★Memories
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Desire―願う―
【青葉の宴】
初夏の風が清々しい、ある週末の日曜日。今日はバーダックの同僚であるトーマさんとセリパさんを呼んで、ホームパーティーを開くことになっている。
「バーダック、準備出来た? そろそろ、トーマさん達来る時間だよ」
「ああ、分かってる!」
そう答えたバーダックは忙しく動き回ってる。
彼が何をしてるかというと、実はトーマさんから何か吹き込まれたらしく、その内容は知らないけど、なんと意外にも家庭料理に目覚めたのだ。過去に風邪を引いた時にお粥を作って貰ったことはあるけど、本格的にハマり始めたのは今回が初めて。
彼は主に野菜を中心に、献立を考える。バーダックなら絶対お肉中心の料理だろうと思うけど(現に肉大好き人間だしね)何故か野菜に拘って、彼なりの男飯を作ってくれる。
肝心の味は、これが結構イケるのだ。特に天ぷらなんて絶品で食感が良い。
料理を作るのは休日限定だけど、それでも有り難いことに楽させてもらってるってわけ。
「よし、準備出来たぜ」
ふと我に返ると、テーブルの上には、今まさに青葉の候に相応しくスズランのランチョンマットに同じく、スズランの箸置きがセッティングされ、食べる側の目を楽しませてくれる。
何より目につくのが旬の食材を使った筍ご飯、白瓜のお吸い物、タラの芽にアスパラや椎茸の天ぷら、スナップえんどうのおひたし、ウドのきんぴらに鰆の塩こうじ焼き、オマケにバーダック特製のだし巻き玉子。手の込んだ和食がほかほかと湯気を立てている。
私は思わず、ごくりと唾を呑み込んだ。
「美味しそう! やるじゃない、バーダック!」
「まぁな、オレにかかりゃこれぐらい朝飯前だぜ」
「今は夕飯前だけどね」
「……」
「じょ、冗談よ! だから、そんなに睨まないでったら!」
「ったく、それよりアレの準備は出来てるのか?」
バーダックの眼がぎらりと光る。
「もちろん、バーダックの注文通りの物が手に入ったよ。苦労したんだからね」
私は後ろ手に持っていた純米酒を、彼の目前に差し出した。
「おお、これだ。オレがどうしても飲みたかった幻の純米大吟醸。これで食事が何倍も美味くなるぜ」
バーダックはまるで新しいオモチャを買って貰った子供のように笑う。ちょっと可愛いかも。
その時、玄関のチャイムが鳴り響いた。
「どうやら、あいつらが来たらしいな」
「そうだね、出迎えなきゃ!」
私達が玄関に移動してドアを開けると、予想通りトーマさんとセリパさんが笑顔で立っていた。
「よぉ、バーダック」
「おー、二人ともよく来たな」
「せっかくのお誘いだからね、アタシもお言葉に甘えさせて貰ったよ」
「狭い所ですが、どうぞお上がりください」
「アンタさ、自分ちで畏まってどうすんだい。もっと気楽にしなよ?」
少しも気取らないセリパさんのお陰で気が楽になった私は、笑顔で口を開く。
「それもそうか。じゃあ、改めて……二人とも上がって? バーダックお手製のご馳走が待ってるよ」
「おっ、そうか。じゃ、早速お邪魔するぜ」
挨拶もそこそこに、二人はいそいそと靴を脱いで玄関に上がり込んだ。
二人を部屋に通すと、セリパさんが「これ、お土産の豆大福。家の近所で評判でさ」と紙包みを手渡してくれる。
「わあ、ありがとう。食後に皆で食べよう!」
食事時。ご飯に夢中だったトーマさんが、ニコニコしながら口を開く。
「どれもこれも美味いなぁ。特にタラの芽の天ぷらが、サクサクしててほんのり甘くて最高だ。これだけの飯をお前が作るとは恐れ入ったぜ。まさか、料理教室でも通い始めたのか?」
「通うわけねぇだろ。ま、強いていや、テレビとか新聞で腕を磨いたんだよ」
「ふーん、努力家のお前らしいな」
「ふん……それより、もっと飲めよ。お前の為に上物を用意させたんだからな」
バーダックはそう言って、私の肩をぽんと叩く。
「へえ、夫想いの出来た嫁さんじゃねぇか。オレも肖りたいもんだぜ」
「……」
セリパさんから殺気が……トーマさんに鋭い視線を送ってる。でも、彼は気づいてないみたい。何だかセリパさんが可哀想……。
数時間後。
買い溜めしていたお酒を飲み尽くしたバーダックとトーマさんは完全に泥酔状態。特に仲のいい彼らは男飲みできて嬉しかったのね。
私とセリパさんはお土産の豆大福に舌鼓を打っていた。
「んっ! こんなに美味しい豆大福は初めて食べたよ! 特に豆とあんこが絶妙なバランスだね!!!」
「ね、イケるだろ? アタシの大好物なんだよ」
「分かる分かる! 私も大好きになっちゃったもの!」
ところでさ、とセリパさんが話題を変える。
「なんで、バーダックが急に料理に目覚めたか、アンタ知ってるかい?」
「え、詳しくは知らないけど」
「それがさ、トーマがバーダックにこう言ったんだよ」
『これからの男は手料理の一つも出来なきゃ、嫁さんに愛想尽かされるぜ。ま、精々お前も気をつけるんだな』
「だってさ。それでバーダックってば、躍起になって男飯に目覚めたんだよ。外でもないアンタの為にね」
セリパさんが得意気にウインクして見せる。
「え……?」
「愛されまくりじゃないか。あー熱い熱い」
まさか、バーダックが私の為に頑張ってくれてたなんて……思わず涙が出てしまう。どうりで、何から何まで私好みの献立だと思った。
図らずも、じーんと胸に響いた、とても素敵な夜だった。
【青葉の宴】
初夏の風が清々しい、ある週末の日曜日。今日はバーダックの同僚であるトーマさんとセリパさんを呼んで、ホームパーティーを開くことになっている。
「バーダック、準備出来た? そろそろ、トーマさん達来る時間だよ」
「ああ、分かってる!」
そう答えたバーダックは忙しく動き回ってる。
彼が何をしてるかというと、実はトーマさんから何か吹き込まれたらしく、その内容は知らないけど、なんと意外にも家庭料理に目覚めたのだ。過去に風邪を引いた時にお粥を作って貰ったことはあるけど、本格的にハマり始めたのは今回が初めて。
彼は主に野菜を中心に、献立を考える。バーダックなら絶対お肉中心の料理だろうと思うけど(現に肉大好き人間だしね)何故か野菜に拘って、彼なりの男飯を作ってくれる。
肝心の味は、これが結構イケるのだ。特に天ぷらなんて絶品で食感が良い。
料理を作るのは休日限定だけど、それでも有り難いことに楽させてもらってるってわけ。
「よし、準備出来たぜ」
ふと我に返ると、テーブルの上には、今まさに青葉の候に相応しくスズランのランチョンマットに同じく、スズランの箸置きがセッティングされ、食べる側の目を楽しませてくれる。
何より目につくのが旬の食材を使った筍ご飯、白瓜のお吸い物、タラの芽にアスパラや椎茸の天ぷら、スナップえんどうのおひたし、ウドのきんぴらに鰆の塩こうじ焼き、オマケにバーダック特製のだし巻き玉子。手の込んだ和食がほかほかと湯気を立てている。
私は思わず、ごくりと唾を呑み込んだ。
「美味しそう! やるじゃない、バーダック!」
「まぁな、オレにかかりゃこれぐらい朝飯前だぜ」
「今は夕飯前だけどね」
「……」
「じょ、冗談よ! だから、そんなに睨まないでったら!」
「ったく、それよりアレの準備は出来てるのか?」
バーダックの眼がぎらりと光る。
「もちろん、バーダックの注文通りの物が手に入ったよ。苦労したんだからね」
私は後ろ手に持っていた純米酒を、彼の目前に差し出した。
「おお、これだ。オレがどうしても飲みたかった幻の純米大吟醸。これで食事が何倍も美味くなるぜ」
バーダックはまるで新しいオモチャを買って貰った子供のように笑う。ちょっと可愛いかも。
その時、玄関のチャイムが鳴り響いた。
「どうやら、あいつらが来たらしいな」
「そうだね、出迎えなきゃ!」
私達が玄関に移動してドアを開けると、予想通りトーマさんとセリパさんが笑顔で立っていた。
「よぉ、バーダック」
「おー、二人ともよく来たな」
「せっかくのお誘いだからね、アタシもお言葉に甘えさせて貰ったよ」
「狭い所ですが、どうぞお上がりください」
「アンタさ、自分ちで畏まってどうすんだい。もっと気楽にしなよ?」
少しも気取らないセリパさんのお陰で気が楽になった私は、笑顔で口を開く。
「それもそうか。じゃあ、改めて……二人とも上がって? バーダックお手製のご馳走が待ってるよ」
「おっ、そうか。じゃ、早速お邪魔するぜ」
挨拶もそこそこに、二人はいそいそと靴を脱いで玄関に上がり込んだ。
二人を部屋に通すと、セリパさんが「これ、お土産の豆大福。家の近所で評判でさ」と紙包みを手渡してくれる。
「わあ、ありがとう。食後に皆で食べよう!」
食事時。ご飯に夢中だったトーマさんが、ニコニコしながら口を開く。
「どれもこれも美味いなぁ。特にタラの芽の天ぷらが、サクサクしててほんのり甘くて最高だ。これだけの飯をお前が作るとは恐れ入ったぜ。まさか、料理教室でも通い始めたのか?」
「通うわけねぇだろ。ま、強いていや、テレビとか新聞で腕を磨いたんだよ」
「ふーん、努力家のお前らしいな」
「ふん……それより、もっと飲めよ。お前の為に上物を用意させたんだからな」
バーダックはそう言って、私の肩をぽんと叩く。
「へえ、夫想いの出来た嫁さんじゃねぇか。オレも肖りたいもんだぜ」
「……」
セリパさんから殺気が……トーマさんに鋭い視線を送ってる。でも、彼は気づいてないみたい。何だかセリパさんが可哀想……。
数時間後。
買い溜めしていたお酒を飲み尽くしたバーダックとトーマさんは完全に泥酔状態。特に仲のいい彼らは男飲みできて嬉しかったのね。
私とセリパさんはお土産の豆大福に舌鼓を打っていた。
「んっ! こんなに美味しい豆大福は初めて食べたよ! 特に豆とあんこが絶妙なバランスだね!!!」
「ね、イケるだろ? アタシの大好物なんだよ」
「分かる分かる! 私も大好きになっちゃったもの!」
ところでさ、とセリパさんが話題を変える。
「なんで、バーダックが急に料理に目覚めたか、アンタ知ってるかい?」
「え、詳しくは知らないけど」
「それがさ、トーマがバーダックにこう言ったんだよ」
『これからの男は手料理の一つも出来なきゃ、嫁さんに愛想尽かされるぜ。ま、精々お前も気をつけるんだな』
「だってさ。それでバーダックってば、躍起になって男飯に目覚めたんだよ。外でもないアンタの為にね」
セリパさんが得意気にウインクして見せる。
「え……?」
「愛されまくりじゃないか。あー熱い熱い」
まさか、バーダックが私の為に頑張ってくれてたなんて……思わず涙が出てしまう。どうりで、何から何まで私好みの献立だと思った。
図らずも、じーんと胸に響いた、とても素敵な夜だった。