白日
「オーナー…」
理解が追い付かないまま、間抜けな声が漏れる。オーナーって、
授業で何度か聞いたことがあるようなその言葉は何を示す言葉だったかまでは思い出せない。
「え、違うの?」
てっきりそうなのかと、とつぶやく優はそっかと目を伏せる
音があまりない朝の街にはそれぞれの家庭から朝ご飯の匂いが漂い始めた
急いでるなんて言っていたのにもう全く急ぐ様子も帰る様子もない優
コンビニを出てから思わず自分の家に向かって歩き出してしまったけれど優はこっちでいいのだろうか
「え、っと、オーナーってなんだっけ」
絞り題した声にきょと、と目を丸めた優はくすくすと笑いだして
久々に見た優の笑顔にどくどくと心臓が波打つ
「なんで笑って」
「んー?美羽ちゃんは変わらないなーって」
美羽ちゃんは優が少し馬鹿にしてくるときの呼び方で少し癪だけれど、まるで距離感が変わっていないようなそれに少しの安心感が漂う
「見たでしょ?私の指」
自嘲のような笑みを浮かべた優は自分の指を空に向かってかざしていて
茶色く変色した優の指
それはまるで枯れているような
「フラワーなんだって、私」
「フラワー…」
それも確か、高校の時に授業で習った気がする
でも、まったくというほど記憶は蘇ってこなくて
こんなことなら真面目に聞いておけばよかったとため息が漏れる
「っ、ごめん、こんな話されて困るよね」
ひきつった笑顔でヘラっと笑う優
違う、見たいのはこんな顔じゃない
「…ちょっと、まって」
ポケットの中なら急いでスマホを取り出して、フラワーとオーナーについての記事を引っ張る
フラワーは体が枯れていく体質で、オーナーからの水やりが必要で…
あぁ、確かにこんなことを言っていた気がする、どちらも発現するのは稀らしくて、特にオーナーは自覚症状もない場合が多いらしい
確率的にはこのクラスでも何人かはなるんだぞーとか言っていた担任の言葉を思い出す
それでも自分には関係ないと思っていたそれが好きな人を蝕むとは思っていなかった
優の体の変色もそういうことなのかと合点がいって、私がオーナーじゃないと分かったときの優の落胆に息が少し、しづらく感じた
そしてそれはまた、優の症状の緊急度合いを物語っているのだろう
「周りに、いないの?オーナー」
「うん…ほとんどの人はパートナーがいるし、さすがにそういう人にしてもらうわけにはいかないから」
他には全然見つかってないといった声は不安そうに揺れた
自分がオーナーだったらよかったのにと心底思う
歯がゆくて、悔しくて、噛んだ唇ががり、と痛むけれどそんなことはどうでもよかった
「…優、うち寄ってってよ」
話しているうちについてしまったアパート
人を上げられるほどきれいにしていたっけと思い出すけれど、たいして物のない私の家は多分閑散としてるだけで汚くはないはず
「、ううん、いいよ」
「よくない、まだ話し終わってないし。ここだから、寄ってって」
枯れた指先を力を入れないように優しく引っ張る
うんとは返事をしない優の手を離さないように歩き出せば、ついてくるのを肯定と都合よく受け取って
かんかんと無機質な音を出す階段を二人で登った
理解が追い付かないまま、間抜けな声が漏れる。オーナーって、
授業で何度か聞いたことがあるようなその言葉は何を示す言葉だったかまでは思い出せない。
「え、違うの?」
てっきりそうなのかと、とつぶやく優はそっかと目を伏せる
音があまりない朝の街にはそれぞれの家庭から朝ご飯の匂いが漂い始めた
急いでるなんて言っていたのにもう全く急ぐ様子も帰る様子もない優
コンビニを出てから思わず自分の家に向かって歩き出してしまったけれど優はこっちでいいのだろうか
「え、っと、オーナーってなんだっけ」
絞り題した声にきょと、と目を丸めた優はくすくすと笑いだして
久々に見た優の笑顔にどくどくと心臓が波打つ
「なんで笑って」
「んー?美羽ちゃんは変わらないなーって」
美羽ちゃんは優が少し馬鹿にしてくるときの呼び方で少し癪だけれど、まるで距離感が変わっていないようなそれに少しの安心感が漂う
「見たでしょ?私の指」
自嘲のような笑みを浮かべた優は自分の指を空に向かってかざしていて
茶色く変色した優の指
それはまるで枯れているような
「フラワーなんだって、私」
「フラワー…」
それも確か、高校の時に授業で習った気がする
でも、まったくというほど記憶は蘇ってこなくて
こんなことなら真面目に聞いておけばよかったとため息が漏れる
「っ、ごめん、こんな話されて困るよね」
ひきつった笑顔でヘラっと笑う優
違う、見たいのはこんな顔じゃない
「…ちょっと、まって」
ポケットの中なら急いでスマホを取り出して、フラワーとオーナーについての記事を引っ張る
フラワーは体が枯れていく体質で、オーナーからの水やりが必要で…
あぁ、確かにこんなことを言っていた気がする、どちらも発現するのは稀らしくて、特にオーナーは自覚症状もない場合が多いらしい
確率的にはこのクラスでも何人かはなるんだぞーとか言っていた担任の言葉を思い出す
それでも自分には関係ないと思っていたそれが好きな人を蝕むとは思っていなかった
優の体の変色もそういうことなのかと合点がいって、私がオーナーじゃないと分かったときの優の落胆に息が少し、しづらく感じた
そしてそれはまた、優の症状の緊急度合いを物語っているのだろう
「周りに、いないの?オーナー」
「うん…ほとんどの人はパートナーがいるし、さすがにそういう人にしてもらうわけにはいかないから」
他には全然見つかってないといった声は不安そうに揺れた
自分がオーナーだったらよかったのにと心底思う
歯がゆくて、悔しくて、噛んだ唇ががり、と痛むけれどそんなことはどうでもよかった
「…優、うち寄ってってよ」
話しているうちについてしまったアパート
人を上げられるほどきれいにしていたっけと思い出すけれど、たいして物のない私の家は多分閑散としてるだけで汚くはないはず
「、ううん、いいよ」
「よくない、まだ話し終わってないし。ここだから、寄ってって」
枯れた指先を力を入れないように優しく引っ張る
うんとは返事をしない優の手を離さないように歩き出せば、ついてくるのを肯定と都合よく受け取って
かんかんと無機質な音を出す階段を二人で登った
