第三十一話
夢小説設定
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物音ひとつしないほど、静まり返った夜────。
俺は境内の一角を訪れていた。
「境内に幽霊が出るとの、噂が流れているようですね」
『総長……』
「それは私の事でしょう。どうにか自重しなければとは、何度も思っているのですが」
俺は彼の困惑を感じて、小さな声で問い掛ける。
『散歩は……お好きですか?』
「嫌いではありませんが他にも理由があります。いくら【羅刹】と言えど、室内に閉じ篭ってばかりでは気持ちも鬱ぎます」
……聞くまでもない。
分かっていた事なのに。
それでも総長は、俺の不躾な質問にも、嫌な顔をせず答えてくれた。
「そしてもうひとつ……此処はお寺です。真夜中に幽霊が出ても、あまり騒ぎにはならないでしょう?」
つまり総長は最初から、全て計算していたんだ。
「幽霊でも羅刹でも、夜にしか動けないのは変わらないですからね」
『総長……』
羅刹と化した総長は、新選組の秘密を守る為に死者として扱われている。
彼の抱えている苦しみが、見えた気がした。