第4話

 サニワはポケモンを預けると、ガラル地方に単身戻ったソニア博士へ、ダイマックスとメガシンカについて彼女なりの考察を送信する。
 ダイマックスは、ガラル地方の中でもパワースポットと呼ばれる特有の場所でしか確認されないことから、やはりムゲンダイナが引き起こしたブラックナイトによる影響と考えて問題は無いだろう。
 この地方でムゲンダイナのダイマックス砲とムゲンダイビームを何百発か撃てば、ダイマックスできるかもしれないが。

 まだ時刻は午後二時前だ。シッポウシティまでの距離にもよるが、この調子だと今日中に二つ目のジムに挑戦できるかもしれない。
 時計を一瞥し、ソファに腰掛けて時間潰しにスマホロトムを弄っていると、チョロネコを連れた気の強そうな女がサニワを探してきた。


「……アンタ、さっきジム戦してた子でしょ?」
「……何?」
「話したいことがあるんだけど。時間、いいかしら」


 そう言って彼女はサニワの返事を問うことなく腕を引っ掴み、ずんずんと人気のない路地へ進んでいく。
 彼女は先ほどのジムリーダーのファンクラブの子だろう。そんなサニワの予感は見事的中し、「さっきのは何よ!」といきなり怒声を浴びせた。


「メガシンカ⁉︎ バトルシーンだけ進化するなんて卑怯じゃない! さっさとコーン様たちに謝って返しなさいよ!」
「……カルネ、ダイゴ、使ってる……ズル、違う。……文句、ジムリーダー、言う、して」
「まだ非を認めないつもり? 仕方ないわね……。 私が返してきてあげるわ! バッジを寄越しなさいよ‼︎」


 イッシュ地方に来てまで、パパラッチに追いかけ回されくない。
 何より、今彼女はバッジにしか思考にないようだが、ダイマックスバンドを強奪されては大問題だ。これだけは死守せねば。
 手持ちのポケモンを預けていて対抗手段のないサニワは、ただ蹲ってやり過ごすしかなかった。

 なかなかバッジを強奪できず、業を煮やしたファンクラブの女。怒りのあまり発狂寸前の彼女は理性を失っていて、その姿はまるで獣さながらだった。
 遂に痺れを切らした女は、連れていたチョロネコに攻撃の指示を下す。


「チョロネコ! あの生意気な女に向かって辻斬りよ! どうしたの⁉︎ 早くやりなさいよ!」


 彼女のチョロネコは人間に攻撃を仕掛けるのには抵抗があったのか、かなり戸惑っていたようだ。しかし怒りで我を失ったパートナーにチョロネコの言葉が届くことはなく、鋭利な爪がサニワに襲いかかる。
 幸い、マックスバンドもバッジも奪われることはなかったものの、腕からと鮮やかな血が吹き出し、地面へ滴り落ちた。

 強奪できなかった女はチィッと舌打ちを隠す素振りも見せず、もう一度チョロネコに指示を出した、その時。豪炎がチョロネコに強襲し、見事後頭部に直撃。チョロネコは目を回して地に伏せる。
 まさか、と顔を上げると、そこには彼女の妖狐と、イッシュ地方ではまず見かけることのない、色違いのキュウコン。そして、どうしてだかコーンがいた。
 二人とも俯いていて表情が見えないが、少なくともキュウコンは確実に怒っており、今にも図鑑説明のように千年祟りかねない勢いだ。
 少女は恐怖によりぼろぼろと大粒の涙を流したが、彼は一切表情を変えることはなかった。


「ち、違うんですコーン様ぁ! 私はズルをしたこの女が許せなくて……!」
「メガシンカは卑怯ではありませんよ。審神者様の仰る通り、カルネさんやダイゴさんなど、メガシンカを駆使した戦法を使うトレーナーもいらっしゃいますからね」
「……っでも! 私は納得いきません!」
「例え納得がいかずとも、ポケモンに無抵抗な人間を攻撃させるなど、トレーナーとして言語道断です! ……もう二度と、店に来ないでください。営業妨害です」
「そんな……!」


 事実上の出禁を言い渡されたファンクラブの女は、がくりと膝をついて項垂れる。
 サニワは手を差し伸べようとしたが、今の彼女なら逆に火に油を注ぐだろう。そうコーンから告げられると、彼に腕を引かれるがまま、ポケモンセンターまで連れて行かれるのだった。
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