは彼の変貌ぶりにかなり困惑し、こんのすけは彼女の頭上で面倒そうにデントを見詰めていた。

 そして連れて行かれた先は、地下鉄への入り口だ。ライモンシティの地下鉄は街を縦横無尽に走っているので、ポケモンセンターもより早く到達する。
 まるでシュートシティのモノレールみたいだ、とサニワは密かに思った。


「嬉しそうな顔しちゃって……子どもねぇ」
「デントってそんなに鉄道が好きだったのか!」
「大好きさ! 何しろ僕はメトロソムリエだからね!」
「……?」
『要するにただの鉄オタってことでいいんじゃないですか? 中でも会社鉄と乗り鉄でしょうか』


 聞き慣れない単語にサニワが小首を傾げこんのすけに説明を求めると、サニワの世界の言葉で面倒そうに説明する。その顔は呆れを通り越してチベスナフェイスとなっていた。

階段を降りると、目の前には旧型の車両だろうか、随分とレトロな車両が展示されていた。早速デントは表情を輝かせて撮影を始める。


「これってそんなに珍しいの?」
「よくぞ聞いてくれました、イッツ! サブウェイターイム‼︎」
「まーた面倒なのが始まったかも……」


 アイリスが渋面を作り、サニワが心配そうに彼女の顔を覗き込む中、デント構うことなくはサトシたちへ説明を長々と語る。

 この車両はダブルトレインと言い、一昔前の量産車両なのだ。シングルトレインの後継機であり、構造の見直しにより、パーツの数が少なくなっているのが特徴的であり、ダブルトレインの無駄のない設計は、その後の車両の設計に受け継がれているのだそうだ。

 長々と車両について得意げに語るデント。しかし、それを聞かされたサトシ、アイリス、ニャースは面倒そうに聞き流していた。こんのすけは言葉の翻訳をしていたのだが、聞くつもりも毛頭ない。きちんと傾聴しているのはサニワだけであった。


「よくまぁそれだけ長く言葉を並べられるもんニャ……」
「もちろんさ! 僕はメトロソムリエだからね!」


 デント曰く、メトロソムリエといえど色々な種類が存在し、車両に拘る車両派、路線に拘る路線派に別れ、その中でも更に派閥が存在するらしい。その中でもデントは車両派なのだそうだ。
 一同の中でも最も体格の良いデントを引っ張るのは至難の業だろうが、とにかく休みたい一心は底力を引き出すようだ。一刻も早く休息を取りたいニャースはデントの服を引っ掴み、ずるずると引っ張って行った。
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