第24話

 道端にキラリ、と輝くのは瓶のキャップで使用される王冠だ。その奥に一陣の気配をサニワは察知していた。
 だが、ヤミカラスなど輝くものを集める習性のポケモンもいる。ガラル地方でも経験アメや技レコードの収集癖を持つポケモンだってたくさんいた。そういう類だろう、とサニワは黙殺しようとするも、まだ幼いキバゴは興味津々だ。

 しばらくツンツン、と触って遊んでいると、茂みの奥に隠れていたポケモンが、自身の体の一部を使ってキバゴを誘拐したのだ。
 それを黙って見ているアイリスとサニワではない。キバゴを連れ去ったポケモンの後を追うと、一軒の空き家だろうか、ボロボロの木造建築の一軒家が目に入った。恐らくキバゴと誘拐したポケモンはあの中にいるに違いない。
 早速中へ入ろうとするサトシたちを、サニワが前に躍り出して制止させた。


「……待って! 行く、ダメ! キバゴ、危ない!」
「勝手な事を!」


 それでも山小屋へ向かおうとするサトシを、サニワは無理やりサトシの鳩尾に拳を入れて制する。まさか自分よりも小さな体の少女、いや幼女に鉄拳制裁されるとは微塵にも思わなかったサトシは、苦痛に顔を歪めた。


「痛いなぁ! 何するんだサニワ‼︎」
「……相手、多分、本気。……興奮、すごく、する。……少し、待って」
「サトシ。サニワの言う通り、あのズルズキンが落ち着いてからの方が良いんじゃないか」


 デントがそう提案し、サトシも同意した直後、小屋から蒼い炎が噴出された。キバゴの龍の怒りである。
 しかしズルズキンは上手く攻撃を躱したため、ズルズキンは抵抗したキバゴを睨み付ける。そのせいでキバゴは震え上がっていた。


「キバゴ、大丈夫かしら……」
「……こんちゃん。ズルズキン、話、聞いて」
「かしこまりました!」


 心配そうに小屋を見つめるアイリスの肩を支え、使いの管狐に指示を出したサニワ。命を受けた彼は、すぐさまズルズキンの元へ駆け出した。


<何の用だ!>
「やあやあこれなるは、『山城国』から交渉に参りました、管狐のこんのすけと申します! この通り、武器も持たず丸腰の状態にございます」
「ポケモンなんだから当たり前じゃない……!」
「なあデント、さっきのこんのすけの言葉、聞いた事あるか? なんか地名っぽかったけど」
「知らないなぁ……」


 こんのすけは実はポケモンではないのだが。
 そう訂正しようとサニワは考えたが、ニャースが心配そうにこんのすけを見つめているので、慌てて口を噤んだ。(自称)元・悪の組織のポケモンに聞かれたらまずいのだ。後でこってり搾ろう、とサニワは決意したのだった。

 キバゴを解放する条件を聞き出したこんのすけが戻ってきた。
 ズルズキン曰く、自分と一緒に共闘するポケモンが必要なようだ。だが、何故必要なのか、相手がどんなポケモンなのかまでは聞き出せなかった。

 しかしこんのすけがズルズキンの要求を聞き出す間、サニワはサニワで小屋の偵察に向かっていたようで、侵入できそうな割れた窓を見つけたらしい。


「……裏、窓、ある。……注目、外す……キバゴ、助けれる!」
「ねぇサニワ! キバゴに怪我はないの……⁉︎」
「……縄、縛られてた。……でも、傷、ない」
「良かった……!」
「……サトシ。ズルッグ、ズルズキン、進化前。……ズルズキン、協力する、話して。……わたし、キバゴ、助ける」
「わかった。どのくらい注意を引けば良いんだ?」


 サトシの質問にサニワは人差し指・中指・薬指を立てると、再び小屋の裏手まで戻っていく。そのあまりの素早さに、呆気に取られていた面々であった。
 すぐに気を取り直したサトシは、ズルッグをボールから出した。ズルッグはニャースを見るなり頭突きを繰り出した。間一髪でギリギリ避けたが、地面にポッカリとクレーターを作るその威力は相当なものだろう。

 ズルッグを小屋の入り口まで連れてきたこんのすけは、ズルズキンに協力するポケモンを連れてきた、と声を掛けた。
 自らがどの程度の実力なのか誇示したかったのか、ズルッグは頭突きを繰り出した。ところがそれを見たズルズキンは、左右に首を振った後、手本のように頭を振り下ろす。
 それだけで砂煙が舞い上がり、ズルッグよりも格段に攻撃力が高いことが窺える。


「ズルズキンさま。ぜひこのズルッグへ技を伝授してくださいませんか? さすれば、共闘する際、より強力な戦力となりましょう!」


 こんのすけの提案に快諾したズルズキン。彼は高く跳躍すると、強烈な膝蹴りを繰り出した。ハイリスク・ハイリターンな格闘技、跳び膝蹴りである。
 強力な技を目の当たりにしたズルッグは、キラキラと憧憬の眼差しを向けていた。

 その隙に小屋の裏に位置する崖へ回り込んだサニワ。彼女に気づいたキバゴが声を上げるも、ズルズキンが睨み付ける。だが、すぐに彼の注意は、膝を上げて跳び膝蹴りの練習をするズルッグに向けられた。
 その隙に崖から飛び降りて、小屋へ忍び込むサニワ。キバゴを連れて小屋の裏へ隠れると、縛っていたロープを服の裾に隠していたナイフで切り、サーナイトをボールから出した。

 キバゴの無事を横目で確認したこんのすけは、ズルッグの首根っこを咥えてサトシたちの元まで一目散に駆け出した。
 まさか逃げられると思わなかったズルズキンは、振り返って小屋の中を覗くも、そこは既に蛻けの殻であった。
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