第22話

 翌朝。サトシたちは、真っ先にトーナメント会場を訪れていた。ラングレーはアイリスの姿を見つけると、真っ先に彼女へ向かって走って行く。アイリスの間に挟まれたサニワはややオロオロと戸惑っていた。
 だがサニワを視界に収めると、ラングレーには膨れっ面のアイリスには聞こえないように、囁くような声で尋ねる。


「アンタ、大丈夫なの?」
「……よくある。……慣れた」
「ふうん? まあ良いわ。たとえアンタとぶつかっても、あたしは一切手加減しないからね!」


 最後は囁くどころか怒鳴るような声だったが、ビシッと指さすと一足先に会場へ向かって行く。慌ててサトシたちも、トーナメント会場に入っていった。

 第二回戦。対戦相手の順は、以下の通りである。
 ラングレーvsサトシ
 デントvsサニワ
 ルークvsアントーニオ
 ケニヤンvsアイリス

 早速ラングレーとサトシとの試合が始まった。サニワは個室ではなく、参戦者席にちょこんと座っていた。まさかこちらに座ると思わなかったアイリスは隣に座り、それをこれ幸いとルークがカメラを回している。


「サニワ、個室じゃなかったっけ?」
「主催者の方に無理を言って、こちらで観戦させていただくことにしました。やはり、主さまも共に観戦した方が楽しいようで」
「やった〜! ねえ、一緒に見よ!」


 密着するアイリスとサニワ。竜の里出身の少女はともかく、ガラル地方のチャンピオンを放っておくはずがない。観客席を抜け出し、参加者の席へ移動した報道陣の一人が、サニワへマイクを向ける。
 すると突如、そのマイクが炎に包まれて吹き飛んだ。キュウコンがマイクに向かって火炎放射を放ったのだ。その瞳には敵意が隠されておらず、マスコミを睨み付けて威嚇している。
 思わず腰を抜かしたインタビュアーに、サニワが静かに語りかける。感情の読めない無表情に、読み聞かせるような語り口調。それは、不届き者を威圧するには十分すぎるものだった。


「……ごめんなさい。……試合前、興奮してる。……危ない」
「ヒ、ヒイイイィ‼︎」


 報道陣は何とも情けない声を上げて退散して行く。それを横目で見たキュウコンはフン、と鼻であしらった。
 サトシはツタージャを、ラングレーはコマタナを繰り出した。コマタナを見た途端、サニワの耳は忙しなく動き出す。密着していたアイリスはくすぐったいらしく、身を捩らせる。


「サニワはコマタナが好きなのかい?」
「……やはり、あのぬらりと輝く刀身に、あの綺麗な刃文は素晴らしいの一言に尽きますね。見ただけで相当な切れ味であるとわかります」


 最近は喋るようになったと言えど、まだ無口な部類に入るサニワ。そんな彼女が、まるで暴発する機関銃の如く捲し立てるのは非常に珍しい。
 実際に喋っているのはこんのすけであるが、全く気にしない。気にしてはいけない。

 だが、あまりにも専門用語が多すぎた。戦争のない平和な世界でぬくぬくと生きてきたアイリスたちは武器の解説など到底理解できるはずもなく、ただポカンと口を開けるだけだった。


「ツタージャ! リーフストーム‼︎」
「コマタナ、メタルクロー!」


 コマタナの鋭い刃が、襲いくる無数の葉を切り裂いていく。再びリーフストームを繰り出すも、今度は躱されてメタルクローがツタージャの腹に直撃した。
 何とか形勢逆転をしようとメロメロを放つも、ラングレーのコマタナは♀。同性には全く効果のない技は不発に終わる。
 今度はアイアンヘッドがツタージャを襲う。何とか回避したが、地面に炸裂し無数の岩が飛び散った。
 ツタージャは蔓の鞭で弾き返すと、コマタナの頭部に位置する刃に、それ一つが突き刺さる。コマタナの頭部ほどある岩は、彼女の動きを止めるに十分だった。
 ツタージャはそのまま蔓の鞭で畳み掛ける。止めと言わんばかりにリーフブレードで追撃したが、それは頭部にある岩に直撃。岩が砕け散り、再び自由になったコマタナが形勢逆転した。

 今度は鋏ギロチンでコマタナが勝負を決めにかかる。何とかツタージャは回避したが、その威力は一目瞭然だった。
 けりをつけようと、再びコマタナの鋏ギロチンがツタージャに襲いかかるが、ギリギリでリーフブレードで弾き返す。
 コマタナの鋭利な両手がフィールドに突き刺さり、コマタナは身動きが取れなくなってしまった。これにはギャラリーもラングレー本人も驚きを隠せない。
 無防備なコマタナに、ツタージャのリーフストームが容赦無く襲いかかる。これには鋼タイプのコマタナも戦闘不能に陥ってしまった。最初は優勢だった事もあり、ラングレーは非常に悔しそうだ。


「コマタナ、とーっても、すごい! 斬れ味、すごい! 触る、良い⁉︎」
「あら、アンタ良くわかってんじゃない。でも今はこの子疲れてるし、また別の機会に触らせてあげるわ」
「ちょっとサニワ! ラングレーなんか応援してないで、あたしの応援をしてよ!」
「何? この子の興味があたしに向いたくらいで嫉妬するなんて……全く、子どもだね!」
「アンタよりマシよ!」


 ラングレーとアイリスの間に、また火花が散り始める。間に挟まれたサニワは、二人に気付かれないようこっそりとサトシの元へ避難した。
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