第4話

 翌日の約束通り、サニワはコーンたちが経営するお店を訪ねると。
 お店の内装はガラリと変貌し、立派なバトルフィールドが展開されていた。二階席には昨日の女性客だろうか、きゃらきゃらと黄色い歓声をあげている。
 サニワが呆気にとられてぽかん、と口を開けていると、ウェイター三人が彼女へ近づいた。


「待ってたぜ、チャレンジャーさん!」


 こんのすけは未だ理解ができていないようだが、赤髪のウエイターの言葉に、サニワは合点がいった。


「……ここ、ジム」
「ご名答!」
「そして僕たち」
「三つ子の兄弟が」
「「「ジムリーダーなんだよ!」」」
「三つ子だったのですか⁉︎」


 こんのすけは彼らが三つ子ということに驚きを隠せずにいたが、サニワはジムリーダーが3人という点を怪訝に感じていた。
 ホウエン地方では、双子のジムリーダー・フウとランがダブルバトル制のジムバトルを行っているが、もしかしてトリプルバトルのジムだろうか?
 そうサニワは推測したが、ここはトリプルバトル専門のジムでもないらしい。


「本来であれば、ポッド、デント、そしてこのコーンのうち一人を選んでもらいます。そして見事バトルに勝利すれば、このトライバッジを差し上げているんです」


 コーンが差し出したのは、赤・青・緑に美しく煌めく細長いバッジだった。
 ガラルでは破片のような疎(まば)らな形で(実際に全て集めるとメダルになる)、シンオウやカロス、ジョウトでは、どちらかというと円形や正方形のような形が多かった。


「ただし、今回は僕たち全員と戦ってもらいます!」
「順番は、最初が俺・ポッド、次にコーン、最後にデントの順だぜ!」
「三試合して二勝すれば、バッジを獲得できるという特別ルール。それでもいいかい?」
「……問題ありませんよ。ね、主さま」


 こんのすけの言葉に、サニワが小さく頷く。だが、どうして今回が特別なルールなのかを知りたいのか、こんのすけに囁いた。
 彼は呆れたような目を主人へ向けていたが、諦めたように小さく溜め息を吐くと、三人へ尋ねた。


「差し支えなければで構いませんが、どうして今回は特別ルールなんですか? 主さまはそれを知りたいそうでして」
「あぁ、それはな……」


 実は、シロナやカルネなど、別の地方のチャンピオンと戦う機会が仕事上あるのだが、その全てにおいて全勝している。
 各地方のチャンピオンを打ち負かすほどの、天井知らずの強さ。そんな猛者と戦える機会なんてそうそうない、ぜひバトルをしてみたい、と熱望し、誰が相手になるかで喧嘩になったのである。

 ところが、ジムのルール上だと、どうしても一人しかバトルができない。そこで、今回のみ特別ルールを設けて全員とバトルを行えるようにしたそうだ。
 こんのすけはやや呆れていたものの、サニワは是非ともお願いします、と頭を下げて、チャレンジャー用の指定位置へ移動した。

 初戦は炎タイプのバオップが相手だ。
 本来ならば、有利な水や地面、岩タイプのポケモンを出すべきなのだろう。だがサニワは該当するポケモンを現在所持しておらず、色違いのキュウコンをフィールドへ送り出した。
 ところがキュウコンは遊んでもらえると思ったのか、電光石火の素早さで主人に抱きついてくる。電光石火は覚えていないが。
 慌ててバトルだよ、とサニワがバトルフィールドを指差すと、楽しそうに飛び跳ねながら定位置に移動した。
 バオップはその様子に呆気に取られたものの、主人に激励されてやる気を見せている。


「炎タイプ使いの俺に、同じ炎タイプで挑むとはな。その上、キュウコンの特性は日照り……上等だ! 受けて立つぜ‼ バオップ、炎のパンチ!」
「躱して、後ろへ」


 炎を纏った拳がキュウコンに襲いかかるも、彼女はひらりと身を翻して攻撃を躱し、そのままバオップの背後へ移動する。
 バオップの攻撃は岩へと直撃し、砕かれた小石が周辺に転がった。拳の持ち主は痛そうに手を摩っている。


「バオップ、火炎放射!」
「こっちも」


 
 バオップの吐き出した炎と、キュウコンの炎が衝突する。火炎同士がぶつかり合い、フィールドは焔に包まれる。繰り出したのは全く同じ技。しかし威力は、圧倒的にキュウコンの方が勝っていた。
 勢いに負けたバオップは吹き飛ばされたものの、ふらふらとバオップは立ち上がった。

 もう一度攻撃を受けたら拙いと判断したポッドは「穴を掘る」で地中に潜伏し、攻撃を避ける指示を出す。ところがサニワは動じることなく、手を数回叩き、両手を組む。まるで祈りを捧げるような仕草だった。


「あれは……?」
「祈ってる……のか?」
「……わかった。今、真下。……跳んで、ソーラービーム」
「何ッ⁉」


 まるで未来を視ていたかの如く、バオップの攻撃は呆気なく避けられる。まさか回避されると思っていなかったのか、かなりバオップもポッドも驚いているようだ。その隙を見逃さず、キュウコンはソーラービームを打ち込んだ。
 キュウコンの放つ光線が急所に直撃し、バオップはジムの壁まで吹き飛ばされ、衝撃で土煙が立ち上がる。視界が晴れると、バオップは目を回して地面に伏せていた。


「バオップ戦闘不能! よって勝者、チャレンジャー・サニワ!」
「……ありがと。しっかり、休んで」


 サニワはキュウコンをボールの中へ戻し、労りの言葉を伝える。頑張って、と激励するかのように、それは一度だけカタリと揺れた。
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