第23話

 いつも持ち歩いているノートパソコンでルークの作業を手伝っていると、サトシに夕飯だと連れられた。
 食堂のテーブルには大量のコロッケが鎮座していた。キバゴの初勝利の祝賀と、サニワとアイリスの健闘を祈り、デントがキッチンを借りて用意したものだ。

 早速サトシたちに手を引かれるまま席に着き、サニワは嫋やかな動作で食べ進める。
 彼女の美しい所作は、その綺麗な容姿も相待って、誰が見ても威厳のあるチャンピオンにしか見えない。まだサトシやアイリスよりも背が低いと言うのに。

 一方、ポケモンフーズを頬張るキバゴに、彼自身もアイリスもご満悦の様子だ。これまで頑張り続けた成長の兆し。それが見えたのだ。
 キバゴの頬にはポケモンフーズの滓が引っ付いていた。それを自分の食事をよそに、ハンカチで吹いてやるサニワ。彼女は誰かの世話を焼くのが好きらしい。

 サトシもピカチュウも笑顔でがっついている。サトシの大好物はコロッケだ。ピカチュウもデントが手作りしたポケモンフーズが好きで、食べているときによく顔を綻ばせている。

 賑やかな食事風景。それを見て、サニワは本丸での光景を思い出していた。本丸での食事も、こんな風に賑やかだったからだ。人数が数倍以上いるといえど、アイリスとサトシがコロッケの取り合いで周囲を顧みずに騒ぎ立てているからか、同じくらいの活気を感じていた。
 サニワはコロッケをもう一個頬張る。食欲は人一倍ないと言っていいほど物を口にしない彼女が、二つもコロッケを食べるなんて。成長したなぁと、デントは成長した娘に感慨を受けるような母親のような心境であった。

 サクサクとサニワがホシガリスのようにコロッケを頬張っていると、ポケモンソムリエであるカベルネがテーブルまでやってきた。彼女は同じポケモンソムリエであるデントを目の敵にしているのだ。
 サニワは急いで食べ終えるとそそくさと退席した。カベルネに対して苦手意識が芽生えてしまったようで、あまり傍に近寄りたがらないようだ。しかしカベルネはそんな事はお構いなしにデントへ宣戦布告する。


「……ご馳走さまでした」
「サニワ、もう良いのかい? まだまだ沢山あるよ」
「……大丈夫。美味しかった、ありがとう」
「もう行っちゃった……。子どもなところもあるのね」
「サニワはもう行っちゃったけど……カベルネも一緒にどうだい?」
「私はもうゴージャスなディナーを頂きました! それより、私からの挑戦を受けてくれる? 明日の決勝戦で、ポケモンソムリエ対決をするのよ!」
「ソムリエ対決……?」
「そう! ポケモンソムリエ協会公認、Aクラスの実力を見せてもらおうじゃないの!」


 カベルネからの挑戦に、デントはあまり乗り気ではないようだ。彼は苦い笑みを浮かべる。明日の試合はじっくりと落ち着いて楽しみたいから、と断りを入れようとした。
 しかしカメラで撮影されていると知ったデントは、先ほどまでの穏やかさを捨て、カベルネとの勝負を承諾した。審判は近くで話を聞いていたケニヤンが行うらしい。
 一気に騒がしくなったテーブルを見て、こんのすけはやれやれと溜め息を吐いた。


「全く……。細川家伝来の刀並に面倒臭いですね。彼らの面倒臭さはまた別の方向ですが」
「どちらにせよ、面倒臭いのは否定しないのね……。デントが面倒臭いのはあたしも同意するけど」


 くわあぁ、と眠たそうに欠伸を零すゾロアとこんのすけであった。
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