「ほたる、いるかー？」



襖の向こうにいるはずの彼奴に、声を掛ける。


さっと襖が開き、出てきたのは────。



「えっ、あれっ？千鶴？」



思わず間抜けた声が漏れる。



「悪い、オレ部屋間違えてたみたいだ、ごめんな！」


「あっ、待って平助君！如月さんなら、今土方さんに呼ばれて席を外してるの！」



立ち去ろうとしたオレを、千鶴が呼び止めた。



「如月さんに用があったんだよね？多分、もうすぐ戻ってくると思うよ」


「あーそうなのか。どうすっかな。ところで千鶴は、何してんの？」


「私は如月さんに編み物教わってたんだ。まだ全然出来てないんだけどね」