『凄い雨だな……って、うわっ』



大雨に降られ、屯所に飛び込んだ俺は、玄関先で思い切り誰かにぶつかった。



『ご、ごめん……』



顔をあげれば、そこには一君の姿があった。



「……大丈夫か？」


『う、うん。一君、何処か行くの？大雨だよ』


「いや、特に出掛ける用はない。それよりほたる。ずぶ濡れだな……早く着替えた方が良い。風邪を引いては大変だ」



そう言って一君は手拭いを取り出した。



『ありがとう……？』



あれ、でも……。



『ねえ、一君……？』


「どうした」


『……ううん、何でもない。ありがとう』



一君……。

もしかして俺が帰ったのに気付いて来てくれたのかな……？



俺は一君にお礼を言って自室に戻る。

ささっと着替えを済ませ、副長の元へ報告に向かった。