第24話

 ズルズキンに案内され、とある岩場まで案内される。もともと住処だった岩穴を指差すと、其処には、巨大な頭蓋骨……否、バルジーナが居座っていた。確かに飛行タイプのバルジーナと格闘タイプのズルズキンでは、相性が悪いだろう。

 早速ズルズキンはバルジーナに立ち向かうも、シャドーボールを放たれて呆気なくダウン。シャドーボールはゴーストタイプの特殊技なので、ズルズキンにとっては効果は今一つのはずなのだが。

 地面に伏せっているズルズキンの代わりに、相性有利なピカチュウが向かおうとした。しかし、兄貴分のズルズキンがやられたから自分が行かせて欲しいとズルッグが懇願し、そのやる気を買ったサトシは彼をバトルへ向かわせる。
 先ほどのズルズキンと同じように、シャドーボールが放たれた。しかしズルッグは身を翻してそれを回避する。見事ズルッグは着地に成功したが、その隙に煌く鋭利な嘴がズルッグに狙いを定めていた。
 その攻撃も間一髪でギリギリ避けると、勢い余ってバルジーナの頭は岩場に激突。頭部が地面に減り込み、そのまま身動きが取れない状態になってしまった。
 千載一遇のチャンスに、習得したばかりのズルッグの飛び膝蹴りが襲い掛かる。見事急所に命中し、バルジーナは目を回し、サニワの近くに墜落した。


「やったな、ズルッグ!」
「新しい技を覚えたのね! 凄いじゃない!」
「今の技は、このズルズキンが伝授したものですよ」
「そうなのか。ありがとう、ズルズキン!」


 サトシから礼を述べられ、ズルズキンははにかみながら頭を掻いた。
一方、意識が戻ったバルジーナはわんわんと大泣きする。誤って仲間の食料に手をつけてしまい、それが原因で群れから追い出されてしまったのだ。
 完全にズルズキンはとばっちりを受けただけであったが、彼はバルジーナの背に手を置き慰めている。


「……仕方ない。謝ろ、一緒」
「えぇ⁉︎」
「サニワ、それは危険すぎるよ!」
「……ただし、謝るの、わたし、ちがう。ニャース」
「なるほど、ニャースに行かせるのですか。捨(す)て奸(がまり)……いえ、人柱役は任せましたよ」
「人柱? って何ニャ?」
「簡単に言えば、建築物を建造する際に生き埋めにされた人身御供……要は生贄ってことですね」
「今生贄って言ったニャ⁉︎」


 ニャーの扱いが酷いニャ! とニャースは文句を言うが、サニワは無表情で親指を立てて黙殺する。二人はコロッセオの試合を楽しむ観客のように、完全に見世物として楽しんでいた。最低である。

 リンゴをバルジーナが持てる分だけ集めたサトシたちは、元来バルジーナが暮らしていたという小槍まで訪れた。食料を食べてしまったのならば、その分を返すべきだ、というニャースの提案だ。

 小槍の先には一羽のバルジーナが佇んでいる。彼はリンゴを持ってきたバルジーナの姿を見るなり、シャドーボールで攻撃を仕掛けた。


「ニャース!」
『結界展開!』


 透明な防御壁が目前に広がり、ニャースたちを攻撃から防ぐ。周囲には衝撃で土煙が上がっただけで、ニャースたちに怪我はなさそうだ。


「待つのニャ、待つのニャ! こいつも反省してるのニャ」


 ニャースの合図に快くリンゴを差し出したバルジーナ。それを見たもう一羽のバルジーナは、驚いて目を皿にした。


「おミャーのために採ってきた果物だニャ。どうか許してやって欲しいのニャ。仲間がいるんだから仲良くして欲しいのニャ。楽しい時、仲間がいれば倍楽しくなるし、悲しい時、仲間がいれば悲しみは半減するのニャ。仲間とはそういうものなのニャ。……だから、頼むニャ」


 ニャースはそう告げると、ペコリと頭を下げた。彼の言葉と、バルジーナの態度に免じて、巣を追い出したはバルジーナは許してやることに決めたようだ。

 事が全て終わった頃には、既に太陽が沈む頃。サトシやアイリスたちは異口同音にニャースを褒めるが、サニワとこんのすけは仕事柄か、未だに警戒心を解いてはいない。


「ニャース、大活躍だったね。もちろん、サニワとこんのすけも」
「本当ですニャ。サニワお嬢さんがバリアを張ってお助けくださらなければ、今頃ニャーはどうニャっていたことか!」
「……別に、助けたわけ、じゃない。……ニャース、倒れたら、こっちが危険。……それだけ。……だから、馴れ合う、つもりはない」
「でもニャース、貴方本当に頼りになるわ! よし、あたしがゲットしちゃお!」


 そう言うや否や、アイリスはボールをニャースへとぶつけた。すぐにニャースはボールへと吸い込まれ、うにうにと動く。
 しかしダメージを負っていなかったせいか、すぐにボールから出てしまった。


「何するのニャ! 危うくゲットされる所だったのニャ! ニャーは誰にもゲットされたくはないのニャ‼︎」
「そうだったんだ……」
「たとえ主さまでもお嫌ですか? 主さまには神の加護がついていらっしゃいますから、ゲットされれば貴方も必然的に神の加護が得られるのですよ……?」
「……にゃにゃあ、すごく魅力的なお誘いニャけど、お断りさせて貰うのニャ。ニャーはゲットされなくても、皆様のお役に立つのニャ!」


 グッと握り拳を作るニャース。それをピカチュウ、サニワ、こんのすけが冷ややかな目で見詰めていたが、すぐに何事もなかったかのように歩き出す。
 ニャースを含めたサニワたちを、太陽の光が赤く染めていた。
5/5ページ
スキ