第22話
その頃、サトシのツタージャはデントが作ったポケモンフーズを頬張っていた。その様子をサニワとケニヤンという名のトレーナーが楽しそうに眺めている。バトル大会の会場内とは思えないほど、穏やかな時間が流れていた。
器用に尻尾も使い、美味しそうにフーズを頬張るツタージャにカベルネが突っかかってきた。
「あぁ、碌にテイスティングも出来ないソムリエの作ったものを食べさせられるなんて……。可哀想なツタージャ!」
昨日の時点でカベルネに対する印象は悪かったが、サニワからの評価はますます悪くなる一方だ。最早ダンデやキバナたちと同じほど嫌っている。
珍しく憤るサニワの迫力は、いつにも増して恐ろしい。いつも通りの無表情でありながらも、殺気すら孕んだ炯眼で睨め付けられたカベルネ。命の危険すら錯覚するほどの恐怖と、凍てつくような寒さを覚え、いそいそと退散する。
カベルネが退席した途端、元の穏やかな雰囲気がサニワを包み込む。同一人物のはずなのに、まるで別人のようなサニワにケニヤンが困惑する。カベルネを射貫くガーネットの瞳は、軍人の片鱗を示していた。
「……デント。……今度、レシピ……教えて。……皆、美味しいって、好きって……言ったから」
「もちろんさ! 何なら他の料理も教えようか?」
「……ありがと、助かる」
アイリスとラングレーが啀み合う中、ツタージャが黙々と食しているとアナウンスが鳴った。今度はサニワとデントとの試合が始まる。
バトルフィールドで向かい合う二人。その二人の間には、緊張感は全く感じられなかった。
「まさか、ここでサニワとぶつかるとはね。チャンピオンを試すだなんて出来ない。僕も力を出し切るから、サニワも全力でぶつかって欲しい!」
「……わかった!」
デントはこの間ゲットしたマッギョを、サニワはこの地方で最初に捕まえたビリジオンをバトルフィールドへ送り出した。
「イッツ! テイスティングタイム‼︎ 見せてあげよう、マッギョの新たな味付け! まずは熱湯‼︎」
「光の壁!」
ビリジオンの前に、光り輝く防御壁が現れる。その壁に熱湯が直撃したが、ビリジオンにはあまり効いていないようだ。
今度はサニワのビリジオンが剣の舞で攻撃を上げていく。マッギョは電気ショックや熱湯で攻撃するが、光の壁で防がれて、攻撃の上昇が止まることを知らない。
だが、デントの顔に焦りは見られなかった。むしろ、彼の口角が上がっている。
「ここまでのテイスティングで、君のビリジオンを味わい尽くした。君のビリジオンは、芳醇なる格闘タイプの激しさと、草タイプの繊細さが調和した素晴らしいポケモンだ。森で鍛えられたしなやかさが香り立ち、水タイプや電気タイプの攻撃をものともしない不屈の味わいが、見るものを皆酔わせてくれる」
「……」
謎のポージングを交えながら語り始めるデント。つらつらと並べ立てる美辞麗句に対し、サニワは相変わらずの仏頂面だ。
そもそもテンションが高まるあまりデントの口調は早口になっており、サニワは全く聞き取れていなかった。
「……だが君の戦術では、光の壁で攻撃を防ぐだけだ。それじゃ、ビリジオンのしなやかな動きが全く活かせていない! 優れたトレーナーとは、そのポケモンの持ち味を活かしてあげるものさ。 さぁ、高く舞い上がれ!」
トレーナーの指示を受けたマッギョは高く跳び上がる。跳ねるで有名なコイキングですらも舌を巻くであろうその跳躍は、天に届くような高さであった。
その高い位置から放たれる熱湯は、重力の関係もあって先ほどよりも威力が増している。
「……デント、コンテストバトル、好き? ……それじゃ……跳んで‼︎」
今度はサニワのビリジオンが上空へ跳び上がった。その跳躍力はマッギョを軽く凌駕している。
その隙にマッギョの泥爆弾が炸裂するが、光の壁を展開しているビリジオンにはほぼ無意味だった。それどころか、爆発による衝撃を利用してさらに高度を増している。
「リーフブレード‼︎」
「電気ショックで迎え討つんだ!」
マッギョが放つ電気ショックを物ともせず、急降下していくビリジオン。そのまま電撃を斬り裂き、マッギョの急所にリーフブレードが直撃した。
攻撃力が格段に上がっている状態で、効果抜群の技を急所に受けた。さらに降下の勢いで威力が増しており、周辺の地面ごと抉る。
舞い上がった土煙が晴れると、そこにマッギョは戦闘不能に陥っていたおり、凛とした佇まいでビリジオンが立っていた。
「マッギョ戦闘不能! よってこの勝負、ビリジオンの勝ち!」
審判の声がフィールドに轟き、デントは目を回すマッギョをボールへ戻す。サニワの雰囲気は柔らかなそれへと変貌した。
バトルフィールドから移動した二人が向かい合う。残念ながらデントは敗北したものの、その表情は清々しい。
「サニワ、とても面白いバトルだったよ!」
「……ジム戦、みたい」
「あはは……そうだね。何だかジムリーダーの癖で、チャレンジャーの実力を見てたかな」
「……本気、ちがう?」
「ぇっ、いや……。あはは……」
苦笑いで誤魔化すデント。彼の様子に拗ねたサニワはぽかぽかと背中を殴る。だが全く力を入れていないので痛みは全く感じない。
そもそも異世界出身のサニワの腕力では、この世界の人間であるデントを傷つけることは到底不可能であった。
器用に尻尾も使い、美味しそうにフーズを頬張るツタージャにカベルネが突っかかってきた。
「あぁ、碌にテイスティングも出来ないソムリエの作ったものを食べさせられるなんて……。可哀想なツタージャ!」
昨日の時点でカベルネに対する印象は悪かったが、サニワからの評価はますます悪くなる一方だ。最早ダンデやキバナたちと同じほど嫌っている。
珍しく憤るサニワの迫力は、いつにも増して恐ろしい。いつも通りの無表情でありながらも、殺気すら孕んだ炯眼で睨め付けられたカベルネ。命の危険すら錯覚するほどの恐怖と、凍てつくような寒さを覚え、いそいそと退散する。
カベルネが退席した途端、元の穏やかな雰囲気がサニワを包み込む。同一人物のはずなのに、まるで別人のようなサニワにケニヤンが困惑する。カベルネを射貫くガーネットの瞳は、軍人の片鱗を示していた。
「……デント。……今度、レシピ……教えて。……皆、美味しいって、好きって……言ったから」
「もちろんさ! 何なら他の料理も教えようか?」
「……ありがと、助かる」
アイリスとラングレーが啀み合う中、ツタージャが黙々と食しているとアナウンスが鳴った。今度はサニワとデントとの試合が始まる。
バトルフィールドで向かい合う二人。その二人の間には、緊張感は全く感じられなかった。
「まさか、ここでサニワとぶつかるとはね。チャンピオンを試すだなんて出来ない。僕も力を出し切るから、サニワも全力でぶつかって欲しい!」
「……わかった!」
デントはこの間ゲットしたマッギョを、サニワはこの地方で最初に捕まえたビリジオンをバトルフィールドへ送り出した。
「イッツ! テイスティングタイム‼︎ 見せてあげよう、マッギョの新たな味付け! まずは熱湯‼︎」
「光の壁!」
ビリジオンの前に、光り輝く防御壁が現れる。その壁に熱湯が直撃したが、ビリジオンにはあまり効いていないようだ。
今度はサニワのビリジオンが剣の舞で攻撃を上げていく。マッギョは電気ショックや熱湯で攻撃するが、光の壁で防がれて、攻撃の上昇が止まることを知らない。
だが、デントの顔に焦りは見られなかった。むしろ、彼の口角が上がっている。
「ここまでのテイスティングで、君のビリジオンを味わい尽くした。君のビリジオンは、芳醇なる格闘タイプの激しさと、草タイプの繊細さが調和した素晴らしいポケモンだ。森で鍛えられたしなやかさが香り立ち、水タイプや電気タイプの攻撃をものともしない不屈の味わいが、見るものを皆酔わせてくれる」
「……」
謎のポージングを交えながら語り始めるデント。つらつらと並べ立てる美辞麗句に対し、サニワは相変わらずの仏頂面だ。
そもそもテンションが高まるあまりデントの口調は早口になっており、サニワは全く聞き取れていなかった。
「……だが君の戦術では、光の壁で攻撃を防ぐだけだ。それじゃ、ビリジオンのしなやかな動きが全く活かせていない! 優れたトレーナーとは、そのポケモンの持ち味を活かしてあげるものさ。 さぁ、高く舞い上がれ!」
トレーナーの指示を受けたマッギョは高く跳び上がる。跳ねるで有名なコイキングですらも舌を巻くであろうその跳躍は、天に届くような高さであった。
その高い位置から放たれる熱湯は、重力の関係もあって先ほどよりも威力が増している。
「……デント、コンテストバトル、好き? ……それじゃ……跳んで‼︎」
今度はサニワのビリジオンが上空へ跳び上がった。その跳躍力はマッギョを軽く凌駕している。
その隙にマッギョの泥爆弾が炸裂するが、光の壁を展開しているビリジオンにはほぼ無意味だった。それどころか、爆発による衝撃を利用してさらに高度を増している。
「リーフブレード‼︎」
「電気ショックで迎え討つんだ!」
マッギョが放つ電気ショックを物ともせず、急降下していくビリジオン。そのまま電撃を斬り裂き、マッギョの急所にリーフブレードが直撃した。
攻撃力が格段に上がっている状態で、効果抜群の技を急所に受けた。さらに降下の勢いで威力が増しており、周辺の地面ごと抉る。
舞い上がった土煙が晴れると、そこにマッギョは戦闘不能に陥っていたおり、凛とした佇まいでビリジオンが立っていた。
「マッギョ戦闘不能! よってこの勝負、ビリジオンの勝ち!」
審判の声がフィールドに轟き、デントは目を回すマッギョをボールへ戻す。サニワの雰囲気は柔らかなそれへと変貌した。
バトルフィールドから移動した二人が向かい合う。残念ながらデントは敗北したものの、その表情は清々しい。
「サニワ、とても面白いバトルだったよ!」
「……ジム戦、みたい」
「あはは……そうだね。何だかジムリーダーの癖で、チャレンジャーの実力を見てたかな」
「……本気、ちがう?」
「ぇっ、いや……。あはは……」
苦笑いで誤魔化すデント。彼の様子に拗ねたサニワはぽかぽかと背中を殴る。だが全く力を入れていないので痛みは全く感じない。
そもそも異世界出身のサニワの腕力では、この世界の人間であるデントを傷つけることは到底不可能であった。