第二百七話
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日光に向かう途中の、森の中。
宇都宮まであと少しという所で、事件は起こった。
「まさか、宇都宮を官軍に押さえられてしまうとは……予想外だったね」
大鳥さんと副長が、陣の中で会議を重ねている。
大鳥さんは深刻な表情をしているけど、相対する副長はどこか飄々とした態度で受け流す。
「押さえられたって言っても、単に官軍にびびって恭順した口だろ。奴ら以上の力を見せつけてやりゃ、すぐこっちに尻尾振ってくるさ。……節操のねえ連中だからな。新政府軍に寝返った奴らの城なんざ、落としちまって構わねえだろ?歩兵奉行さんよ」
「僕は別に、戦う事に反対しているわけじゃない。ただ、小山で戦っていた中軍、後軍はまだ合流し切れていない。彼らが追い付くまで、待ってくれと言っているんだ。城を落とすというのは、戦略的に愚の愚とされている。今は────」
「……やれやれ。そりゃ、どこのありがてえ操典の孫引きだ?お得意の西洋砲術か?」
副長の刺々しい言葉が癇に障ったのか、大鳥さんは眉を顰めながら反論する。
「これは、西洋だけの常識ではない。孫子の兵法にだって同じ事が書かれている。やむを得ない時を除いて、城を攻めるというのは愚かだと説いているんだよ。愚を犯すのであれば、せめて自軍を最良の状態にして、確実な勝利を目指さなくては……」
すると副長は、大鳥さんの言葉を遮るように切り返す。
「兵は拙速を聞くも、未だこれを巧みにして久しくするを見ざるなり。戦争ってのは時間を掛けて上手くやるより、多少下手でも素早くやれって事だ。……これも孫子の兵法に書かれてる言葉だぜ」
「……土方君、話を混ぜっ返さないでくれ。中軍、後軍が我々に追い付くのに、何十日も掛かるわけじゃない。あと少しだけ待ってくれと……」