第百七十二話
夢小説設定
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「くそっ!何なんだよ、あの態度は!殿様にでも、なったつもりか!?」
部屋に戻ろうと廊下を進んでいると、先からそんな声が聞こえてくる。
俺は足早に、その声の方へと向かった。
「俺達は上とか下とか、そういう関係じゃなかったはずなんだよ。道場を……、試衛館を畳む前は、皆すっげえ貧乏してて、明日の飯にも困る有様だったけどさ……。そんな時でも、あの人は一度だって、偉ぶって上司風吹かせたりはしなかったぜ?だからこそ、俺はあの人についてきたんだ。それなのに……、何だよありゃ」
「……俺は、副長の判断力を信頼している。あの人が何の考えもなく動くはずはない。それに、軍隊に必要なのは和気藹々とした仲間関係ではく、厳然とした指揮系統だ」
「そりゃ、丸っきり正論だけどよ。俺は別に、仲良しこよししてえってわけじゃねえんだよ。ただな……」
そこには、新八さんを始めとして、左之さん、一君までもが揃っていた。
『新八さん……、左之さん、一君』
声を掛けると、彼らが一斉に此方を向く。
江戸にいた頃から、局長をずっと傍で見てきた俺達。
組織が大きくなると、小さな道場で家族のように過ごしていた頃と同じようにはいかない。
そんなもどかしさが、胸には去来しているのだろう。
「ほたる……」
新八さんは苛立った、悲しそうな目で俺を見る。
……そして、ばつが悪そうに目を逸らすと、そのまま行ってしまった。
『新八さん……』
それ以上掛ける言葉も見つからず、俺は彼の背中を黙って見送るしか出来なかった。